(写真:北自協の石上代表理事(石上車輛))
2026年5月22日金曜日、最高気温が20度過ぎという涼しく快適な北海道・札幌のプレミアホテルTSUBAKI-札幌にて、北自協の30周年記念でもある第30期の講演会・懇親会が開催された。ここで筆者が一番驚いたのは、この4月にスタートした解体インセンティブに申し込んだ解体事業者数が全国で84。そのうち34事業者が北海道の事業者であるということである。関東が7事業所、中部が2事業所、近畿が2事業所ということなので、北自協がリードした北海道の取り組みがこの制度に対して前向きであることであった。
懇親会の前にスピーチを行った自動車リサイクル促進センター関係者によると、解体インセンティブによる樹脂に関しては、北海道のコンソーシアムからの受け入れ67トン、全体の23%まで占めるという。人口規模・経済規模でも全国の5%弱の北海道なので、この解体インセンティブ制度が制度設計時から、北自協とマテックがけん引してきたことを改めて認識できたひと時であった。
欧州でのELV規則(2025年12月最終合意)では、使用済自動車由来の再生樹脂を新車製造時にメーカーに一定量使用することが課せられることになっており、日本の自動車メーカーも安定した再生樹脂の確保のためこのスキームに期待しているという。そのためには、ASRリサイクル料金の一部プラスアルファのインセンティブが必要だと改めて感じた次第である。
この講演会の前に、JAERA(日本自動車リサイクル機構)の阿部知和専務理事より「JAERAの活動及び自動車リサイクル法合同審議会での取り組み」と題する講演があった。ここでは、現在進行中の自動車リサイクル法20年目・4度目の見直しに関する産構審・中環審の合同審議会において、日本自動車リサイクル機構が解体業界の意見を吸い上げ、そのような要望を出したのか、そしてそれに対する担当部局の対応の感触などを講演した。なお、日本自動車リサイクル機構が要望したのは以下の5点である。
1.使用済自動車レベルの輸出禁止(都市鉱山である使用済車の海外流出の防止)
2.不適正処理事業者の撲滅(国内事業者でのリサイクル処理を安定的に確保する必要性を強調)
3.ASRチームの一元化(現状ではTHチームとARTは同じ再資源化施設を使用し、再資源化価格もほとんど同じ模様。事務処理コストを一元化することで、少なくとも2割から3割はコストカットが可能)
4.海外人材の活用と育成(人手不足解消)
5.電動車解体処理の安全性確保(損傷した車載LIBの取り扱いの周知徹底。コスト負担を議論すべき。)
また2026年から開始したワイヤハーネスの共同出荷スキームは、これまでほぼ中国等へ輸出していたワイヤハーネスが、ナゲットの被覆電線も適正処理できるという観点から国内製錬(JX金属)と連携して、「Car to Car のリサイクルを実現できる国内銅製錬会社と連携した取り組み」が紹介された。
講演会の最初には、経産省自動車課自動車リサイクル推進室宮越朗氏・北海道環境生活部環境保全局産業廃棄物課長の遠藤浩氏から来賓の挨拶があり、そのあと経産省自動車課の課長補佐でもある高倉寧氏から「最近の自動車リサイクルを巡る課題と政策動向」という講演があった。高倉氏は2024年度のデータをもとにELVの発生減を説明していたが、この傾向は続くと論じた。
実際、JARCが公表した2025年度の使用済自動車の解体業者の引取り台数は対前年度比97%の247.7万台まで減少したという。質疑応答では「今後の使用済車の減少はどこまで進むのか?発生台数の推定式などはないのか?」等業界からの要望とも思える質問が出た。また、不適正処理業者問題に関しては、「札幌近郊の某市において外国人解体業者が集積している。それは商売なのでわかるとして、不適正処理があまりにも多い。私のヤードもいつ火が付けられるか用心に用心を重ねて操業している。犯罪を起こすような人は徹底的に取り締まってほしい」という要望も出た。
次に本講演会のハイライト、元日本ハムファイターズのガンちゃんこと岩本勉氏が「人と組織のイマドキ」と題した講演を行った。岩本投手と北自協の石上剛代理事とは、初対面が夜のお店で、そこで石上代表理事がプライベートで奏でるアコースティックギターのビートルズのナンバーに岩本氏は感動したとのエピソードも披露された。
バファローズファンの筆者にとって、まだ閑古鳥鳴くパリーグ時代に第一線で投げてきた岩本氏の話はまさにパリーグの話題が多かった。なお、岩本氏がドラフト2位で指名されたドラフトは、あの野茂英雄投手に8球団が競合した1989年度のドラフトであったという。この年のドラフトでは、1位指名だけで野茂投手以外に、佐々木主浩(大洋)、小宮山悟(ロッテ)、佐々岡真司(広島)、潮崎哲也(西武)、与田剛(中日)、西村龍次(ヤクルト)、岩本以外の2位に古田敦也(ヤクルト)3位指名で国会議員を務める石井浩郎(近鉄)、4位指名に前田智徳(広島)5位指名に新庄剛志(阪神)等大豊作のドラフトであったという(敬称略)。
人手不足とくに若手の人材確保難に悩む業界に対しては、岩本氏はティーチングとか―チングの違いを説いた。つまり、ヒトに教えるのがティーチング、ヒトを育てるのがコーチングであり、ティーチングは「これやりなさい」とアドバイスをしても若手はたいてい拒否する。コーチングは「何がしたい?」「じゃあ一緒にやろう」「こんな方法もあるよ。一緒にやろう」と若者に様々なメニューから方法を選択させ、選手とともに汗を流すコーチが長い間活躍することを紹介した。
懇親会では自動車再資源間協力機構、自販連からご挨拶があったが、このお二人ともホンダのご出身で、自動車リサイクル機構の阿部氏もホンダOBとホンダ色が濃い(?)集いであった。北自協の若手が企画したビンゴ大会でも、商品としてホンダのグッズが並んでいた。
懇親会の中締めでは、今回顧問に就任した北自協の元業務監査の山口一幸氏(ライズコーポレーション)に花束が贈呈された。参加メンバーは異口同音に、「解体インセンティブ参加もそうだが、北自協の活動は、山口顧問のリーダーシップ無しではなしえなかった」と話していた。このような和やかな雰囲気の中、参加者はすすきのでの二次会に移動した。

(花束贈呈後にスピーチをする山口顧問)
(熊本大学 外川健一)