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世界の3Dプリンターメーカー・ストラタシス(アメリカ)1

2020.09.25 10:11

・スコット・クランプという人物

 ストラタシス(Stratasys)は、1989年にスコット・クランプと妻のリサ・クランプが共同で設立した3Dプリンターメーカーだ。いわゆるFDM方式(熱溶融積層法)の3Dプリンターを世界で初めて世に出した会社である。別の記事にも書いたが、クランプがFDM方式の3Dプリンターのアイデアを思い付いた逸話が面白いので、重複を恐れずに改めて記述する。

 

 ミネソタ州エデン・プレーリーに住んでいたクランプは、ある日娘のためにグルーガン(造形材を入れた押出ポンプのようなもの。クランプはポリエチレンにロウソクの蝋を混ぜたものを使っていた)で玩具のカエルを作っていた際、造形材を押出して出来た積層の上にさらに造形材を押出すと積層の上に積層が重なり、立体的な物体が作れることに気づいた。さらに、積層を重ねる作業そのものを自動化できれば、自分でグルーガンを使用する必要もなくなり、完全自動でモノづくりができるようになる。

 

 ティーンエイジャーの頃から故障した中古車を買い取り、修理して販売するビジネスを立ち上げていたほど起業家精神に富むクランプは、またもや起業家精神を発揮し、1万ドルで購入したデジタルプロッターとグルーガンを組み合わせる作業に没頭した。なお、デジタルプロッターの操作には当時最新のシリコングラフィックスのCGワークステーションが使われた。

 

 

・ストラタシス法人設立

 デジタルプロッターを使った夢の積層造形機の開発を行う傍ら、クランプはそのアイデアにFused Deposition Modeling Technologyと名付けて特許出願し、1989年に特許取得した。一方、積層造形機の製造を週末ビジネスとして行っていたクランプに対し、妻のリサは、積層造形機の製造にすべてを捧げるか、あるいは諦めるかと迫った。いわばクランプの覚悟を問うたのだが、決意を固めたクランプは法人を設立し、事業として行うことを決断した。夫妻はただちにデラウェア州にストラタシス株式会社を法人登記し、法人として正式に発足させた。

 

 その後、積層造形機の開発に成功し、「3Dモデラー」と名付けて販売を開始するのだが、このくだりは別記事「3Dプリンターの歴史1」に書いたのでそちらを参照していただきたい。

 

 なお、ストラタシス設立から最初の「3Dモデラー」の販売までに3年の時間と多額の開発資金を要したが、クランプは私財を売却して26万4千ドルを、ストラタシスの株式35%をベンチャーキャピタルに売却して120万ドルを、それぞれ調達している。

 

 ストラタシスはその後、1994年10月にNASDAQ市場に上場し、IPOを果たしている。会社設立からわずか6年のスピードIPOで、上場時の時価総額は570万ドルだった。このIPOにより、クランプは創業時につぎ込んだ資金を一気に回収した。

 

 

・ストラタシスによるM&Aの始まり

 なお、ストラタシスと言えば、伝統的に派手なM&Aを数多く展開してきた会社として知られている。その派手なM&Aの第一号は、1995年のストラタシスによるIBMのラピッドプロトタイピングに関する一連の知的財産の買収だろう。ストラタシスの積層造形機と似たような「ラピッドプロトタイパー」を開発していたIBMとは、ストラタシスの特許を巡って法廷闘争を展開していた。やがて両社は和解し、ストラタシスがIBMの「ラピッドプロトタイパー」本体、関連する一連の知的財産、16名のエンジニア、関連するすべての資料を買収することで合意した。

 

 この買収により、ストラタシスの3DプリンターがIBMのラピッドプロトタイパーで使われている一連の技術を使うことが可能になった。IBMが保有するストラタシスの類似特許を巡るトラブルを回避し、ストラタシスの3Dプリンターにいくつものイノベーションを起こさせる転換点となった。なお、ストラタシスは買収に際し、50万ドルの現金と50万株の株式をIBMに支払っている。

 

 

・スタートアップ企業による大企業のテクノロジー奪取

 ところで、スタートアップ企業が大企業で開発されたテクノロジーやイノベーションを買収などで奪取し、その後の成長の原動力にするケースはアメリカでは散見される。筆者のお気に入りの事例は、なんといっても1988年に起きたマイクロソフトによるDECの社内プロジェクトチーム引き抜き事件だ。

 

 当時の大手コンピューターメーカーのDECで進められていたRISCマシン用OS開発プロジェクトが社内の事情で中止となり、チームを率いていた伝説のプログラマー、デービッド・カトラーが社内で干されているという噂が業界全体に広がっていた。噂を聞いたビル・ゲイツはただちに行動を起こし、カトラーに多額のストックオプションを支払い、マイクロソフトへの移籍を実現させた。マイクロソフトへ移ったカトラーとそのチームはマイクロソフト社内で新たなプロジェクトを立上げ、やがてWindows NTという画期的なOSを生み出すにいたる。そしてWindows NTはマイクロソフトの主力製品のひとつとなり、同社に莫大なリターンを生み出すもとになった。なお、カトラーはその後、マイクロソフトのクラウドコンピューティングプラットフォームWindows Azureの開発などにも参加している。

(続く)

 

 

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前田健二 (Kenji Maeda)

 経営コンサルタント・ビジネスライター。大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスでビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わる。アメリカのニュービジネス事情に詳しく、3Dプリンター、ロボット、ドローン、ITにおけるニュービジネスを研究、現地のネットワークから情報収集している。

 趣味は料理。好きなお酒はビールとウィスキー。

*3Dプリンターに関するアドバイスのご用命は→ info@iruniverse.co.jp(窓口:川合)

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