Loading...

100超えるコンソーシアムが登録―自動車リサイクル資源回収インセンティブ制度の現状

2026/05/22 14:28
文字サイズ
100超えるコンソーシアムが登録―自動車リサイクル資源回収インセンティブ制度の現状

インタビューに応じてくれた栗田理事

 

4月1日にスタートした自動車リサイクル資源回収インセンティブ制度。100超えるコンソーシアムが誕生した一方で、事業者によっては「具体的に何をすれば良いのかわからない」「そもそも、まだ開始されていないのでは」という声も聞こえている。本記事では制度の事務局を務める自動車リサイクル促進センター(JARC)の栗田聡業務執行理事への取材をもとに、制度の実態と現状を探った。

 

ASRになるはずだった樹脂やガラスをインセンティブとして還元

 

自動車リサイクル制度は、2005年に施行された自動車リサイクル法に基づき、ASR(自動車破砕残さ)、エアバッグ類、フロン類の適正処理を柱として運用されてきた。これまでの仕組みでは、シュレッダー後に発生するASRの多くが熱回収に回されていたが、近年は「燃やす前に資源として使えるものを取り出すべきではないか」という議論が進んでいた。

 

今回始まった制度は、その課題に対応するものだ。解体業者や破砕業者が、本来ASRになるはずだった樹脂やガラスを取り外し、原材料メーカーへ供給することで、ASRの発生量を減らす。その結果、自動車メーカー側の再資源化費用が軽減され、その一部を「インセンティブ」として回収事業者へ還元する仕組みとなっている。

 

引用元:自動車リサイクル資源回収インセンティブ制度 特設サイト
https://www.jarc.or.jp/shigenkaisyu/login/

 

同制度の原資は自動車所有者が新車購入時などに預託する「リサイクル料金(ASR処理費用分)」の一部。現時点で対象となるのは、バンパーやダッシュボードなどの樹脂部品、サイドガラスなどのみだが。今後は対象素材の拡大も検討されている。

 

制度の目的について、栗田聡理事は「燃やす量を減らし、資源循環を大きく回していきたい」と説明する。単なる熱回収ではなく、材料として再利用する「マテリアルリサイクル」を広げる狙いがある。

 

自動車メーカーによる自主的な取り組み

 

制度において、JARCは制度検討の“事務局”的な役割を担う。ただし、誤解されがちなのが、センター自体がコンソーシアムを認定したり、契約主体になったりしているわけではない点だ。

 

実際の契約主体(申請窓口)は2チームからなる「ASRチーム」と呼ばれる自動車メーカー側の組織であり、コンソーシアムを構成する管理会社と契約を結ぶ。センター側は制度設計の検討事務局やシステム運営、周知活動などを担当している。

 

栗田理事は取材に対し、「これは法律で義務付けられた制度ではなく、国が主導し検討した民間の自動車メーカーによる自主的な取り組み」と強調。「国と歩調を合わせながら制度周知を進めている」と説明した。

 

また、同センターは自動車リサイクルシステムの管理・運営も担う。車両の引取から解体、破砕、エアバッグ類・フロン類の処理などのステータス管理を行い、リサイクル料金の管理にも関わっている。

 

すでにインセンティブ支払いも始まっている

 

制度の実績について、ASRチームの一つであるARTチームに確認したところ、現時点で公表はしていないとのことだが、JARCによれば、「100を超えるコンソーシアムが立ち上がっており、インセンティブ支払いも始まっている」ことは間違いないという。詳細は不明だが、制度そのものが“動き始めている”ことは確認できた格好だ。

また、今年度は制度参加コンソーシアムの2次募集も予定されており、今後さらに参加事業者は増える見込みだという。

 

なお、インセンティブ額についての規定はチームによって異なる。ART チームはみなし重量に基づき支払われる一方で、TH チームはカテゴリー車両別の資源回収率に基づき計算される。

 

ARTチームのインセンティブ単価は、減量分のASR再資源化コスト等を勘案して、「28円/㎏(樹脂・ガラス同額/税別)」と定められている。THチーム(解体業者向け)については下記料金表がWEB上で公開されている(5月15日時点)

 

引用元:豊通リサイクルホームページ
https://www.toyotsurecycle.co.jp/files/uploads/%E8%A9%B3%E7%B4%B0%E8%AA%AC%E6%98%8E.pdf

 

未参画の事業者が参加するには

 

まだ制度に参加していない解体業者や破砕業者が参画するには、まずコンソーシアムを組成する必要がある。コンソーシアムには、解体業者、破砕業者、回収部品引取業者、原材料メーカーなどが参加し、その取りまとめ役として、ASRチームへの提案書提出などを担う「管理会社」を置くかたちだ。

 

その後、いずれかのASRチーム側へ申請を行い、承認されることでシステム利用が可能になる。既存コンソーシアムへの途中参加も制度上は可能だが、ARTチームによれば、「事務手続き含めて新規同様に必要であり、特にメリットはないと考える」とのことだ。また初年度ということもあり、同チームの管轄ではそういった事例は無いという。なお、前述した通り、現在は申請を受け付けておらず、今年度に予定している二次募集の開始を待つ必要がある。

 

栗田理事は「何をしていいかわからないという事業者はまだ多い」としながらも、「まずは特設サイトなどで情報収集し、行動を起こしてほしい」と呼びかける。

 

「自動車リサイクル資源回収インセンティブ制度 特設サイト」では事前の参加登録が必要ではあるが、登録さえすれば即時、制度説明動画の視聴やコンテンツ閲覧が可能となっている。

 

実際、制度はまだ始まったばかりであり、全国的にも“これから”という空気感が強い。今後は、好事例の共有や対象素材の拡大などを通じ、制度を育てていく段階にあると言えそうだ。

 

どれぐらいの樹脂回収が見込めるかを示す「みなし重量」を計45台分提示する必要があるなど、中小事業者が同制度に参画しにくい点は検討段階から指摘されており、自社保有車両で要件を満たせる大手事業者が中心となっているのが実態のようだ。制度本来の目的達成のため、今後の改善に期待したい。

 

事業者の味方、シンプルな申請システム

 

課題がある一方で朗報もある。栗田理事は「回収量を申請するシステムは操作者の負担が少ないように配慮している」と強調する。

 

自動車リサイクル促進センターは、2026年1月に既存の自動車リサイクルシステムを大規模改修し、この制度向け機能を追加した。システムにはマニュアルや操作動画も用意されており、基本的には「車両からどの部品を回収したか」を入力する程度のシンプルな構造だという。実際、制度開始の初月である4月の問い合わせ件数は約20件程度だという。100を超えるコンソーシアムが参画していることを考慮すれば、非常に少ない件数だといえる。

 

「元々20年間、自動車リサイクルシステムを使っている事業者が多い。慣れてしまえば難しくないという声を大手事業者からももらっている」(栗田理事)。

 

制度開始直後ということもあり、現場では「実態が見えにくい」という声も残る。しかし、100を超えるコンソーシアムが動き出し、実際にインセンティブ支払いも始まっていることは、今回の取材ではっきり確認できた。制度はまだ黎明期にある。参加事業者の拡大、対象素材の追加、中小事業者への配慮など、今後の改善余地は大きい。それでも、自動車リサイクルを「燃やして終わり」から「資源循環」へ進化させる第一歩として、この制度が持つ意味は小さくない。

Kota Kuribara

関連記事

新着記事

ランキング