8月31日、ウェスティンホテル東京において、インドの資源リサイクル協会MRAI(Material Recycling Association of India)が主催する「第4回MRAI国際ビジネスサミット(IBS 2026)」が開催された。本サミットは講演に加えてブース展示も行われ、50カ国以上から約1,000人の参加者と30社の出展企業が一堂に会し、業界の最新動向や技術革新について議論をする場となる。
本サミットの講演プログラムは以下の通り。本報は開幕速報として開会セッション、「ERI India」の設立についての発表、会場の様子について報告する。
IBS 2026プログラム
8月31日
・開会セッション
・ERI JAPANとEcorecoが「ERI India」を設立
・世界のアルミニウムリサイクル:脱炭素化と需要を見据えた需給見通し
・世界のステンレス鋼:市場動向、貿易・需給のダイナミクス
9月1日
・アジアの鉄スクラップ市場:動向、課題と機会
・銅リサイクル:構造的需要、サプライチェーンと世界の事業機会
・重要鉱物と鉛蓄電池:資源循環による世界の資源安全保障の強化
9月3日、4日
・プラントツアー
開会セッション

第4回MRAI国際ビジネスサミット(IBS 2026)はインド国歌の斉唱で開幕。その後、商売繁盛や新たな門出をつかさどるガネーシャ像の前で来賓らがろうそくに火をともすインドの伝統的な開会式を行い、「日印貿易関係」をテーマにした発表が続いた。
MRAI会長、Sanjay Mehta氏

セッション冒頭では、Mehta氏がインドと日本が築いてきた信頼関係と循環型経済分野における連携の可能性について言及した。経済成長を続けるインドでは、製造業や自動車、電子機器、再生可能エネルギーなどの需要が拡大しており、資源の安定確保と脱炭素化の両立が課題となっている。リサイクルはもはや単なる廃棄物処理ではなく、産業政策や資源安全保障、強靱なサプライチェーンを支える重要な要素である。日本には高度な回収・再資源化技術と長年の経験があり、資源を大切にする考え方も社会に根付いている。一方、インドには巨大な市場と製造基盤、成長余地がある。両国の強みを結び付けることで、天然資源への依存低減や低炭素製造、新たな投資・事業機会の創出が期待できる。
日本とインドは2016年の安倍元首相の時代から、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて戦略的な協力関係を築いてきた。Mehta氏は今後、高市首相の強いリーダーシップの下、経済安全保障や重要鉱物の安定確保、資源循環などの分野で連携を深めることが期待するとして、発表を締め括った。

Mitsui & Co., Ltd. 、代表取締役社長、Kenichi Hori氏

インドと日本は過去10年間、貿易・投資、インフラ、技術、人材、エネルギー、持続可能性など幅広い分野で関係を深めてきた。こうした連携は政府間にとどまらず、両国の企業や産業、人々による具体的な協力へと発展しており、共通する産業課題の解決と次世代の価値創出を支える基盤である。
三井物産は長年にわたりスクラップ取引を通じて日本の鉄鋼業を支えてきた経験を生かし、成長市場であるインドで事業を拡大する方針である。同国の金属リサイクル大手MTCとの提携などを通じ、資源の安定供給や産業発展、持続可能な社会に向けた実用的な解決策を提供する。
CMR Green Technologies Ltd.、Managing Director、Mohan Agarwal氏

世界のアルミニウム需要は年率約3.3%で拡大し、再生アルミニウムはそれを上回る伸びを示している。このため、各国がスクラップの国内確保に動き、輸出規制を強める一方、自由な貿易の維持が重要である。インドでは経済や産業の成長に伴い、リサイクル分野も年率12%超で拡大している。CMR Green Technologiesはインド国内13カ所に生産拠点を展開し、再生アルミニウム合金や100%再生材を用いた素形材のほか、ステンレス鋼、真鍮、銅、マグネシウムの炉投入材を供給している。
Agarwal氏はこれまで、日本企業との二つの合弁事業を通じてトヨタ生産方式や品質・工程管理の知見を取り入れてきた。今後も循環性とESGを重視し、ネットゼロの実現を目指す方針を示し、発表を締め括った。
MRAI副会長、Dhawal Shah氏

日本の映画や家電、自動車は長年にわたりインド人の生活に浸透し、暮らしや産業の発展を支えてきた。現在、インドには1,400社を超える日本企業が進出し、自動車を中心に工業製品、再生可能エネルギー、電子商取引、技術などへ事業領域を広げている。両国の協力を支えるのは相互の信頼と尊重、長期的な視点、現地調達を含むローカル化である。日本企業の投資・生産は従来のインド国内向けから世界市場向けへと変化し、地域的な広がりも見せている。
一方、二国間貿易はインド側の輸出が少なく、不均衡の是正が課題である。Shah氏は経済連携協定の見直しや適切な提携先の開拓を通じ、資源リサイクルを含む幅広い分野で貿易と投資を拡大すべきだと指摘し、発表を締め括った。
Toyota Tsusho Corporation、事業部 リバースサプライチェーン担当ゼネラルマネージャー、Masaru Akaishi氏

