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【MIRU特別鼎談】ダニエリが切り拓く鉄スクラップの未来:中性子線を用いた革新的選別機「DSTM」の衝撃

2026/06/04 18:00
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【MIRU特別鼎談】ダニエリが切り拓く鉄スクラップの未来:中性子線を用いた革新的選別機「DSTM」の衝撃

世界的な大手製鉄エンジニアリングメーカーであるダニエリ(Danieli)に転職された、元東京製鐵の酒井氏を新橋のMIRU事務所にお招きし、新たに開発された画期的なスクラップ処理システム「Danieli Scrap To Melt(DSTM)」について伺いました。聞き手はMIRUの棚町と赤井です。
酒井氏は現在47歳。東大卒で三井物産、そして東京製鐵、という華麗なるコースをたどってきたが、今年3月に東京製鐵を退社。ダニエリでは海外投資案件の業務をメインに従事。世界を飛び回る日々だ。そんな多忙ななか、5月某日、新橋のMIRU事務所においでいただいた。

表面から内部へ。中性子線が実現する「フルボリューム」分析

棚町:酒井さん、本日はよろしくお願いします。事前にいただいた資料を拝見しましたが、このダニエリの新しい選別機「DSTM」、非常に興味深いです。シュレッダーマシンのようなイメージを持っていましたが、実際は全く違うようですね。特に驚いたのが「中性子線」を使っている点です。これは一体、どういった仕組みなのでしょうか?
 
酒井:よろしくお願いします。「DSTM」はDanieli Scrap to Meltの略です。世界中で最新の電気炉を提供してきたDanieliが、スクラップ溶解の最適化までを視野にいれて開発したシステムです。このシステムはDanieliの高機能な大型シャーによる切断・かさ密度の向上、その後の選別工程での清浄化、更に「PGNAA(即発ガンマ線中性子放射化分析)」等による分析・品質管理の組み合わせで成り立っています。PGNAAは米国のパートナー企業と協力して販売していますが、コンベア上を流れるスクラップに対して、放射性同位元素から熱中性子を照射します。すると金属内部の原子核が励起され、特定の元素ごとに固有のエネルギーを持つガンマ線を放出するんです。
赤井:ガンマ線ですか!X線や赤外線を使った選別機はよく聞きますが、中性子線というのは新しいですね。
 
酒井:おっしゃる通りです。従来のXRF(蛍光X線)では表面から約100μm、最新のLIBS(レーザー)でも5~10μmの深さしか分析できないと聞いています。しかし、このPGNAAなら金属の塊の内部(フルボリューム)まで非破壊で平均組成を測定できます。分単位で連続的に、Cuは±0.02%という非常に高い精度での分析が可能です。

棚町:なるほど。塗装された部品や、中にモーターが組み込まれたままの塊でも、内部の銅(カッパー)などの成分が正確に把握できるということですね。これは世界中の鉄鋼メーカーが喉から手が出るほど欲しい技術だと思います。


個別ピッキングではなく「バッチ選別」でカッパーを制御

棚町:一つ疑問なのですが、これだけ高精度に成分がわかるとして、小さなモーターの塊などを見つけたら、マクスウェルの悪魔のように「1個単位」でアームロボットがピッキングして弾き出すのでしょうか?
 
酒井:いえ、1個単位でのピッキングではありません。この「ダイナミック・スクラップ分析システム」は、オンライン上で流れているスクラップ全体の「平均合金化学成分」をリアルタイムで測定しています。そして、その成分推移に応じて、高速コンベアの先にあるダイバーターシュート(振り分け装置)でバッチごとにバンカー(貯蔵庫)へ振り分けます。
 
赤井:成分のパーセンテージで、行く先を変えるわけですね。
 
酒井:その通りです。例えば銅(Cu)の含有量で設定した場合、平均0.20%未満ならバンカー1へ、0.20%~0.30%ならバンカー2へ、0.30%を超える場合はバンカー3へ、というように自動でルートを切り替えます。シミュレーションでは、最も品質の良いバンカー1(Cu: 0.097%)に全体の34%、バンカー2(Cu: 0.244%)に31%、バンカー3(Cu: 0.519%)に35%を振り分けるといった具合に、各バンカーの平均銅濃度を目標値内に収めることが可能です。
 
