Sachi宝水の知らない世界#5 兄弟船で荒波乗り切る大阪金属
しとしと降る秋雨の中、特金スクラップ専業の大阪金属株式会社(大阪市中央区 代表取締役:小川軍治)を訪ねた。大阪金属は、国内はもとより海外との取引も行い、かつては日新製鋼の、現在は日鉄ステンレスの直納問屋も務めている。
これまで訪ねたところでもたびたび耳にしたが、やはり中華系スクラップディーラーが増えていることが話題になった。
「日本のことは、優良な都市鉱山だと考えているのだろう」
規制の厳しい中国や、韓国による日本製ステンレス鋼板へのアンチ・ダンピングなどを鑑みても「日本はやりやすい国」なのだろうということだった。
また、これまで海外の製品(ステンレス鋼材)は(品質的に)使いにくいものが多かったが、ノウハウを蓄積されてきたことで安価かつ品質の良いものが提供されるようになってきたという。つまりステンレス鋼の輸入材は形を変え手を変え、かなり日本市場に浸潤していると小川社長および軍治会長は話す。小川軍治会長はこの世界が長いだけに、ステンレスおよびステンレス原料業界の先行きに憂いを浮かべる。
金属資源以外の世界でも同じことだと思うが、安く手に入る海外製品を選ぶことで確かにコストは下がるだろう。しかし、それによって何が起こるのかを想像しなければならない。
輸送などに伴うCO2排出量などの環境負荷はもちろん、産業の趨勢は雇用の問題につながっているという感覚が必要だ。
例えば家具ひとつでも、消費者にとってはお求めやすいN社のキッチン、家具類はほぼ中国製。100円ショップ(あるいは300円ショップ)の台所製品類も中国製。。
国内産業を保護しなければ雇用も守れず街は衰退していく。かつての炭鉱の町がそうだったように。。。
ヒントはヨーロッパにあるのでは?という話になる。
アンチ・ダンピングによって特殊鋼ステンレスを「自給自足」することで、産業、ひいては雇用を守っているのだという。
日本のものを日本で使う。
日本の中で資源の再利用、循環利用を行う。
「安ければいい」ではなく、ずっと先の未来への影響を考えるべきだ。
そのために必要なのは「経営者感覚」ともいうべきものだろう。経営者視点で見れば、会社は自分の代で終わるものではない。
会社が続いていくためには、社会が続いていなければならない。
その社会をより良いものにしていく選択をし続けることなのだ。
「安いからと選ぶのは、先がない」
レアメタルスクラップ業界のパイオニア、小川金治郎氏が立ち上げた富士商を経て、大阪金属を立ち上げ28年。日新製鋼、日鉄ステンレス直納問屋としての信用を守り通してきた大阪金属。小川軍治社長がご子息である専務取締役の明宏氏の隣で話す言葉には、ずしりとした重みがあった。
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(筆者プロフィール)
宝水幸代(ほうすいさちよ)
2014年、ある日突然思い立って専業主婦からフリーライターの世界へ。
医療、ビジネスから美容、音楽まで幅広いジャンルでの執筆を行う。
イベントMCやピアノ弾き語りなどでも活動中。
趣味は創作コスプレ。
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