東京大学の加藤泰浩氏(大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授・理学博士)は15日、東京ビッグサイトで開催中のプラントショー2026で講演した。同氏は「南鳥島周辺海域の海底鉱物資源研究の最前線」のテーマの下、海底鉱物資源の実開発に向けた取組みの現状や、経済安全保障上の意義を説明。南鳥島周辺海域のレアアース泥の採掘・精錬を実用化することで中国依存の状態から脱却すべきだと考えを示した。
加藤教授らの研究グループが2011年に太平洋の広範囲に存在することを発見した「レアアース泥」は、従来の海底資源とは一線を画す新たな資源として注目を集めている。レアアース泥の最大の長所は、希少性が高く産業的に重要な重レアアースの含有率が非常に高い点にある。加藤教授は「平均で50%にも達し、元素バランスが極めて優れている」と強調した。
また、レアアース泥の資源量は膨大で、陸上埋蔵量の1000倍から1万倍に達すると推定されている。このほか、常温の希塩酸に短時間浸すだけで97パーセントのレアアースを抽出できるという、精錬の容易さも備えているという。さらに、トリウムやウランといった放射性物質をほとんど含まないため、極めてクリーンな資源と位置付けられる。加藤教授によれば、南鳥島周辺のEEZ内では超高濃度のレアアース泥も発見されており、日本が世界一の資源大国となる可能性を秘めていると同氏は主張した。
南鳥島で採掘したレアアースは国内で精錬すべき
加藤教授は講演の中で、南鳥島で採掘した資源を国内で精錬することの重要性を訴求した。現在、福井県などでレアアース精錬工場の建設に向けた動きがあり、こうした国内拠点を整備することで、採掘から製品化までを日本国内で完結させる「一気通貫」のサプライチェーンを構築すべきであると提言していた。
また、加藤教授は、経済安全保障の名の下にコストを度外視する考え方を否定し、「あくまで産業として自立できる経済性の確保が必須である」と見解を示した。加藤教授らの試算によれば、南鳥島での取り組みでは、レアアース価格がピーク時より落ち着いた現状においても、十分な経済性が確保できる見込みが立っているとのことだ。特に南鳥島の超高濃度レアアース泥を効率的に回収できれば、極めて高い収益性を実現することが可能と説明した。
差額補填型支援で中国対策を
実開発に向けた最大の障壁の一つは、中国による価格操作、すなわちダンピング攻撃である。過去にアメリカの鉱山が中国の低価格攻勢によって閉山に追い込まれた例があるように、日本が開発を本格化させれば中国が価格を戦略的に引き下げてくることは容易に予想されると加藤氏は警告した。これに対抗するため、加藤教授は「差額補填型支援」という新たな枠組みを提案。中国が戦略的に価格を下げた場合、その下落分を政府が補填するべきとした。
同氏はレアアース供給が途絶した場合の日本の経済損失は年間約2.6兆円に達すると伝え、それに比べれば補填額は極めて少額であり、経済安保と産業競争力の両立を図れると主張した。
また、海洋環境への影響についても、国際標準の基準に基づいたシミュレーションが進められており、持続可能な資源開発の見通しは立っているという。日本が持つ広大なEEZを最大限に活用し、海外企業とも連携しながらサプライチェーンの中核を担うことで、日本は資源消費国から資源大国へと変貌を遂げる大きなチャンスを迎えていると加藤教授は聴講者に呼びかけた。