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第3回中国金属リサイクル春季会議2026 - 詳報①:ベトナムの金属リサイクル産業の現状と規制動向

2026/05/12 21:39
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第3回中国金属リサイクル春季会議2026 - 詳報①:ベトナムの金属リサイクル産業の現状と規制動向

第3回中国金属リサイクル春季会議2026(主催:中国有色金属工業協会(CNIA)の再生金属支部CMRA)が、ベトナム・ハノイ市のJW Marriott Hotel Hanoiにて、2026年5月9日から12日までの4日間の日程で開幕した。本会議は約1250人が参加者、海外11の省庁・関連機関および53社の出展者が集結し、世界各国のリサイクラー、メーカー、商社、技術企業、専門家が集結する重要な交流・商談の場となった。

2日目となる10日は前日の展示会に加え、講演プログラムが実施された。講演会の開始に伴い、中国有色金属工業協会(CNIA)再生非鉄金属部 副主任であるLi Shien氏がオープニングトークを務めた。

オープニングトークを務めた中国有色金属工業協会(CNIA)再生非鉄金属部 副主任のLi Shien氏

Li氏は現在、世界の再生資源産業が成長局面にあり、多国籍企業による事業展開や地域統合が加速していると指摘。このような環境下ではグローバルな連携を強化し、産業発展に向けた新たな方向性・手法・ビジネスモデルを模索することが、各国・地域にとって重要な課題になるとの認識を示した。

Li氏は最後に「今回のフォーラムを通じて各国・各企業が知見を共有し、新たな協力関係やビジネス機会の創出につながることを期待している」と述べ、オープニングトークを締め括った。

本稿では10日の午前中に行われた「政策の影響と業界の機会(Policy Impact and Industry Opportunities)」のセッションで発表された4つの講演について報告する。

 

◼︎Interpretation of Vietnam's Recycling Metal Environmental Policies & Investment Guidance(ベトナムのリサイクル金属に関する環境政策の解釈と投資ガイダンス):ベトナム商工省 技術安全・産業環境局 産業環境管理部 副部長、Pham Sinh Thanh氏

近年、ベトナム政府は循環型経済や環境保護を重視する方針を強めており、その中でリサイクル産業を国家の産業発展政策の中に明確に位置付けている。特に、ベトナムの環境保護法においては「環境産業」の育成・発展が重要政策として定められており、リサイクル産業はその環境産業を構成する主要分野の一つとして位置付けられている。

産業分類や資源政策の観点から見ると、リサイクル産業は「二次資源」を創出する産業として重要視されている。従来の一次資源に依存する構造だけではなく、使用済み製品やスクラップから再び資源を回収・活用することで、新たな資源供給源を形成する役割を担っているという。

このため、ベトナム政府はリサイクルを単なる環境対策としてではなく、資源安全保障や産業競争力強化にもつながる重要分野として捉えている。Thanh氏は特に金属分野の再生資源の活用拡大が今後の産業発展において重要になるとの認識が示し、発表を締め括った。

 

◼︎Vietnam's Regulatory Policies on Recycling Metal Raw Materials and Circular Economy Implementation(ベトナムの再生金属原料規制政策およびサーキュラーエコノミー推進動向):農業環境戦略政策研究所(ISPAE) 環境政策研究員、Nguyen The Thong氏

Thong氏はベトナム農業環境省(Ministry of Agriculture and Environment)の立場から、ベトナムにおける金属リサイクル産業の現状と政策動向について発表した。

ベトナム政府はリサイクル産業を促進するため、各種インセンティブ政策を導入している。ベトナムでのリサイクル産業は大きく「フォーマルセクター(正式産業)」と「インフォーマルセクター(非公式産業)」の二つに分かれているという。このうち、フォーマルセクターは政府認可を受けた正式なリサイクル事業者を指す。

2024年時点のデータによれば、ベトナム国内には約200社の登録リサイクル企業が存在するものの、実際に全面的に稼働し、環境ライセンスを取得している企業は54社にとどまっているという。また、ベトナムのリササイクル企業として認識されている事業者も55社程度に限られており、ベトナムのリサイクル産業は依然として発展途上にあるとの認識を示した。Thong氏は登録企業数が増えている一方、許認可や安定操業などの面では課題が残されていると指摘し、発表を締め括った。

 

