LME銅相場は足元で1万4,000ドル台に接近し、年初に記録した史上最高値1万4,500ドル圏を再び視野に捉えている。市場ではAI(人工知能)向けデータセンター建設ラッシュや電力インフラ投資拡大を背景に強気論が優勢だが、一方で「期待先行」との慎重論も出始めている。
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■ ゴールドマン、シティは強気予想を維持
足元の強気論を代表するのが大手金融機関の価格見通しだ。
ゴールドマン・サックスは、インドネシア・グラスバーグ鉱山やコンゴ民主共和国カモア・カクラ鉱山の供給障害を受けて供給見通しを引き下げ、年末予想を従来の1万2,465ドルから1万3,735ドルへ上方修正した。シティグループも供給不足リスクと米国向け輸入増加を背景に強気見通しを維持している。
加えて、中東情勢悪化による硫黄・硫酸供給逼迫は銅鉱山操業の新たなリスクとして浮上している。特にチリやコンゴでは硫酸供給への依存度が高く、供給制約が長期化すれば生産への影響も避けられないとの見方がある。
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■ AI需要は本当に「ゲームチェンジャー」か
一方、ReutersのコラムニストAndy Home氏は、AI需要に対する市場の期待がやや過熱している可能性を指摘する。
確かにAIデータセンターは従来型施設より高い銅使用量を必要とする。S&P Globalはデータセンター関連銅需要が2025年の110万トンから2040年には250万トンへ増加すると予測している。
しかし現実には、
• 電力供給不足
• 送電網接続の遅れ
• 建設人員不足
• 機器供給制約
などがボトルネックとなり、発表された計画のすべてが実現する保証はない。
Oxford大学とMarexの共同研究では、多くのAI案件を「Bragawatts(誇示目的の発表案件)」と表現し、実際の建設は市場が期待するほど急速には進まない可能性を指摘している。
さらに光ファイバー化や高電圧送電技術の進歩によって、将来的にはAI設備1単位当たりの銅使用量が低下する可能性もある。
■ 最大の支援材料は「AI」より供給問題か
むしろ足元の銅相場を押し上げている最大の要因は供給面にあるようだ。
• グラスバーグ事故による生産回復遅延
• カモア・カクラの操業障害
• 銅鉱石品位の低下
• 新規鉱山開発の遅れ
• 米国関税観測による在庫偏在
などが複合的に作用している。特に米国では関税観測を背景にCOMEX在庫が60万トン超まで積み上がる一方、LME在庫は流出圧力を受けている。
■ 展望
今後の銅相場は、
「AI需要拡大という長期テーマ」
と
「供給制約という足元の現実」
の二重構造で推移する可能性が高い。
AIが銅需要を押し上げる方向性自体はほぼ確実だろう。しかし、現在の1万4,000ドル近辺という価格水準を正当化しているのは、むしろ鉱山供給障害や米国関税観測による需給の歪みである可能性が高い。
強気派が唱える1万5,000ドル到達シナリオは十分視野に入るものの、その前提となる供給障害や関税観測が後退した場合には調整局面も想定される。市場は依然として強気だが、その根拠は「AI万能論」よりも「供給不安」に比重が移りつつあるようだ。
(IRUNIVERSE S. Aoyama)
本記事は執筆者個人の分析および見解であり、IRuniverseの公式見解を示すものではありません。内容は情報提供を目的としたもので、投資判断の根拠として用いることを意
図したものではありません。