MIRU取材班は6月3日、アルミニウムリサイクル総合メーカーのアサヒセイレンの本社工場(大阪府八尾市)を訪問し、同社が導入した破砕・高度選別機およびその生産ラインを見学した。本報告では同社が破砕・選別機を導入した背景や現在の運用状況、またアルミスクラップ業界の現状について紹介する。
アサヒセイレンが高度選別事業に本格参入
アサヒセイレンの本社工場は、敷地面積20,000平米、建物延面積3,500平米で、月間約4,000トンの生産能力を持つ。このうちADC材が約2,700トンと全体の68%を占め、残る約1,300トン(32%)が鋳物用合金やその他製品となっている。同社は、2024年4月よりアルミスクラップの高度選別事業の検討を本格的に開始した。その背景には以下の3つの要因が挙げられる。
1つ目は、自動車業界における再生材需要の高まりである。EV向け大型一体鋳造部品「ギガキャスト」への注目が高まる中、自動車メーカーからは再生アルミ活用への期待が寄せられていた。従来、こうした用途には新地金由来の材料が中心だったが、CO2削減の観点から再生材への切り替えニーズが拡大している。
2つ目は、建材分野におけるサッシtoサッシリサイクル需要の拡大である。建材メーカー各社はカーボンニュートラル実現に向けて再生原料比率を高めており、高品質な6000系スクラップの需要が急速に高まっている。
3つ目は、原料調達環境の変化である。これまで、二次合金メーカーが主力原料としてきた上物スクラップは輸出向けや圧延メーカー向け需要の拡大により争奪戦が激化している。そのため従来は価値が低かった雑品やローグレードスクラップを高度選別によって高付加価値化し、新たな原料ソースとして活用する必要性が高まっていた。
このようなアルミリサイクル業界での需要の変化や高まりを受け、同社は本社工場に破砕・高度選別設備を導入することを決断。約10億円を投じ、2026年4月より本格稼働させている。
高度選別が切り拓くアルミ水平リサイクル
国内では人口減少や製造業の成熟化に伴い、工場由来スクラップの発生量が減少傾向にある。一方、アルミスクラップは韓国や東南アジアを中心とした海外需要が根強く、近年は圧延メーカーや建材メーカーによる再生材活用の拡大も進んでいる。その結果、従来は二次合金メーカー向けに流通していたスクラップが他用途へ流出するケースも増え、高品質スクラップの確保は年々難しくなっている。
こうした中、同社は雑品スクラップや使用済みサッシなど、従来は十分に活用できなかったローグレード原料に着目している。特に、アルミサッシの多くは6063合金で製造されているが、回収後のサッシスクラップには異物や他系統のアルミ合金が混在しており、そのままでは再びサッシ原料として利用することが難しい。

そこで、同社は高度選別技術を活用し、混合スクラップの中から6000系アルミを高精度で抽出することで、サッシ原料として再利用可能なレベルまで純度を高める取り組みを進めている。これにより、使用済みサッシを再びサッシ原料へ戻す「サッシtoサッシ」の実現を目指す。
高度選別によって合金ごとの分離が可能になれば、同じ用途へ戻す水平リサイクルへの転換が進む。これは資源循環の質を大きく高める取り組みとして注目されており、海外でもサーキュラーエコノミー推進の観点から導入が広がっている。
同社はこうした高度選別事業を、「新たな原料創出事業」と位置付けている。これまで低価格で取引されていたローグレードスクラップを用途別に高精度で分離し、新たな資源価値を付与することで、国内資源循環の強化と原料調達力の向上を両立させる考えだ。
破砕からLIBS選別まで担う最新ライン
本社工場に新たに導入された設備は、破砕から合金選別までを一貫して行う本格的な高度選別ラインだ。まず、サッシや雑品スクラップを破砕機へ投入する。使用しているのはクボタ製の縦型破砕機で、アルミプレス品や厚みのあるスクラップにも対応できる処理能力を備える。