棚町:なるほど!これならアベレージでカッパー0.2%以下の「高級なスクラップの山」を意図的に作り出すことができるわけですね。スクラップの価値を根本から引き上げる素晴らしいアプローチです。


AIのディープラーニングによる成分予測と平準化
 
赤井:これ、ずっとオンラインで成分データを取っているということは、AIで学習させたりもできるんですか?「こういう素材を入れると、結果的にカッパーが何パーセントになる」といったデータがどんどん蓄積されそうですが。
 
酒井:アメリカでは2002年以上で、20社以上で導入され、累計2600万トンの分析実績がありますが、導入後に「何をどう流せばどういう成分になるか」という知見が各社で溜まってきています。導入前は加工したスクラップの成分を知るすべは、製鋼メーカーで溶かすことを待つ以外はありませんでした。これがどの母材をどのように加工するとスクラップの成分がどうなるかが分かるようになります。これにより、リサイクラー側で製造するスクラップの成分をコントロールする管理方法が確立されてきます。
 
棚町:それは強力ですね。いつ、どこから持ってきたヤードのスクラップはどういう傾向があるか知見が溜まっていく。例えばAIで同じことを行おうとした場合は、ダニエリさんでは開発することは可能なのでしょうか?
 
酒井:はい、ダニエリオートメーションという専門の部隊がありまして、そこで専用のAIソフトの開発が可能です。検査機を通した時のデータと、実際に炉に入れて溶解させた後の分析結果を照らし合わせ、相関係数をどんどん1に近づけていくようなフィードバックを行います。受け入れ側のメーカーも、成分が保証されているので安心して高く買えるのではないでしょうか。
 


日本市場への導入の壁と、中性子線源「カリホルニウム」
 
棚町:技術的には申し分ないですが、日本で導入するにあたっての課題は何でしょうか?やはり、中性子を出すための「線源」ですか?
 
酒井:お見込みの通りです。X線は電気的に出せますが、中性子線の場合はラジオアイソトープ(放射性同位元素)を装置に組み込む必要があります。具体的には「カリホルニウム(CF252)」などを使用しますが、非常に強力な反面、半減期が2~3年と短いため定期的な交換が必要です。また、日本企業はやはり放射線源を工場内に置くことや、万が一の紛失リスクに対して強いアレルギーを持たれるケースが多いです。
 
赤井:なるほど。日本では「放射線=危険」というイメージが先行しがちですから、そこをどうクリアするかが普及のネックになりそうですね。


ダニエリと国内電炉メーカー、相反する「スクラップ哲学」
 
棚町:最後にもう一点、非常に興味深い戦略の違いについてお伺いします。現在、国内の大型電炉メーカー(東京製鐵など)は、「増え続ける低グレードのダストや銅混入スクラップを、いかにそのままの状態で使いこなし、見合った用途を開発するか」という方向に進んでいますよね。
一方で、このダニエリのDSTMシステムは「低グレードなスクラップをリファイン(精製・選別)して品質を良くし、再び高級用途に使えるようにする」というアプローチです。この「スクラップに対する哲学」が根本的に異なりますが、これを前面に出して国内に売り込んでいくお考えですか?

酒井:老廃スクラップの有効活用は、スクラップで製鉄をしていく上で避けては通れない課題ですし、各社が持てる技術に応じて、様々なアプローチがあると考えます。高品位スクラップから高級品を製造するアプローチの場合は、例えば厳しい銅の残留許容値(0.15%~0.20%)を満たすために、スクラップそのもののクオリティをコントロールする技術が不可避になります。また、我々Danieliが手掛ける還元鉄プラントENERGIRONからの還元鉄を活用頂くのも非常に有効な方法だと思います。

棚町:「再生原料全盛時代」において、他に類を見ない必須のソリューションになりそうですね。本日は大変貴重なお話をありがとうございました。MIRUの読者にとっても、非常にインパクトのある記事になると思います。
 

化学組成に基づいてスクラップを処理・分類するための革新的ソリューションDSTM

(IRUNIERSE YT)

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