先駆的なバナジウム・レドックス電池を米国船級協会が新技術認定
米国船級協会(American Bureau of Shipping: ABS)は、海上で使用する画期的な不燃性バッテリー技術に対して新技術認定(NTQ)(注)した。背景としては海上輸送中のリチウムイオン電池やEV車両の発火による船舶火災が頻発していることが考えられる。
Blue Gと呼ばれるGennal Engineering PTE LTD社(シンガポール)の最新型バナジウムレドックスフロー電池システムは、水系電解液、貯蔵タンク、スタックセル、調整ポンプで構成されており、充電と放電の過程で余分な熱が発生しないことが特徴で、不燃性、非分解性、リサイクル容易性があると言われている。年内にプロトタイプ試験に移行する予定とのこと。
「バナジウムレドックス技術は、海上での電池の用途を大きく変える可能性を秘めている。長寿命、エネルギー容量の大幅な向上、不燃性製品としての安全性の向上という利点があり、海事産業におけるエネルギー転換を加速させ、世界の脱炭素目標を支える大きな可能性を持っている。」とは、ABS技術担当副社長のガレス・バートンのコメント。
Gennal Engineering社は、Blue Gの利点として、その拡張性や一般的なリチウムイオン電池の2倍もある25年以上の長寿命などを強調している。また、廃棄時にバナジウム電解質を容易に抽出し、リサイクルすることが可能な設計であることも強調している。
「Blue Gの認証取得においてABSと提携できたことを嬉しく思い、それは、船舶の脱炭素化に向けて加速する業界を支援するという、ABSのGennal Engineering社に対する信頼の表れです。」とGennal Engineering社のアレックス・ペック氏はコメント。
ABS公式サイトによると、2022年8月、ABSはBlue Gバッテリーを駆動システムとして搭載するオフショア補給船(OSV)をマレーシアで開発するプロジェクトを支援すると発表している。このパートナーシップには、マレーシアの造船・船舶修理会社3社、Grade One Marine Shipyard、Muhibbah Marine EngineeringとShin Yang Shipyardが参加。
(注)新技術認定 (New Technology Qualification: NTQ)は米国船級協会の新技術の認定・認証制度の一つで、それによって新技術の早期採用と実装に関するガイダンスを提供するもの、所謂お墨付けを与えるもの。
(IRuniverse H.Nagai)
世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。
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