ミネラルサンド市場近況2020#9 チタン精鉱上昇、鉄鋼用スポンジチタン底打ち、FeTi下落
7月20日~24日の中国国内のチタン製品の市場も大きな変化は見られなかった。国内チタン精鉱のみ上方修正の兆しを見せており、他はほとんどの注文が事前に売り出されているため、新規受注は少なく安定的な稼働にとどまる。
チタン精鉱
足元、広州地域のチタン精鉱の引き合いは比較的安定しているが、実際の取引は多くなく、取引は行き詰まり。主な理由は、チタン鉱石の価格急上昇し、買い手と売り手が慎重になってきているため。実際、川下の二酸化チタン市場は回復してきたが、全体では約500元/トンしか引き上げられず、原材料費の上昇はずっと500元/トンを超えている。したがって、広州のチタン精鉱の価格の上昇は、依然として川下の動向によって左右される。市場見通しにおける原鉱の供給の増加と、二酸化チタン市場の動向を注視する必要があるようだ。
7月下旬になっても新型コロナウィルスの世界的な感染拡大は依然として非常に深刻であり、ほとんどの国の経済を直撃している。多くのベトナムのイルメナイト鉱山の所有者は生き残りをかけて積極的に輸出割当を申請している。ベトナムでのイルメナイトの輸出割当量は一律に発行されていない。
現在、ベトナムでの輸出割当量の発行についてはさまざまな憶測を呼んでいるが、割当発行時期については決まっていない。以下のように予想している情報筋もある。
1.ベトナムの鉱山所有者は、引き続きイルメナイトの輸出割当量の申請中で、仮に許可されても、年末まで政府からの輸出割当は得られない。一部の企業は、10月以降ならば割当の申請可能。
2.申請については首相の署名を待ちで結果が明らかになるのは来月。
チタン鉱石相場の推移(イルメナイトTIO2/50% Fe2O3 14% USD/ton)3か月
二酸化チタン
国内のほとんどの二酸化チタン生産者は受注を積極的に処理している。過去に価格が上昇したことから、今月のほとんどの注文は事前に売り出されており、現時点では、市場での新規注文は比較的少ない。現在、ほとんどの二酸化チタン生産者の見積もりは統合されており、実際の出荷価格も堅調。新しい注文価格については事前に調整する必要があり、最初に安価で購入し続けることは困難。
市場価格は改善したが、事前に消費を先食いする傾向から、市場での需要は少なくなっている。同時に、チタン精鉱の価格が上昇しているため、企業のコスト負担は増している。したがって、現時点では国内の二酸化チタン生産者への稼働に対する圧力は依然大きい。
酸化チタン相場の推移(ルチルTIO2/93% FOBChina USD/ton)3か月
チタンスラグ
今月はほとんどのチタンスラグ工場では積極的に受注を処理しており、基本的に新規受注はないため、価格性能は安定している。CITICチタンの高チタンスラグの新規入札が来週始まるとみられるが、今回の入札には悲観的。
チタンスポンジ
足元の国内のチタンスポンジ市場は安定推移。最近では、国内のスポンジチタン市場全体の取引が増加し、企業の在庫積み増しのプレッシャーは緩和されている。チタンスポンジ市場での取引が改善した主な理由は次のとおり。
1.川下の工場の初期在庫のほとんどが消化され、需要が促された。
2.価格はコストラインにあり、最安値価格での在庫を保有しているところもある。
3.雲南省は、1,500トンのチタンおよびチタン合金インゴットを購入・保管している。
4.一部のチタンスポンジ企業の在庫は市場に出ていないので、取引の短期的な改善したからといって、川下市場の需要が回復していることにはならない。ゆえに、安易に増産に動くのはチタンスポンジ市場にとってはリスク。
ルチル:
国内ルチル市場は安定しており、現物供給は十分。したがって、川下の企業は購入価格を抑えており、取引は行き詰まり。
四塩化チタン:
国内の四塩化チタン市場は引き続き安定操業を継続。塩素ガスの原料の価格は高止まりしているが、メーカーは主になじみ顧客との長期的な関係を維持しており、川下の状況は依然として低迷している。したがって、四塩化チタンの市場価格は依然として安定。
還元型イルメナイト:
全国各地で夏期に入り、溶接材料市場もオフシーズンに入った。同時に、南部の洪水はいくつかの工場の生産にも一定の影響を及ぼし、国内の溶接電極市場も低迷している。現時点では、国内の還元チタン工場は基本的に昔からのなじみ顧客との長期的な安定した協力関係を維持しており、実質価格には大きな変化は見られない。また、最近では還元チタンに適したチタン精鉱の価格も安定しており、ハイグレードのチタン精鉱の価格も少し上昇している。そのため、還元チタンの価格が下がっても、大幅な価格調整は難しい。
フェロチタニウム:
足元、国内のフェロチタン工場のほとんどが今月の注文を積極的に処理しており、市場には新規注文はない。一方で南部の洪水は深刻で、製鉄所全体の購買需要は今月も低いまま。原材料は徐々に安定しているものの、需要低迷の状況下ではフェロチタン企業間の競争が激しく、特に一部のトレーダーが依然として輸入されたフェロチタンを大量に保有している場合には尚更。
その結果、国産高品質のフェロチタンの相場は最近再び下落している。さらに、最近の国産アルミニウム粉末と高品質のチタン精鉱の価格は、依然として若干の上方修正の兆しを見せている。したがって、ローグレイドのフェロチタンの価格が大幅に上昇しても、かつての低価格から小幅高程度。
フェロチタン国際相場の推移(USD/kg EU)3か月
(IRUNIVERSE Shiba)
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