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自然エネルギー財団メディアセミナー 1 鉄鋼業界はシステムを変えられるか?

鉄鋼業界はシステムを変えられるか 自然エネルギー財団メディアセミナー 西田氏

 2021年12月14日、東京都港区虎ノ門の東京虎ノ門グローバルスクエアコンファレンスにて公益財団法人 自然エネルギー財団主催のメディアセミナー「鉄鋼業の脱炭素化に向けて:欧州の最新動向に学ぶ」が開催された。

 

 これは欧州圏の鉄鋼業の状況を分析する事で、今後の脱炭素化と鉄鋼業界がどの様に向き合っていくかという方針を探っていくものである。

 

 今回の記事では最初の登壇者である西田氏の発表を元に、鉄鋼業界が現在検討している技術の状況を見ていく事とする。

 

 

脱炭素化に向けての製鉄アプローチ 西田 裕子氏

 最初に登壇し発表されたのは自然エネルギー財団 シニアマネージャーの西田 裕子氏だ。

 

 発表のタイトルはセミナーと同じ「鉄鋼業の脱炭素化に向けて 欧州の最新動向に学ぶ」である。

 

 現在日本において最も二酸化炭素排出量が多いカテゴリは産業部門であり、その中でも鉄鋼業は産業全体の40%を占める1億5千5百万トンという年間排出量を持つ。

 

 鉄鋼業はCO2排出量が多いこともさることながら、技術的に石炭を使用する機会が非常に多い。このため二酸化炭素排出量の削減には抜本的に製造手法を見直していく必要が出てくる。

 

 

図

 

 

 そんな中、粗鋼生産量の多いEUでは段々と鉄鋼業の脱炭素化に向けて歩んでおり、再生可能エネルギーの使用量を増やしていく他2018年と早い段階から2050年にGHG排出量のネットゼロを目標とした手法を概説している。

 

 EUでは現在再生可能エネルギー由来の電力がEUでの全電力の38%を占めており、導入の拡大が検討されている。

 

 またEU-ETS(EU域内での排出量取引制度)を鉄鋼業にも適用し、グリーン水素の導入も積極的に進めている。

 

 そして欧州委員会は「競争力のあるグリーンな鉄鋼」を目指す為に高炉の運転寿命も鑑みた改修投資を含める積極的な戦略を発表。

 

 この発表により、リサイクル鉄を利用する電炉のみならず水素を使う直接還元炉と電炉を組み合わせる手法(H2DR-EAF)の開発が2025年商用規模のプロジェクト稼働に向け進んでいっている。

 

 

図

 

 

 他にもEU域内の制作は財政的インセンティブによりメーカーを下支えしているが、それと同時に規制的制度を積極的に敷く事で脱炭素化に向けての手綱を握っている状態である。

 

 こうした中で鉄鋼部門の脱炭素化技術として持ち上がってきたのが、「リサイクル鉄を利用する電炉法(EAF)」「(水素)直接還元-電炉法(H2DR-EAF)」「高炉-転炉法とCO2回収・利用・貯留の組み合わせ(BF-BOF+CCUS)」という三種類の手法である。

 

 

固まる脱炭素化の手法

 では次にそれぞれの手法について、今までとこれからを取り上げて行くこととする。

 

 電炉法については現在も用いられている方法であり、鉄スクラップを利用し電気アーク炉を用いる事で粗鋼を得る方法である。

 

 これに関しては用いる電力を再生可能エネルギー由来の物にする事で、CO2排出ゼロを達成する事が可能である。

 

 しかし鉄スクラップの品質や量の考慮をはじめ、低コストで供給される再生可能エネルギー由来の電力の存在が欠かせないものとなっている所は見逃せない。

 

 水素直接還元-電炉法については、鉄鉱石の還元を行う際に天然ガスを利用していた部分を水素に置き換えるという物である。

 

 これは水素と電力において、いずれも再生可能エネルギー由来である場合は脱炭素化が可能とされている。

 

 こちらはこちらで商用規模に至っておらず、また現在の粗鋼生産技術である高炉-転炉法と比べコストも高く、グリーン水素流通のインフラの整備も必要となってくる。

 

 高炉-転炉+CCUS法については現状新規のプロジェクトとしては採択が行われていないという状況だ。

 

 これは高炉-転炉法自体のCO2排出抑制技術と排出したCO2を回収・使用・抑留するCCUS技術が必要となってくる。

 

 しかし現状どちらの技術も未成熟であり、大気中からのCO2直接回収技術(DAC)の研究も不可欠となる為見通しが立っていないのが現状だ。

 

 

図

 

 

 現状では企業が選択するのは電炉法、もしくは水素直接還元-電炉法となってくる。

 

 後者の場合は水素を導入する前に天然ガスを継続利用出来る為、早急な改修が必要とされる事も無いのは大きなメリットである。

 

 現状はまだまだコスト面で高く付く水素直接還元-電炉法も2050年を目安に低価格化が行えるとの試算だ。

 

 今後改修が必要となる高炉が出てくる際に、日本の製鉄業界が果たしてどの様に舵を切る事になるのかが注目される。

 

 

(IRUNIVERSE ICHIMURA)

 

 

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