インドと日本は投資、防衛・安全保障、半導体、人工知能、インフラ、重要鉱物など幅広い分野で戦略的・グローバルな協力関係を築いている。インドの地下鉄や産業・貨物回廊の整備にも日本が貢献し、日本企業は品質と信頼性によって同国で地位を確立してきた。今後はクリーンエネルギー、重要鉱物、強靱なサプライチェーン、経済安全保障などで共同研究・開発を深める段階にある。
成長するインドでは材料需要の増加に伴い、リサイクルや循環型経済の市場も拡大する。Akaishi氏は最後、資源効率や廃棄物処理で豊富な経験を持つ日本は理想的な協力相手であり、企業間連携を通じて技術移転や投資を促進すべきだと強調し、発表を締め括った。
駐日インド大使館次席公館長(インド外務職)、Shri R. Madhu Sudan氏

Sudan氏は冒頭、インド商工省と日本の政府機関、金融機関、企業経営者らが物流、半導体、人工知能、製薬、繊維、スタートアップなど幅広い分野で協議を進めていると紹介。取り組みの重点は、投資拡大や強靱なサプライチェーンの構築、技術連携、新たな事業機会の創出である。資源リサイクル分野でも、回収・選別、高度な資源回収、電池、電子廃棄物、使用済み自動車など、バリューチェーン全体で提携の余地が広がっている。
Sudan氏は日本企業にインドを単なる市場ではなく、共同で技術や製品を生み出す製造・イノベーション拠点であり、他の新興市場への玄関口として捉えるよう呼び掛け、本会議での議論が具体的な協力関係へ発展することへの期待を示して発表を締め括った。
MRAI 副会長 Zain Nathani氏

Nathani氏はリサイクルが単なる廃棄物処理ではなく、資源、技術、貿易、産業競争力を左右する重要分野であることを強調。資源効率化を産業理念として定着させた日本の技術・品質管理と、インドの巨大な製造基盤、加工能力、成長する再生資源需要を組み合わせることで、二次金属や再生プラスチックの安定した供給網を構築できるとした。
今後はスクラップをそのまま取引する段階から、品質を保証した二次原料を供給する仕組みへ移行する必要がある。Nathani氏は両国の連携によって、アジア各国にも展開できる循環型経済のモデルを確立すべきだと強調し、発表を締め括った。

ERI JAPANとEcorecoが「ERI India」を設立

ERI Japanは、伊藤忠商事の100%子会社で中古携帯端末のオンライン流通事業を手掛けるBelongと、米国最大規模の電気・電子機器リサイクル企業Electronic Recyclers International(ERI)が2026年4月に設立した合弁会社であり、日本国内でIT機器全般のリサイクル事業を展開している。
Ecoreco(Eco Recycling Limited)は、インド・ムンバイに本社を置く電子廃棄物(E-waste)の総合リサイクル企業である。2005年に事業を開始し、インド初の電子廃棄物リサイクル企業を掲げている。
関連記事:伊藤忠商事、IT機器循環型ビジネスの構築へ―米国最大の電気電子機器リサイクル事業者と資本業務提携
本セッションではBelongの代表取締役社長である西村耕一郎氏が代表の1人として登壇し、ERI JAPANとEcoreco が戦略的提携で設立したERI Indiaに祝意を示した。

ERI Indiaの発足は単なる新会社の立ち上げではなく、日本、米国、インドの三国が資源循環という共通課題の解決に向けて協力する新たな一歩である。
西村氏は日本、米国、インドの三カ国は国や市場環境こそ異なるものの、より持続可能な未来を築くという目標を共有していると強調した。また、売り手、買い手、社会の三者に利益をもたらす「三方よし」の理念に触れ、今回の連携は企業や顧客だけでなく、社会全体に価値を生み出す可能性を持つと指摘。各社が知識と経験を共有すれば単独では成し得ない大きな成果につながるとして、ERI Indiaの今後の発展と成功に期待を寄せ、発表を締め括った。

日本とインドは、安倍晋三元首相が2016年に提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、戦略的な協力関係を築いてきた。今後は高市氏のリーダーシップの下、経済安全保障をはじめ、重要鉱物の安定確保や再生資源の有効活用、資源循環を支える産業基盤の整備など、幅広い分野で連携が一段と深まることが期待されており、開会セッションでは度々このことについて触れられた。
今後、日印間の資源協定がどのように具体化され、両国のリサイクル産業や資源循環の発展につながっていくのか、記者として継続的に追いかけていきたい。

(IRuniverse Midori Fushimi)