待ったなし電池リサイクル 果物の皮利用、ブラックマス取引整備…進む取り組み
電気自動車(EV)などの普及に伴い中長期的なバッテリー需要の拡大が見込まれるなか、使用済み電池のリサイクルの研究も活発化している。電池材料として必要なレアメタルの資源に限りがあることを踏まえ、再生電池の量産化・具体化も待ったなしの状況だ。
■シンガポール「オレンジの皮でコバルト抽出」研究
非営利団体の世界経済フォーラム(WEF)は、5月2~3日にスイス・ジュネーブで開催予定の「グロース・サミット」で、果物の皮を使ったリチウムイオン電池再生法を紹介するもようだ。ネットサイトのリンクトインに、4月20日までに関係者からの投稿があった。
果物の皮を電池再生に結び付ける方法は、2020年に既にシンガポールの南洋理工大学(NTU)が研究結果を発表していた。オーブンで乾燥させて粉末化したオレンジの皮とクエン酸を混ぜ合わせたものを使用済みリチウム電池に使用し、約90%のコバルト、リチウム、ニッケル、マンガンを回収する。オレンジの皮に含まれるセルロースが過熱で糖に変容し、抽出工程に寄与するという。通常の回収方法である高温加熱処理では有毒ガスが発生するが、この方法なら無害で、食品ロスも同時に解消できるのが利点だ。再生した電池の性能も市販の電池と同等の充電容量が確認できたとしている。今回はこの技術の実用化に向けた取り組みが発表される見通しだ。
■S&P、ブラックマス価格の日次査定を開始
一方、米格付け大手のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)グローバル・インサイト・コモディティは4月18日、ホームページ上で、子会社のプラッツが活物質濃縮物(ブラックマス)の日次価格の査定を始めたと発表した。ブラックマス取引の現状を分析することで市場の透明度を高め、現在は明確な基準がないブラックマスの取引価格のベンチマークになることを目指す。
ブラックマスは熱処理した使用済み電池からアルミや鉄、銅を取り除いた残存で、ニッケルやリチウム、コバルトといったレアメタルが多く含まれる。ニッケルそのものは古くから取引され市場も確立されているが、ブラックマスについては言い値買い値の取引がいまだ主流なのが現状だ。S&Pは、バッテリーのサプライチェーン(供給網)上のブラックマスの重要性に着目したとしている。
(IRuniverse Kure)
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