接着界面の理解と制御によるグリーンモビリティの生産能力の向上(未来社会創造事業公開報告会)
「未来社会創造事業第1回公開成果報告会~グリーン・安全安心な社会に向けた新たな価値創造~」にて、「接着界面の理解と制御によるグリーンモビリティの生産能力の向上」の研究成果報告があった。クルマの製造時には接着力を発揮し、廃車時には剥離できる接着剤は期待される所であり、接着のメカニズムから理解される研究が期待されている。
・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 未来創造研究開発推進部主催の「未来社会創造事業第1回公開成果報告会~グリーン・安全安心な社会に向けた新たな価値創造~」が2月21日東京・ベルサール半蔵門で開催された。テーマ②として、「グリーンモビリティ社会の実現」について興味深い発表された。「接着界面の理解と制御によるグリーンモビリティの生産能力の向上」について九州大学/田中敬二主幹教授が下記の様に報告した。
・クルマの製造では、高強度に部材を組み上げ、廃車時は自在に剥離できる様になれば、軽量化による燃費向上や二酸化炭素の排出削減が図れる。また、軽量化やカーボンニュートラル(CN)の流れから、クルマに用いる素材も鉄、アルミ、プラスチック、木材、など多様化し、マルチマテリアル素材化すると同時に、異種材間接合の課題が生じ、接着技術は非常に期待される所である。加えて、サーキュラーエコノミー(CE)の観点では、廃車後の分別により資源を循環して使用できる上で、簡単に剥離できる接着技術も期待されている所である。接着と剥離を両立する上で、接着界面での信頼性の確保は生命線であり、その解析はとても重要である。
・元々は大規模プロジェクト型「Society5.0の実現がもたらす革新的接着技術の開発」界面マルチスケール4次元解析による革新的接着技術の構築のプロジェクトの流れである本研究プロジェクトは、「接着界面のマルチスケール解析による理解」と、「分子操作によるスマート接着」を融合させ、革新的接着技術を構築することである。本研究プロジェクトは、九州大学を中心とした「大学間連携」と、国内接着剤メーカー13社による「共同連携機関」と、そして接着ユーザーのOEMやTier1、2という「実装連携機関」を巻き込んだ体制である。
【研究開発の流れ】
1.接着界面のマルチスケール解析
2.分子接着技術の開発
Science ステージ:~2022年3月
Technology&Engineering ステージ:2022年4月~2027年3月
3.次世代接着社会実装戦略(2027年4月~)
・特許30件(国際出願9件)、論文149報、などアカデミア成果も豊富である。アカデミア成果を競争領域への展開事例として、合わせガラス用接着剤として日本ゼオン社のシクロオレフィン系接着剤を研究した事例や、CFRP成形時の離型剤や成形品の塗装前易接着処理を代替し、プロセス削減する日東電工社の表面改質シートを研究した事例など紹介された。
2022年9月には、「接着剤でクルマをつくる日」として日刊工業新聞に取り上げられ、CNとCEの両面に対応した接着剤が開発されるのが待ち遠しい限りだ。
IRuniverse T.K.A.
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