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ローツェ(6323) ウエハ異物検査装置メーカー買収記事メモ

23/2期44%増収72.9%経常増益予想に増額、24/2期イアス社連結で収益上伸期待

株価7680円(1/10) 時価総額1353億円    発行済株17640千株

PER(DO予:5.8X)PBR(2.2X) 配当(23/2ARJ予)120円  配当利回り:1.7%

 

要約

・ウエア微少金属不純物検査装置メーカーイアス社をM&A、24/2期収益に寄与期待

・23/2期半導体製造関連能増で44.0%増収46.9%営利増、72.9%経常増予想も増額含み

・24/2期は豊富な受注残、新規連結も加わり売上高1000億円視野に連続最高益更新期待

 

 

ウエハ微少金属不純物検査装置メーカーイアス社をM&A、24/2期収益に寄与期待

 

 1/6にシリコンウエハ表層部の微少金属不純物検出装置を手掛ける株式会社イアスを完全子会社化する事を発表、3/2に株式交換効力が発生する。業績面では23/3期への寄与はほとんど無く、24/2期より連結子会社とすることで本格寄与が見込まれる。

 

 イアス社の創業は2004年12月、横河アナリティカルシステムズ(現アジレントテクノロジー)でICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)のアプリケーションおよび技術開発を行っていた川端克彦氏がパーキンエルマー社を経て創業した会社。ICP-MSは誘導結合プラズマ(ICP)をイオン源に用い、液体試料を霧状にして導入させ、イオン化した試料中の元素を質量分析計(MS)で分離、検出する元素分析の手法。大手としてアジレントテクノロジー、パーキンエルマーが様々な分野に納入、特にアジレントテクノロジーが世界シェアで最も高いとみられる。半導体分野においてウエハの金属汚染管理は非常に重要な項目で、従来は全反射蛍光X線法(TRXF)が非破壊分析法である特性から製造ラインで利用されてきた。しかし集積度の高まりで管理濃度が低くなり検出限界を超え、その後は前処理濃縮法として気相分解法(VPD)で金属元素を回収し、ICP-MSで分析する手法で2ケタ以上精緻な分析が可能となり、先端半導体ウエハ管理では必要不可欠な手法となっている。イアス社は設立当初はICP分析装置の消耗品を販売していたが、分野をVPS(シリコンウエハ表面上の自然酸化膜や熱酸化膜をフッ化水素酸の蒸気で溶解させた後に特殊な溶液でシリコンウエハ表面上を走査し、金属元素を回収する)に絞り、VPSとICP-MSをオンライン化することで全自動化を進めることで急成長、ニッチ市場でもあり大手の参入がなく、極微量分析ノウハウ、サポート体制で差別化して成長を続けている。イアス社の主力製品である全自動VPD装置「ExpertTM」は10年以上に渡り販売を続けているPSシリーズ、OHT(半導体工場搬送システム)と組み合わせた全自動装置FAB、多品種少量用LABなどがシリーズ化されている。

 

 

 ウエハ上の金属汚染は歩留まり低下に大きく影響するため、上記の様な検査手法で進化してきたが、現在、先端デバイスではVPD-ICP-MSの検出下限以下でもウエハ上の金属汚染がデバイスに影響が出ることが判明、新たな超高感度分析技術が求められている。これに対し、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズと共同で、極微量分析技術の開発も進めている。具体的にはVPDでのウエハ上のメタル回収液量を1/5に少量化し、回収溶液中のメタル濃度を5倍に高め、さらにICP-MSへの導入効率を上げるためにイアスの脱溶媒高感度化試料導入装置(DHS)で溶媒と金属汚染成分のみを微粒子化することで、検出可能値を1/100まで下げることに成功した。今後、先端半導体分野で実用化が進めば、更なる事業拡大が期待される。なお非シリコン分野ではSiC、GaN等でシリコンと比較し表面不純物分析の定量下限値が低く、高精度を要求されることなども追い風となる。

 

