5月29日9時半、UACJはIR-DAY2026を開催した。説明に使われた資料はこちら。なお、会場は港区の新社屋で行われた。説明者は資料に掲載されているので、それを参照。質疑応答で質問の多かったTAAについて、その内容を追加した。

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<第4次中期経営計画 後半に向けて>

〇財務目標の達成に向けた進捗
27年度の主要財務目標として、事業利益600億円(+α)、Adjusted EBITDA 1,000億円、ROE 9%以上、ROIC 9%以上、D/Eレシオ 1.0倍未満を掲げた。中計前半は、想定外の環境変化に対応しつつ、持続的成長に向けた戦略投資の種まきを進めた。
〇外部環境変化に応じた投資配分の見直し
北米におけるBEV(電気自動車)化の減速等の環境変化を受け、自動車部品分野への投資を抑制する一方で、底堅い包装容器(缶材)需要や航空宇宙・防衛分野向けの成長投資を当初計画の780億円から850億円へと機動的に増額した。
〇航空宇宙・防衛分野を成長の柱へ
深谷製造所への厚板焼入れ材製造設備の増強(約110億円投資、27年度下期稼働予定)や、鋳鍛製作所への国内最大級リング材製造設備の導入(約120億円投資、29年中稼働予定)を決定し、拡大するグローバル需要を捕捉する。
<事業成長に向けた「稼ぐ力」の強化戦略>

〇グローバル3極体制の進化
アルミニウム圧延材の需要は、包装容器や自動車、半導体関連などを牽引役にグローバルで拡大が見込まれる。日本、米国、タイ(UATH)の3極体制を活かし、生産能力の増強と各拠点間の生産互換性を強化することで収益性を向上する。
〇国内事業の収益性強化
UBC(使用済み飲料缶)溶解リサイクルシステム(福井)や最新鋭鋳造システム(小山)の導入により、リサイクル強化とコスト削減を進める。また、生成AI普及によるデータセンターや半導体製造装置向けの厚板需要など、成長市場を確実に取り込む。
〇タイ(UATH)の収益改善
グローバルな缶材需要の拡大を背景に、欧州向け缶材の出荷を開始し、販売ポートフォリオを改善。昨年度は想定以上のバーツ高により収益が目減りしたが、為替の落ち着きに加え、価格改定や新製品(箔地など)の高付加価値化により、今後の利益貢献が期待される。
〇環境価値の経済価値化
グリーン新地金や再生原料の活用によるCO2排出量の削減(環境負荷低減)を進め、環境配慮型製品「ALmitas+ SMART」などを拡販する。CO2削減効果をカーボンプライス等を用いて「見える化」し、付加価値として顧客に価格転嫁・還元する取り組みを地道に進める。
<米国事業(TAA)の競争力強化と今後の見通し>

〇強固な米国市場の需要
米国の缶材需要は、サステナビリティ(持続可能性)を重視する消費者の志向に支えられ、10年代末まで年平均約3%の着実な成長(CAGR)が見込まれる。現在、市場は構造的に供給不足の状況にある。
〇生産能力とリサイクル機能への戦略的投資
Logan工場において、熱間圧延(Hot Mill)設備のアップグレードに約1億4,500万ドル、スクラップのシュレッダーライン増設に約4,000万ドル、KAP JV(スクラップ処理施設)に約5,000万ドルの投資を実施した。これにより、27年度に向けて圧延生産量が17%増加、スクラップ使用量が46%増加し、単位当たりコストの大幅な引き下げを実現する。
〇圧倒的な資本効率と競争優位性
TAAの設備投資は既存インフラのボトルネックを解消するものであり、生産量1ポンドあたりの投資額が数セントという極めて高い資本効率を誇る。他社に先駆けて設備を構築した「ヘッドスタート」に加え、何十年にもわたるサプライヤーとの強固な信頼関係により、多様なスクラップ材を調達・処理できるネットワークが、他社には模倣しがたい強力な競争優位性となっている。足元の有利なスクラップ価格差(スプレッド)に依存せずとも利益を出せる強靭なシステムが完成している。
〇価格改定とインフレへの対応
米国では3〜8年の長期契約が基本だが、契約内には生産者物価指数(PPI)などに連動する価格調整(インフレ調整)メカニズムが組み込まれているため、コスト上昇に対してマージンはしっかりと守られている。
〇関税政策の持続性
米国の現行の高い関税環境下でも問題なく事業運営できており、今後も米国の貿易政策として関税は存続する(税率は調整される可能性がある)と見ている。USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の再交渉等を通じ、北米地域の枠組みを補助金付きの輸入材から保護する方向性が続くと予想している。
<今後の事業戦略達成に向けた財務戦略>

〇ROE・ROICの改善と運転資本の削減
事業利益の順調な拡大(26年度見通し650億円)により、ROICの分子は好転している。一方で、地金価格の高騰と円安による運転資本(棚卸資産等)の増加が課題となっており、全社的な「CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)改善プロジェクト」を発足させた。重量ベースから金額ベースへの厳格な在庫管理への変更や、売掛金回収の早期化により、運転資金の圧縮を図っている。
〇設備投資管理の強化
第4次中計の設備投資総額(1,650億円)の枠組みを維持しつつ、投資採算性評価をより厳格化し、規律ある投資配分を実行する。
〇株主還元の強化と資本効率の向上
安定継続的な配当を基本とし、中計期間中は最終利益の30%以上の配当性向を維持。業績の好調を背景に、25年度の年間配当予想を55円/株(前回公表比+10円)に上方修正し、26年度は58円/株を計画。市場との積極的な対話を通じて資本コストを低減し、企業価値向上に努める。
(IRuniverse 井上 康)