破砕後は磁力選別によって鉄分を除去。その後、回転式の円筒スクリーン(トロンメル)による粒度選別を実施し、スクラップを30~90ミリのサイズ帯に分級する。これは、後工程で使用するX線選別機やLIBS選別機は、このサイズ帯で最も高い選別精度を発揮するためである。続いて、渦電流選別機(ECS)が稼働する。ECSは金属と非金属を分離し、アルミをはじめとする非鉄金属を効率的に回収する役割を担う。
その後、TOMURA製の透過型X線選別機を2段階で活用する。1台目では銅、真鍮、亜鉛などアルミより比重の大きい金属を除去し、原料品質を向上させる。さらに2台目では鋳造用アルミと展伸材用アルミを選別する。そして、最終工程に配置されているのがTOMURA製LIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:レーザー誘起ブレークダウン分光法)選別機だ。この工程ではレーザー照射によって発生するプラズマを分析し、アルミ合金の成分をリアルタイムで判別する。同社は6000系アルミをターゲットとし、その他アルミとの選別を行っているが、1000系や5000系などの選別にも対応可能である。選別対象とそれ以外を区分する仕組みのため、需要に応じて対象合金を変更できる柔軟性を持つ。

選別後のスクラップは、47トン反射炉で溶解される。この工程では窒素を吹き込みながら脱ガス処理を行い、アルミ中の水素ガスを除去する。これは、水素ガスが残留するとダイカスト製品などで割れや品質不良の原因となるためである。溶解時に発生するドロス(酸化物などの浮上物)は、灰搾り機によって金属分を回収し、歩留まり向上につなげている。生産される製品の構成はADC材が約8割、鋳物用合金が約2割となっている。

新たに導入した破砕・選別ラインの現在の処理量は、月700トン程度にとどまる。最終的には月1,500トン規模への拡大を目指しており、これを達成するには稼働時間を延長する必要があるという。
高度選別技術は万能ではなく、LIBS選別機の最大の課題は表面状態の影響だ。LIBS選別機は表面にレーザーを照射して素材を分析するため、塗装や汚れが付着している場合、レーザー分析結果に影響を与える可能性がある。
さらに、複合材への対応も課題だ。例えば異なる合金が貼り合わされた材料では、レーザーが照射された表面側のみを認識するため、内部組成まで正確に把握することが難しい。同社も設備導入から間もないこともあり、現在は操業ノウハウの蓄積を進めている段階だ。同社では実運用を通じて選別精度や処理効率を高め、来年度中に月1500トン体制を確立することを目標としている。
中東情勢が揺らすアルミ市場

2026年前半のアルミ市場は、中東情勢によって大きく揺れ動いた。当初は中東紛争による供給不安から、LMEアルミ価格が上昇。日本国内のプレミアム価格も上昇し、ADC価格は一時キログラム当たり560~580円まで上昇し、業界内では「夢の600円台も見える」との声も聞かれた。
しかし、状況は一変。物流混乱によるナフサ不足懸念が広がり、自動車向け塗料供給への不安が浮上。結果として自動車メーカーによる生産調整観測が強まり、アルミ需要減退への警戒感が高まった。さらに、中国やマレーシアなどから安価なADC12の輸入材が流入し始めたことで、市場には下押し圧力がかかり、国内合金メーカーは「原料高・製品安」という厳しい構造に直面している。
原料価格が上昇する一方、製品価格には輸入材との競争圧力がかかり、利益を確保しづらい局面にある。だからこそ、アサヒセイレンが進める高度選別戦略は、様々な品質のスクラップを国内で確保して用途別に高付加価値化して販売することで、市況変動への耐性を高められる可能性がある。
また、スクラップ輸出に依存せず国内循環を強化するという意味でも、同社の取り組みは業界全体にとって重要なモデルケースになり得る。アルミスクラップの価値が世界的に高まる中、同社が目指す「ローグレードスクラップの高度利用」は、日本の資源循環を支える新たな基盤となるかもしれない。
(IRuniverse Midori Fushimi)