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タングステン価格、中国横目に高止まりの可能性・NIC西野氏 スクラップ処理能力は限界

2026/06/23 15:02
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タングステン価格、中国横目に高止まりの可能性・NIC西野氏 スクラップ処理能力は限界

(今年6月、より多くのお客様に気軽にお立ち寄りいただけるよう西新橋に新事務所を開設したNIC Resources)

中国タングステン価格の乱高下が続いているが、国際価格への直接的な影響は出ていない。年初からの中国相場の動向、今後の国際相場の見通しについて、タングステンを扱う専門商社NIC Resourcesの西野元樹社長に聞いた。
■中国APT、急騰と失速の背景

過去6か月間の中国タングステンAPT価格の推移

 市況全体をけん引するのはまず中国市場の動きだ。2026年は3月半ばにRMB149万と年初(RMB67万1000)の2.2倍に急騰した。

 まずこの急騰について、中国では早くから投機的資金の流入が言われていた。これについて西野氏は「実態は少し違う」と話す。「まず、ベースに中国でも供給不足があり、昨年8月から国際相場を上回る水準まで国内相場が高騰。それに伴い、実需はあるものの取引量が減少、結果的に少量のスポット取引が中心になる中で、オーダーを受ける側に『今日売るより明日売った方が高い』と先高期待が広がった。売り控えと高値追随の動きが重なり、短期に急速な価格上昇が起きた」(西野氏)という。一方、逆に中国のAPT価格は4月中旬にRMB135万まで下げた後、5月中旬にはRMB65万までピークから6割弱下落した。その後反転し、6月19日に仲値79万5000/mtとなっている。4月中旬以降の大幅下落は「年初からの動きからギアが逆に入った」ようだ。当面、このような動きが続くのではと指摘する。

 では実際の供給はどうなのか。西野氏は「中国でもタングステン鉱石の採掘は減っているとしか考えられない」とみる。中国政府による安全・環境規制強化や鉱石品位低下などから、国内鉱山の実質的な供給力が低下している可能性がある。証左となるのは中国の鉱石輸入の急増だ。

 中国のタングステン鉱石の輸入量は、2023年の約2,000~3,000トンから2025年には1万565トンと2年間で3倍以上に増えた。2026年は4月までで5281トンで、単純計算で通年なら1万5000トン程度になる見通しだ。輸入元はカザフスタン、北朝鮮、ミャンマーなど。ロシアはロシア国内需要が強く輸出していないようだというが、西野氏は「中国は周辺国を巻き込んで原料を調達している」と話した。中国は一定程度の原料は入手出来ているため、中国価格は前述の先高期待の剥落とともに失速したとみられる。

■国際価格、中国価格との関連薄く

 もっとも、こうして精製された中国のタングステンが国際市場に出回るかと言えば、それはまた話が別であるようだ。西野氏は「原料を含めて、海外から中国に流入する動きはあれど、中国から海外に流出するのは輸出許可制度により、かなり限定的」と指摘し、特に日本向けは「2026年1月以降、実質的にゼロになった」と話した。タングステンは中国以外に採掘されている場所は限られており、おのずとスクラップからの精製が必要となる。

 足元では、欧米での中国向け需要の減少を受けてタングステンスクラップ価格は下落しているものの、スクラップからAPTを生産する精錬能力はやはり逼迫しており、「委託加工の場合、今スクラップを調達してもAPTになるのは半年以上先」(西野氏)という状況だ。

 また、台湾でもスクラップリサイクルの処理能力増強を計画しているが、生産増に繋がるのはまだ先だという。西野氏によると、世界中からスクラップが集まる台湾では稼働率が高く、処理能力は逼迫している。近年になってAPT製造も始まったが、従来の主力はST(タングステン酸ナトリウム)であり、急速な供給拡大は難しい状況だ。設備増強の計画はあるものの、「すぐに能力が増えるわけではない」(西野氏)としている。

 西野氏は「結局、中国のAPT価格が下がっても、西側ではAPT不足という構造は変わらない」と指摘する。

 実際、国際APT価格は中国価格に追随する動きは乏しい。欧州タングステンAPT価格は6月18日時点で仲値$3040/MTUを付けた。

 

過去3か月間の中国内外のタングステンAPT価格の推移

■APT価格、27年までは高止まりか

   一方、中国では需要はやはり底堅い。西野氏は「2016年からの10年間でみると、新規の需要は過去5年間で大きく伸びている」と話す。半導体やAI関連、ドローン、太陽光パネル向けシリコンウエハー切断用タングステンワイヤーなど新たな需要が掘り起こされている。また軍需向けも公式統計は存在しないもののAIやドローン向けに使われている可能性がある。半面、自動車や工作機械などの伝統的な超硬向け需要は伸び悩んでいるという。

 西野氏はこうした需給の現状を受け、タングステン価格の高止まりを予想する。まず国際価格については「中国相場の上昇が一段落した状況で、APT仲値が$4000、$5000と急騰することは考えにくい。ただ、中国価格の下落も下げ要因になりにくく、値下がり材料が乏しい」として、「『2026~2027年に大幅下落する可能性は低い』との見方が市場では優勢だ」と話した。

 また、中国価格については「やはり中国自体の鉱石不足がうかがわれる以上。下値は堅いのではないか。もし再度高騰した場合、西側のスクラップを吸い上げる可能性もある」とみる。

 このため国際価格は「中国価格が下げれば足踏みし、中国価格が上げれば上げる」状況になりがちとみていた。

Kure

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