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構図の再編――ベトナム、初めて世界粗鋼生産国トップ10入り

2026/06/23 07:45
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構図の再編――ベトナム、初めて世界粗鋼生産国トップ10入り

2026年4月、ベトナムの粗鋼生産量は210万トンに達し、前年同月比で4%増加した。この生産量により、ベトナムはイタリアを抜いて初めて世界の粗鋼生産国トップ10に入った。2026年1~4月の累計粗鋼生産量は850万トンとなり、前年同期比で8.4%増加した。この節目は、ベトナム鉄鋼産業にとって歴史的な飛躍であると同時に、現在の世界鉄鋼市場の構造変化を読み解く重要な手掛かりでもある。

一、ベトナムの台頭:ビレット輸入依存から世界トップ10へ

ベトナム鉄鋼産業の台頭は、一朝一夕に実現したものではない。2000年当時、国内の鉄鋼企業は建築用鋼材の圧延に必要なビレットを輸入に大きく依存していた。しかし2010年以降、ベトナムの鉄鋼産業は自主生産能力の面で大きな進展を遂げた。2023年の粗鋼生産量は2,000万トンに達し、世界第12位となった。2025年には2,460万トンまで増加し、世界第11位に浮上するとともに、東南アジア最大の粗鋼生産国となった。

この飛躍的な発展を支えているのは、一貫製鉄能力の急速な拡大と、高付加価値鋼材の生産能力強化である。最大のけん引役はHoa Phat Group(ホアファット・グループ)で、2025年の粗鋼生産量は約1,100万トンに達し、全国総生産量の44.7%を占めた。2026年には同社の粗鋼生産量が1,400万トンを超え、前年比で30%増加する見込みである。同社はダクラク省で年産600万トン規模の新製鉄所プロジェクトも進めており、総投資額は120兆ベトナムドン(約47億米ドル)に上る。さらに、Xuan Thien Group(スアンティエン・グループ)も年産750万トン規模のグリーン製鉄総合施設の建設を開始しており、ベトナム鉄鋼産業の能力拡大は全面的に加速している。

 

二、中国市場:生産縮小と需要低迷が併存

ベトナムが力強く拡大する一方で、中国の鉄鋼産業は深い構造調整の過程にある。中国国家統計局のデータによれば、2026年5月の中国の粗鋼生産量は8,436万トンで、前年同月比2.7%減少した。1~5月の累計粗鋼生産量は4億1,553万トンとなり、前年同期比で3.9%減少した。供給側では、生産調整が安定したペースで進んでいる。

需要面も楽観できない。2026年5月には、不動産、インフラ、製造業投資の伸びがいずれも鈍化し、鋼材市場の需要は低迷した。6月の鋼材卸売市場における販売量予想指数は43.75%、在庫量予想指数は57.72%となり、下流需要の下支えが弱まる一方で在庫が積み上がるとの市場見通しを反映している。価格面では、6月18日の唐山遷安普通ビレットの工場出荷価格が1トン当たり3,000元まで下落した。

輸出については、2026年5月の中国の鋼材輸出量が1,034.1万トンとなり、前月比で8.9%増加した。一方、1~5月の累計輸出量は4,455.4万トンで、前年同期比8.1%減少した。世界的に貿易保護主義が強まるなか、中国の鋼材輸出が大幅に回復する余地は限られている。

 

三、世界構造:地域間の分化が進み、東南アジアが新たな成長極に

2026年4月、世界鉄鋼協会が統計対象とする69カ国・地域の粗鋼生産量は合計1億5,340万トンで、前年同月比1.9%減少した。世界の粗鋼生産国トップ10は、中国、インド、米国、日本、韓国、ロシア、トルコ、ドイツ、ブラジル、ベトナムの順である。

今回のランキングで最も大きな変化は、ベトナムがイタリアに代わってトップ10入りした点である。同時に、2月時点ではなおトップ10に入っていたイランは12位に後退した。こうした順位変動の背後には、より深い構造的な力が働いている。すなわち、世界の鉄鋼需要の成長エンジンが、中国からインドや東南アジアなどの新興市場へと移りつつあるということである。

