韓国ポスコ(POSCO)は、7月積みとなる国内向けステンレススクラップの購入価格を改定し、サプライヤー各社への通知を行った。主力鋼種を中心に軒並み引き上げとなっており、改定後の価格は以下の通りである。
304系(SS304): キロ当たり 2,140ウォン (前月比 90ウォン引き上げ)
316系(SS316): キロ当たり 4,200ウォン (前月比 100ウォン引き上げ)
| POSCO | 304 | 316 | 400 |
| 2025年12月 | 1,810 | 3,510 | ー |
| W | ▼10 | ▼100 | ー |
| 1円=9.33won | 194円 | 376円 | ー |
| 100W=10.71円 | ▼1円 | ▼12円 | ー |
| 2026年1月 | 1,790 | 3,500 | ー |
| W | ▼10 | ▼10 | ー |
| 1円=9.16won | 195円 | 382円 | ー |
| 100W=10.91円 | △1円 | △6 | ー |
| 2026年2月 | 1,870 | 3,620 | ー |
| W | △80 | ー | ー |
| 1円=9.41won | 198円 | 390円 | ー |
| 100W=10.61円 | △3円 | ー | ー |
| 2026年3月 | 1,855 | 3,680 | ー |
| W | ▼15 | ー | ー |
| 1円=9.24won | 200円 | 398円 | ー |
| 100W=10.82円 | △2円 | △8円 | ー |
| 2026年4月 | 1,880 | 3,800 | ー |
| W | △25 | △120 | ー |
| 1円=9.42won | 199円 | 403円 | ー |
| 100W=10.61円 | ▼1円 | △5円 | ー |
| 2026年5月 | 1,950 | 3,900 | ー |
| W | △70 | △100 | ー |
| 1円=9.22won | 211円 | 422円 | ー |
| 100W=10.84円 | △12円 | △19円 | ー |
| 2026年6月 | 2,050 | 4,000 | ー |
| W | △100 | △100 | ー |
| 1円=9.40won | 218円 | 425円 | ー |
| 100W=10.63円 | △7円 | △3円 | ー |
| 2026年7月 | 2,140 | 4,200 | ー |
| W | △90 | △100 | ー |
| 1円=9.56won | 223円 | 438円 | ー |
| 100W=10.44円 | △5円 | △13円 | ー |
| 為替円ドル | SUS304 scrap | SUS430 scrap | LMEニッケル相場 (月平均)$/トン | LMEニッケル在庫 (月末トン) | ASIA SABOT ($/トンCIF) | 韓国国内価格304(Won/kg) | |
| (TTS) | メーカー炉前ベース(円/㎏) | メーカー炉前ベース(円/㎏) | |||||
| 2026年1月 | 157.78 | 185~195 | 65~72 | 17,844 | 285,552 | 1150~1250 | 1790 |
| 2月 | 156.13 | 185~195 | 65~72 | 17,132 | 286,234 | 1150~1250 | 1870 |
| 3月 | 159.68 | 190~200 | 65~72 | 17,093 | 282,240 | 1150~1250 | 1855 |
| 4月 | 160.33 | 195~205 | 65~74 | 18,005 | 277,398 | 1250~1350 | 1880 |
| 5月 | 159.38 | 220~230 | 65~74 | 18,805 | 276,864 | 1350~1450 | 1950 |
| 6月 | 161.58 | 225~235 | 67~76 | 17,865 | 274,830 | 1360~1460 | 2050 |
| 7月 | 2140 |
(*6月の数値および平均値は6月26日現在時点)
■ LME指標と乖離した価格設定の背景
今回の価格改定において市場が最も注目すべき点は、国際的な指標との乖離である。LME(ロンドン金属取引所)ニッケル相場の平均インデックスをベースとした従来の価格算定モデルに従えば、7月積みの購入価格は「下落」の公算が大きいと市場関係者の多くが試算していた。
しかし、ポスコは事前の下落予想に反して、キロ当たり90〜100ウォンという明確な引き上げに踏み切った。この異例とも言える価格改定の背景には、指標の変動を凌駕するほど逼迫した「韓国国内の需給バランス」と「原料確保に向けた防衛的措置」が強く作用している。
具体的には、以下の3つの要因が価格を強力に押し上げた。

ファーストベンダー(指定問屋)における在庫枯渇:
ポスコへ直接納入を行う一次ベンダー各社において、スクラップの集荷難による深刻な在庫不足が発生している。
ポスコ自体の原料在庫の減少:
ベンダー側の在庫不足は、そのままポスコ自身のスクラップ在庫の低下に直結しており、足元の安定操業を維持するための原料確保が急務となっている。
スクラップの国外流出(輸出)防止:
国内市況が低迷した場合、サプライヤーがより条件の良い海外市場へスクラップを輸出するリスクが高まる。ポスコは購入価格を引き上げることで国内価格にプレミアムを持たせ、貴重な資源であるステンレススクラップの国外流出を水際で防ぐという防衛的なインセンティブを働かせている。
しかしながら、在庫不足(*韓国国内でのステンレススクラップ発生不足=日本も同じ)だからといって輸入が増えるかというとそうでもなさそうだ。というのもポスコは輸入価格も韓国国内の単価と同水準にしている。日本国内では中部地区の特殊鋼メーカーが304系でキロ240円まで引き上げているため、日本の輸出シッパーの価格競争力は強いとはいえない。
■ 総括
「LME相場に連動してスクラップ価格が決まる」という基本的なセオリーから逸脱した今回の決定は、ステンレススクラップが単なる相場商品ではなく、実需に基づいた戦略物資としての側面を強めていることを示している。今後のスクラップ市況を読み解く上では、LMEなどのマクロ指標に加え、メーカーおよびベンダーの在庫水準や、資源流出を防ぐための各国の国内プレミアム動向といった「ローカルな需給要因」をこれまで以上に注視していく必要がある。