ナトリウムイオン電池に特化した米スタートアップ各社が6月16日、業界団体「American Battery Leadership Coalition(ABLC)」を結成。Alsym Energy、Peak Energy、NAIONなど10社以上が参加し、政策支援の獲得と国内サプライチェーンの構築を目指す。現時点で米国企業はすでに15GWh超のナトリウムイオン蓄電の調達意向を表明しており、需要側の準備は整いつつある。
中国が握る主導権
ナトリウムイオン電池は現在、製造面でも技術面でも中国勢が先行している。
2025年の世界のナトリウムイオン電池製造能力のほぼ全量を中国が占めており、2030年には中国が約580GWhに拡大する一方、それ以外の世界全体では約20GWhにとどまる見通しだ。

(出所:IEA "Sodium-ion battery installed and announced manufacturing capacity by chemistry and region, 2025 and 2030)
世界最大の電池メーカーであるCATLはすでに量産体制を整えており、2026年末には長安汽車の新型EV「Nevo A06」への搭載が始まる見通し。同社は将来的に既存電池市場の3割から4割が同技術に置き換わると予測を示す。
技術面でも中国優位は鮮明だ。6月21日、米Cell Press系学術誌『Cell Reports Physical Science』に掲載された研究では、中国・鵬輝能源(Hina)が開発したナトリウムイオン電池の性能と製造品質がテスラのリチウムイオン電池に匹敵するレベルに達していることが確認された。
低温充電や体積エネルギー密度の課題は残るものの、豊富な資源量とコスト優位性を背景に、ナトリウムイオンはリチウムの有力な代替候補として浮上しつつある。
米国が見出す「最後の窓」
こうした状況に危機感を抱いた米国の関連企業が立ち上がったのがABLCだ。Alsym Energy、Peak Energy、Batri、鉄フロー電池のESS Tech、化学メーカーのIngevity、北米初のナトリウムイオン・ギガファクトリー建設を目指すNAION、国内製造支援のRe:Build Manufacturingなど多様な企業が参加する。
ABLCは声明の中で、「この技術は商業化においてまだ十分に初期段階にあり、米国は国内資源基盤とアメリカのイノベーションに支えられた形でリーダーシップを確立することが依然として可能だ」と表明した。
リチウムイオン電池でのサプライチェーン構築では中国に大きく出遅れた苦い経験がある。ナトリウムイオンに限っては今がその機会だ、というのが連合の立場だ。
実際、米国企業はすでに15GWh超のナトリウムイオン蓄電の調達意向を表明しており、需要側の準備は整いつつある。課題は政策面だ。ナトリウムイオンは現行の製造業優遇税制や調達規則の対象外に置かれており、連合は連邦政府に対し、専用の研究開発資金の創設やパイロット事業支援などを求めていく方針だ。
激化する中米の覇権争い
ナトリウムイオン電池をめぐる競争は、もはや単なる技術や産業の枠に収まらない。ABLCが同技術を「米国のエネルギー貯蔵、製造競争力、国家安全保障にとって不可欠」と位置づけるように、そこには地政学的な文脈が色濃く影を落とす。
リチウムイオン電池の分野で、中国に主導権を奪われた米国。次世代の蓄電技術を舞台とした覇権争いが今、静かに、しかし確実に幕を開けた。