 またイアス社製品と同社のクリーン搬送システムを組み合わせることでシナジー効果が得られることや、同社の世界的な販路を使ったイアス製品の拡販も可能となるなど、イアス社のM&Aは同社の今後の収益拡大にかなり寄与が見込める。

 

23/2期半導体製造関連能増で44.0%増収46.9%営利増、72.9%経常増予想も増額含み

 

 23/2期業績予想は、Q2に経常利益で大幅増額となった事で、売上高964.66億円(期初計画比77.3億円増額、44.0%増)、営業利益232.25億円(同15.07億円減額、46.9%増)、経常利益308.05億円(同60.49億円増額、72.9%増)、税引利益227.93億円(同46.27億円増額、77.7%増)に増額修正している。

 

 主力品目別売上で半導体関連装置は843億円(期初計画比68.76億円増額、46.2%増)、FPD関連装置57.99億円(同8.59億円減額、56.8%増)、ライフサイエンス11.23億円(同0.23億円減額、49.3%増)などを見込む。利益面では設備投資増28億円増の54.5億円を見込むも償却負担は17.74億円(15%増)に止まるが、人員大幅増を見込み、特にベトナムは10月にA10新工場が操業を始め、期末時点で4000人を超える見通し(前期比1150名増)、また中国子会社も10月にレンタル新工場が稼働し期末には100人規模となる見通しなど、労務費や人件費増が見込まれる。これに資材高などが影響し原価高が見込まれ、営業利益段階では期初計画に対し減額するとした。一方で、為替前提の変更に伴い営業外で為替差益が大幅増となり、経常利益は大幅増額となる。

 

 現状、10月から新工場の稼働が始まり、能力増強効果も現れ、部材不足も一部アナログ半導体の調達に課題はあるが、コネクタなど、その他の部材は改善が進んでいる。また九州工場(熊本県合志市)の改修工事が年末に完了、クリーンルーム面積を倍増(1070㎡から2200㎡)しTSMCなどの設備増強に対応している。なお1/11に23/2Q3決算発表が行われる予定となっているが、進捗率が高まっても再増額はないと見られる。

 

 23/2期では、売上面で会社修正計画を上回る売上が見込まれ、利益面では人員増によるコスト増の反面、習熟度の向上などで生産性の改善が進むとみられ、売上増額に見合う営業利益増額が期待される。なお期末にかけて為替の円安修正があり、144円前提から円高に振れており、営業外での為替差益は縮小が見込まれる。

 

24/2期は豊富な受注残、新規連結も加わり売上高1000億円視野に連続最高益更新期待

 

 同社の半導体関連装置の主力ユーザーは製造装置メーカーではAMAT、半導体メーカーではTSMC、マイクロン、FPDでサムソンなど。加えて最近は中国ローカル向けの半導体製造装置向けに大幅拡大している。現状、先端ロジックデバイス向け設備投資は高水準の投資が継続される見通しで、メモリ投資の後ずれ影響は軽微とみられる。また中国向けは米中摩擦で前工程装置の輸出制約下でも、中国ローカル製造装置メーカー向け需要が旺盛で、搬送関連製品は規制による制約を受けにくいと見られる。同社は老舗の中国半導体製造装置メーカーAMEC(中微公司)と古くから取引があり、今後も売上拡大が続くとしている。また代理店ではなく直接サポートなども評価を得ており、中国向け拡大は続くと判断している。なお最近は異種デバイスの積層化や3DNAND以外で2.5D構造など先端デバイスの多様化が進んでおり、先端デバイス向けに新規需要拡大も見込める。FPD分野では韓国サムソ電子のQD-OLED投資など24/2期には遅延している案件の具体化も見込まれ、24/2期は改めてFPD向けの受注回復も期待される。

 

 全体として24/2期はベトナムA10新工場の本格稼働(生産能力で現工場の2倍)、中国レンタル工場でのEFEM(ウエハ搬送システム)組立の本格寄与により半導体関連の受注残高の消化が進むことで増収増益維持が期待される。これに今回のイアス社の連結化も加わり、半導体設備投資の減退見通しの中で最高益更新が続こう。

 

 

 

(H.Mirai)

 

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