◼︎Regional Collaborative Carbon Reduction Using Industrial Parks as a Carrier: Coupling Recycling Metals with Green Supply Chains(工業団地を基盤とした地域連携型カーボン削減:再生金属とグリーンサプライチェーンの連携):RMI 常務理事兼北京事務所首席代表、Li Ting氏

Li氏は冒頭、循環型経済の実現には産業全体でクローズドループの仕組みを構築することが重要であると指摘。特に電池材料などの新素材については単なる「廃棄物」ではなく、「二次資源」として捉える必要があり、その活用には研究開発や技術投資が不可欠であると認識を示した。

ベトナムの工業団地(園区)はベトナム政府による積極的な政策支援や国家レベルの行動計画を背景に循環型経済を推進しており、産業チェーン全体を高度化するうえで有力なプラットフォームになり得る。特にアルミニウム、銅、電子廃棄物(E-waste)分野では産業集積が進み、財政インセンティブや優遇政策も整備されつつある。

ベトナムは工業団地を中核とした再資源化・高付加価値化モデルにおいて、東南アジアの中でも高い潜在力を持つ国の一つである。金属リサイクルや再製造産業は法規制面で課題と機会が共存する分野であり、「1+1が2以上になる」協力体制が重要であると強調した。実際、中国系企業を含む多くの企業が、ベトナムや東南アジアの工業団地や再製造産業への投資を積極的に進めているという。

Li氏は今後、地域連携強化に向けて①二国間協力メカニズムの構築、②グリーン技術・産業協力、③LCAなど標準・認証制度の連携、④グリーン投資やESG金融の活用について提言。特に、グリーン基金や特別融資制度、グリーンボンドなどの金融支援を通じ、企業の設備更新やグリーンインフラ整備を後押しする必要性を強調した。

 

◼︎China-US Economic Competition and Contest: What can Southeast Asia do?(米中経済覇権競争の中で東南アジアが果たす役割):SEASユソフ・イシャク研究所 アソシエイト・シニアフェロー、Lye Liang Fook氏

Lye氏は冒頭、ベトナムは東南アジア内のみならずグローバルなサプライチェーン再編の中でも重要性を増している戦略的パートナーであると指摘。特に鉱物資源やリサイクル産業分野では、今後ベトナムや東南アジア地域の役割がさらに高まるとの認識を示した。

米中間の関税競争は前年から本格化しており、特に昨年4〜5月頃には短期間で急速に激化した。こうした米中対立は単なる二国間問題にとどまらず、世界の貿易構造や投資フロー、製造業サプライチェーン全体に影響を及ぼしている。この結果、東南アジア各国はサプライチェーン再編や新たな投資受け入れ先として重要性を高めている。企業側でも中国依存を分散させる動きが加速しており、生産拠点や資源調達先を東南アジアへ移転・多角化する流れが進んでいる。

EVや再生可能エネルギー産業の拡大に伴い、銅やニッケルなどの重要鉱物需要が急速に高まっている。Lye氏は最後に、企業にとって重要なのは東南アジア各国の政策優先順位や産業育成方針を正確に把握し、その成長分野に合わせて事業展開を進めることであると強調。特に、鉱物・リサイクル分野は今後の成長局面を支える重要産業になる可能性が高く、企業はこの流れを的確に捉える必要があると述べ、発表を締め括った。

 

経済発展が著しいベトナムでは近年、リサイクル市場への注目が高まっている。

中国の廃棄物輸入規制強化後に東南アジアへのスクラップ流入が拡大したことを背景に、ベトナムではスクラップ材輸入に対する環境規制が強化されている。スクラップの輸入には政府許認可が必要な他、事業者は環境許可や保管・処理設備、不純物管理体制などが求められるという。

建築需要の拡大やインフラ投資の増加、製造業の集積、EV・電池関連産業の成長に伴い、ベトナムでは金属需要が増大しており、これに伴い金属リサイクル市場への注目が高まっている。しかしながら、講演でも指摘された通り環境ライセンスを取得している企業は依然として限られており、産業基盤は未だ発展途上段階にある。今後は政府主導で許認可制度の整備や操業安定化、インセンティブ導入などが進められる見通しであり、中長期的には制度整備とともに市場の成熟が進む可能性が高い。今後、市場が拡大するベトナムの金属リサイクル産業の制度運用の方向性やその動向について引き続き注視したい。

 

【関連記事】中国金属リサイクル春季会議(CMRA)2026アーカイブ/Archive of 2026 CMRA in Hanoi

(IRuniverse Midori Fushimi)

Midori Fushimi

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