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第3回中国金属リサイクル春季会議2026 - 詳報④:中国企業のグローバル資源循環戦略と実践事例

2026/05/14 13:10
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第3回中国金属リサイクル春季会議2026 - 詳報④:中国企業のグローバル資源循環戦略と実践事例

第3回中国金属リサイクル春季会議2026(主催:中国有色金属工業協会(CNIA)の再生金属支部CMRA)が、ベトナム・ハノイ市のJW Marriott Hotel Hanoiにて、2026年5月9日から12日までの4日間の日程で開幕した。本稿では10日の午後に行われた「中国企業のグローバル展開と実践事例の共有(Chinese Enterprises Going Global : Practical Experience Sharing)」セッションの4つの講演およびパネルディスカッションの内容について報告する。

Global Sourcing, Local Operations and A Resilient Nonferrous Supply Chain(グローバル調達と地域密着型運営で実現する強靭な非鉄サプライチェーン):イートン(中国)投資有限公司 非鉄金属購買マネージャー、Kevin Zhao氏

Zhao氏は冒頭、金属製造業は低利益率かつ投資回収期間の長い産業であることから、海外投資においては厳格なコスト管理が不可欠だと指摘。このためには、企業ごとに許容可能な利益水準を明確に設定した上で土地、工場、人件費、エネルギー効率などの内部コストを精緻に算出し、利益を管理可能な範囲に維持する必要がある。

海外工場建設におけるリスク管理では、①各国・地域ごとに異なる政策や制度への対応、②地域ごとに求められる環境規制や環境保護基準への適合、③周辺サプライチェーンの整備状況や輸出先顧客との物流・供給体制の確認、④地域社会との関係構築が重要課題として挙げられる。

Zhao氏は、グローバル展開を成功させるには各国固有の文化や人文的背景に加えて労働保護や雇用規制など、現地の労務ルールを十分に理解した上で事業運営を行う必要があると強調。その上で、海外投資を進める際には「安定した投資基盤」「リスク管理」「コスト管理」「市場との連動性」を総合的に考慮することが重要だと総括。単に低コストを追求するだけではなく、制度、供給網、地域社会との調和を踏まえた持続可能な事業運営が、海外展開成功の鍵になるとの認識を示し、発表を締め括った。

 

◼︎Localized Operations & Compliance Risk Management(現地化オペレーションとコンプライアンスリスクの管理):Deloitte Vietnam 税務・法務部門 パートナー、Dinh Mai Hanh氏

セッション2番目の発表者であるDinh氏は、ベトナムで20年以上にわたり法律事務所の税務・法務パートナーとして、外国直接投資(FDI)企業向けの税務・法務アドバイザリーを手掛けている。

2025年以降のベトナムでは税制・法規制の改正が相次いでおり、外国企業にとって投資環境が大きく変化している。税務管理法、法人所得税(CIT)、付加価値税(VAT)、個人所得税など広範な制度で見直しが進められており、投資促進を目的とした優遇措置も拡充されている。とりわけ、製造業やハイテク分野など戦略産業への投資を対象とした法人税優遇制度は、多くの海外企業から高い関心を集めている。

さらに、ベトナムは東南アジア諸国の中でも先駆けて「グローバル・ミニマム課税(Global Minimum Tax/Pillar Two)」を導入した国の一つであり、国際課税ルールへの対応を積極的に進めている。こうした改革はOECD主導の国際課税基準への適合を進めると同時に、外資企業に対する制度透明性や投資予見性の向上につながると指摘。Dinh氏はベトナム政府としても、税制優遇と国際基準への整合性を両立させながら、海外資本の呼び込みを強化する姿勢を示していると述べ、発表を締め括った。

 

◼︎Building an Overseas Recycling System: A Strategic Resource Pillar for Enterprise Internationalization(海外リサイクルシステム構築による、企業国際化のための戦略的資源基盤形成):巨東股份有限公司(Zhejiang Judong Co., Ltd)副本部長、Xu Zhonghua氏

 

巨東股份有限公司は2009年に設立された資源循環企業で、再生資源事業を中核に国内外で事業拡大を進めている。同社は中国の「国内・国際双循環」戦略を背景に、再生資源の全産業チェーン構築を推進している。中国国内では工場由来の鉄スクラップや設備更新に伴う廃材、社会回収資源を集荷する一方、海外では日本、マレーシア、韓国などの子会社を通じて再生資源を調達し、中国国内工場へ供給する体制を整備している。グローバル調達目標として、再生銅15万トン、再生アルミ30万トン、再生鋼50万トンを掲げている。