インドは、世界で最も成長の速い主要鉄鋼市場である。2026年4月の粗鋼生産量は1,380万トンで、前年同月比3.9%増加した。世界鉄鋼協会は、インドの鉄鋼需要について、2026年に7.4%増加し、2027年には9.2%増へ加速すると予測している。東南アジアでは、ベトナムやインドネシアなどが大規模な高炉・転炉プロジェクトを中心に生産能力の拡大を進めており、輸入代替と世界輸出市場でのシェア獲得を目指している。

世界全体では、世界鉄鋼協会は2026年の鉄鋼需要が0.3%増の17億2,400万トンとなり、2027年には2.2%増の17億6,200万トンへ伸びが加速すると予測している。しかし、世界の鉄鋼生産能力には構造的な過剰圧力が依然として存在する。2025年の粗鋼生産能力は約25億5,000万トンに達する一方、設備稼働率は73%にとどまる。OECDも、世界の鉄鋼過剰能力は2028年まで拡大を続けると指摘している。

 

四、今後の展望

短期的には、ベトナム鉄鋼産業の拡大基調は続く見込みである。Hoa Phatの2026年粗鋼生産目標は1,400万トン超であり、Xuan Thien GroupやFormosa Ha Tinhなどのプロジェクトが順次稼働すれば、ベトナムの年間粗鋼生産量は3,000万トンを突破する可能性がある。その場合、世界トップ10内での地位はさらに固まるだろう。ただし、ベトナム鉄鋼産業も課題を抱えている。世界的な鉄鋼過剰能力のもとで、新たに増加する生産能力を吸収するには、国内需要の持続的な成長と輸出市場の効果的な開拓が不可欠である。

中国市場について、世界鉄鋼協会は2026年の中国の鉄鋼需要の減少幅が1.5%に縮小すると予測している。不動産市場の調整が終盤に近づくにつれ、2027年の中国の鉄鋼需要は2026年とほぼ横ばいとなり、循環的な安定局面に入ると見込まれる。ただし、厳しい世界貿易環境は、引き続き大きな下振れリスクである。

世界的に見ると、鉄鋼産業は「弱い均衡」の局面に入りつつある。一方では、需要が数年にわたる減少を経て底入れし、回復軌道に向かいつつある。他方では、生産能力の拡大ペースがなお需要の伸びを上回っている。地域間の分化は今後さらに進むとみられる。伝統的な鉄鋼消費地域の成長が停滞する一方で、南アジア、東南アジア、アフリカなどの新興市場は加速的な成長を示している。

ベトナムが初めて世界の粗鋼生産国トップ10入りしたことは、世界鉄鋼産業の重心が東南アジアおよび南アジアへ移り続けていることを象徴している。この傾向は今後数年でさらに深まり、世界鉄鋼産業の競争構造を継続的に再編していくだろう。

 

参考資料

今日鋼鉄、2026年6月21日。

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1868584810279598428

貿企通、2026年6月3日。

https://www.eccpit.com/news/Y21zcG86MjMxOTg

VOV World. 2026-05-26. 

https://vov.vn/zh-CN/xinwen/yuenanshoucijishenshijieshidagangtieshengchanguozhilie-2437735.vov

上海有色網. 2026-05-27. 

https://news.smm.cn/live/detail/103924864

ベトナム政府新聞網、2026年5月26日。

https://cn.baochinhphu.vn/%E8%B6%8A%E5%8D%97%E8%B7%BB%E8%BA%AB%E5%85%A8%E7%90%83%E5%8D%81%E5%A4%A7%E9%92%A2%E9%93%81%E7%94%9F%E4%BA%A7%E5%9B%BD%E8%A1%8C%E5%88%97-116260526104816416.htm

 

趙 嘉瑋

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