日本からの4Nシリコンの輸出は、今年、2018年以来の多い輸出量となっている。特に中国向けの輸出量が急増しており、日本に次ぐ半導体向けシリコンウェハの生産量を誇る台湾向けの輸出量に急速に迫っている。
【1】4Nシリコン輸出概況
財務省の貿易統計によると、2021年7月の日本からの4N以上のシリコン(以下、4Nシリコン)輸出量は、前月比26.6%減少の958トンだった。昨年8月以来、11か月ぶりに1千トンを下回った。
それでも前年同月比33.2%増加し、今年4月以降4ヶ月続けてのプラスとなった。
7月の同輸出平均単価は、キロあたり4,133円、前月より789円高だった。昨年末は3千円を下回っていたが、今年に入って上昇基調に転じている。ただ、ここでの単価は、輸出されるシリコンの純度によっても大きく変わるため、シリコンの相場との相関性に乏しく、あまり参考にならない。
2021年1-7月の同累計輸出量は8,078トン、前年比38.3%増加した。この時期に8千トンを超えるのは、2018年以来のことである。ただ、最も輸出量が多かった2017年の同累計1万トンには、まだ遠く及ばない。
【2】4Nシリコン輸出先
日本からの4Nシリコンの最大輸出先は、台湾向けである。ただ、昨年以降、中国向けの輸出量が急増している。
今年1-7月の累計輸出利用で見ると、台湾向けが43%、中国向けが35%と8ポイント差がある。しかし、昨年年間輸出量で見ると、それぞれ51%と29%と21ポイント差があった。その前までは、40から50ポイント差があったから、如何に日本から中国向けの高純度シリコン輸出が躍進しているのかがわかる。
台湾は、信越化学に次ぐ世界二位のシリコンウェハメーカのグローバルウェハーズがある。そのため、半導体向けのシリコンウェハ生産量も日本に次ぐ量であり、毎年、日本から台湾向けのシリコン輸出が最大なのはわかる。しかし、中国も半導体向けのシリコンウェハの内製化を進めている。それが昨年のトランプ前大統領による中国先端技術への脅しと、現在もバイデン大統領による圧力により、内製化が加速しているものと思われる。
トランプ脅しによる中国制裁が本格的に開始した昨年9月を境に今年の直近まで、毎月の台湾と中国向けの輸出量に差がなくなっている。月によっては、中国向けの輸出量の方が多いこともある。ただ、今年7月は中国向けの輸出量が減った。
7月の主要な4Nシリコン輸出先と輸出量とキロあたりの輸出平均単価と前月との単価差は、以下の通りである。
韓国 130トン 5,108円(131円安)
中国 206トン 2,820円(534円高)
台湾 483トン 3,166円(397円高)
ベトナム 23トン 772円(156円高)
マレーシア 21トン1万7,144円(4,924円高)
英国 14トン1万8,376円(317円高)
ドイツ 22トン 3,226円(21円高)
米国 30トン 6,346円(9,133円安)
(K.AKIYAMA)