海外展開も積極的に進めており、現在は13カ所の海外解体工場と22カ所の回収ネットワークを運営。調達先の構成比は日本が40%、東南アジアと欧米がそれぞれ20%、中国国内が15%、残り5%を中東などその他地域が占めるという。日本向け事業では約51億円を投資し、回収・解体・物流拠点を整備。総面積3万5,000平方メートルの施設群に加え、4カ所の解体工場と2港湾を保有している。マレーシア向け事業では巴生(クラン)と関丹(クアンタン)に回収拠点を設置したほか、韓国向け事業では釜山には解体工場を開設した。

同社は国際的な再生資源供給網の構築を加速しており、日本や東南アジアを中心とした広域ネットワークを通じてグローバル循環経済への対応力を強めていくと述べ、発表を締め括った。

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◼︎Breaking boundaries, building a global green circle of friends(国境を越えたグローバル・グリーンネットワークの構築):京東工業供給(越南)有限公司(JD Industrial Supply Chain(Vietnam) Co., Ltd)総経理、Lei Chengbing氏

京東工業はベトナムに進出する企業向けに、MRO(間接材・保守補修用品)を中心とした調達支援サービスを展開している。現貨商城では顧客がオンライン上で商品を直接選択できる仕組みを整え、調達対応の効率化を図っている。配送面ではハノイで2〜4週間、ホーチミンで3〜5日の納期を想定する一方、ベトナム国内で構築済みの約3,000社のサプライチェーンを活用することで北部ハノイで最短3日、ホーチミンで5〜7日程度での納品にも対応できるという。

同社は単なる代行購買会社ではなく、顧客の調達課題に応じたソリューション企業である点を強調。中国の強みであるコスト競争力の高いサプライチェーンとベトナム現地の人材・物流・運営支援を組み合わせ、大量購買品から長尾の少量多品種注文まで対応する。さらに、各企業の購買データや工場ごとの物料を分析し「ベトナムで現地調達すべきもの」と「中国から越境調達すべきもの」を切り分け、標準化されたMRO調達リストとして提案している。

Lei氏は技術、商品供給網、現地運営支援を一体化し、工業分野の調達効率と運営効率の最大化を目指して、さらなる事業拡大についての方針を共有し、発表を締め括った。

 

◼︎パネルディスカッション

「海外で金属リサイクル事業を展開する際、企業は政策環境、資源供給、市場規模、コストやリスク管理をどのように両立すべきか」

政策・規制環境の確認が最優先であり、再生金属の輸入可否や環境規制、通関制度などを事前に把握する必要がある。特に東南アジアでは制度変更や運用の不透明さによって、輸入停止や事業遅延などのリスクが発生する可能性がある。

また、原材料の安定供給や労働力確保も重要な判断軸となる。前処理工程では依然として労働集約型の作業が残っており、各国の人件費や加工体制を踏まえた拠点配置が必要との意見が示された。ベトナムについては市場成長性に加え、環境・技術要件を満たす企業に対する税制優遇などの投資メリットが紹介される一方、VAT還付や通関、税務申告では厳格なコンプライアンス対応が求められる。

中国企業の海外展開支援については、物流・在庫・調達を一体化したサプライチェーン構築や現地在庫の拡充による迅速供給の取り組みが紹介された。加えて、下流企業との連携では品質検査基準の標準化、第三者検査、長期在庫契約、価格決定モデルの整備などを通じ、長期的な信頼関係を構築する重要性が共有された。

 

 

展示会会場にて、音声入力・逐次通訳アプリを使って日本語-中国語で交流を図る弊社棚町(左)

中国企業のグローバル戦略は巧みで、自社開発した機械を国内外に急速に普及させている。グローバル展開にあたって言語面が壁になれば逐次翻訳アプリを自社開発するなど、海外展開における障壁を次々と乗り越えながら物流、通関、税務、現地加工、下流供給網まで含めた包括的なサプライチェーン構築を進めている姿勢も印象的であった。

東南アジアでは建設需要やインフラ需要の拡大を背景に、金属リサイクル需要の増加が期待されている。こうした市場で事業機会を獲得するには、日本企業も単独で進出するだけではなく現地企業や中国企業を含めたパートナーシップを柔軟に構築し、各国の制度やサプライチェーンに適応していくことが重要になると感じた。

金属スクラップが戦略資源として捉える動きが世界的に強まる中、中国企業がどのように海外拠点を拡大し、技術・供給網・制度対応を一体化させながら競争力を高めていくのか。今後の動向について引き続き注視していく。

 

【関連記事】中国金属リサイクル春季会議(CMRA)2026アーカイブ/Archive of 2026 CMRA in Hanoi

(IRuniverse Midori Fushimi)

Midori Fushimi

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