スペイン・マラガで開催されたBIR国際リサイクル会議2026の2日目となる10月27日、国際貿易協議会(ITC)が、輸出規制がスクラップの国際取引をどう変えつつあるかをテーマにセッションを行った。進行はITC委員長のEmmanuel Katrakis氏(Galloo Group、仏・ベルギー)。欧州、インド、米国、中南米から4人の業界関係者が登壇した。焦点は改正EU廃棄物輸送規則(WSR)で、非OECD諸国の輸出先リスト案にはインドなど主要な買い手が含まれていない((詳細は関連記事)。登壇者は、輸出規制はリサイクルそのものを弱めると主張し、アルゼンチンの16年に及ぶ輸出規制を教訓として挙げた。
EU:「ループは檻ではない」
Belgian Scrap Terminal(BST)のCEOでベルギー連盟Denuoの会長を務めるCaroline Craenhals氏は、欧州は国境を閉ざすことで循環の輪を閉じようとしているが、「ループは檻ではない」と述べた。BSTは年間100万トン超の金属を回収している。同氏は輸出先リスト以外の実務上の課題も挙げた。デジタル輸送システムDIWASSには技術的な不具合が残り、Recycling Europeは延期を求めている。附属書VII(Annex VII)の輸送を出発の2日前までに登録する要件が、日常業務にそぐわないためだ。
同氏はトレーサビリティと責任ある取引を支持する一方、廃棄物の不法投棄と高品質な再生原料の正当な取引は明確に区別すべきだと述べた。主要な販路が閉ざされれば、欧州域内の産業では吸収しきれない余剰が生じ、価格が下がって回収の魅力が薄れ、投資に必要な利益も確保しにくくなる。欧州外の炉が原料を得られなければバージン材の使用が増え、排出が移るだけだとも指摘し、「需要をつくり、価値をつくれ」と訴えた。
インド:「破られた約束」
Metco Venturesのパートナーで、BIR会計担当(Treasurer)を務めるDhawal Shah氏は、欧州と30年取引してきた事業者の立場で発言した。EUの関心は「環境から経済へ」移ったと述べた。インドは2024年、2025年、2026年4月とEUの質問に回答してきた。輸入スクラップに含まれるごみの割合や埋立地の規模を問う質問もあったという。それでもインドは十分な安全策を示していないと判断され、EU周辺の小国が案に挙げられた。
インドは鉄・非鉄スクラップを年間約1,200万〜1,250万トン扱い、その約18%を欧州に依存している。同氏によると、世界GDPの25%を占めるインドEU自由貿易協定(FTA)は12月に署名予定だ。交渉中は貿易に影響する法律を変えないと合意していたのに、WSRはその約束を破るものだと主張した。FTA発効後はアルミや銅の中間製品がインドに流入できるとし、「なぜスクラップは駄目なのか」と問いかけた。

「ムチよりアメを」:問題は競争力
Katrakis氏は、過去2年間、輸出関税、そして今は輸出禁止を求めるロビー活動が強まっており、同様の動きは北米や南米にも見られると述べた。欧州で再生された金属スクラップの80%超は域内にとどまっており、禁止では本当の問題は解決しない。問題は、エネルギー集約型産業の減産を招いた電力価格と、1〜2%にとどまるEUの成長率だという。成長しない経済では、ある産業から別の産業へ競争上の優位を移すのは難しいと指摘した。
代わりに、税制、再生材含有、グリーン公共調達といった需要側の施策を求めた。廃棄物の終了(End-of-Waste)は適用範囲が限られ、加盟国で運用も異なるため、万能の解決策ではないとも述べた。「ムチを減らし、アメを増やす必要がある」とし、輸出規制は状況を悪化させるだけだと警告した。
米国:「2027年5月への備えはあるか」
Gershow Recyclingの社長Kevin Gershowitz氏は、ロングアイランドの拠点周辺には国内の消費者がおらず、鉄スクラップの域外輸送に1トン当たり65ドル超かかると説明した。同社は貨車250両を置ける鉄道ターミナルと、1日1,000トン超のコンテナ積み込み能力に投資し、市場に応じて国内の鉄鋼メーカーと輸出を切り替えている。聴衆には「2027年5月に備えているか」と問いかけ、勝者と敗者が出ると述べた。WSRへの結論は「EUにいなくてよかった」と語り、会場の笑いを誘った。
米国でも輸出規制が模倣されるリスクは認めたが、米国リサイクル材協会(ReMA)は議会との関係が強く、反論できると自信を見せた。輸出規制は自国を傷つけ、輸入規制は相手を傷つけるというのが同氏の見方だ。

アルゼンチン:180日の措置が16年続いた
Glorem(メキシコ・ティファナ)のCEOで、BIRラテンアメリカ委員会委員長のAlejandro Jaramillo氏は、アルゼンチンの事例を「事実として」紹介した。2009年、国内産業の原料確保を目的に鉄スクラップの輸出を180日間停止した。延長と非鉄への拡大を経て、規制は2025年1月まで続いた。政府自身が、価格の歪み、リサイクル投資の低下、分別・回収の減少、解消されなかった供給不足を問題として挙げたという。
同氏は、金属、プラスチック、紙は回収ルートやヤードを共有することが多く、一つの素材への規制が回収網全体を弱めると述べた。欧州や米国の規制を参考にしがちな中南米諸国がWSRを前例として同様の措置に動き、報復を招く恐れもあると警告した。仕向け先の重要性も示した。ティファナからの運賃は、メキシコの工業地帯向けが1トン約200ドル、米国中西部向けが約300ドルなのに対し、韓国などアジア向けは20ドル未満だという。
展望
パネルに共通した懸念は、需要をつくらずに貿易を制限すれば、守ろうとするバリューチェーンそのものが弱まるという点だった。EUのリストは案の段階にあり、BIRとRecycling Europeは延期を求めている。日本はOECD加盟国であり、非OECD向けの規制の直接の対象ではない。ただ、EUがインドなどアジアの仕向け先をどう扱うかによって、域内のスクラップの流れが変わる可能性があり、今後の動向を注視する必要がある。
【アーカイブ】BIR 2026 世界リサイクル会議&展示会 in マラガ
出所:BIR世界リサイクル大会(マラガ)、国際貿易協議会(ITC)セッション、2026年10月27日