2025年度第2/四半期鉄鋼需給説明会終了@日本鉄鋼連盟
一般社団法人日本鉄鋼連盟は、四半期に一度、足元の鉄鋼需給動向に関する説明会を開催している。
東京地区においては、2025年7月23日(水)14:30~ 鉄鋼会館701において、2025年度第2四半期鉄鋼需給説明会が開催された。
大阪は7月22日(火)10:30~、名古屋は7月25日(金)14:30~に開催され、すべての第2四半期鉄鋼需給説明会は終了した。
需給説明会の終了受けて、7月28日に説明会で配布された資料:鉄鋼需給四半期報が公開された。
下記よりご覧ください。
本記事では、鉄鋼会館で開催された説明会の概要を紹介する。
開催前の参考記事は下記よりご覧ください。
2025年度第2四半期鉄鋼需給説明会開催@日本鉄鋼連盟 | MIRU
東京地区では、「最近の鉄鋼需給動向」についての説明は、
小曾根(おぞね)潤氏[三井物産(株)鉄鋼製品本部本部長補佐](下写真右)が、
トピックス「2024年度の地域別・用途別鋼材需給動向」についての説明は、
日本鉄鋼連盟 業務部 国内調査グループの上向井グループリーダー(下写真 左)が説明された。
鉄鋼会館にて開催された需給説明会。開催の挨拶をされる、上向井グループリーダー(写真左)
「最近の鉄鋼需給動向」
1.概要
日銀短観(国内の需給判断DI/鉄鋼)では、需要不足との判断が続く。
鋼材需要は、需要産業活動が総じて低調であり減少基調。
多くの鉄鋼メーカーが需要見合いの生産に徹する状況が続き、粗鋼生産は前年割れで推移。
鉄鋼連盟が発表する統計値より、下図 図1に粗鋼、鋼材生産及び輸出入四半期推移を整理して示す。
粗鋼生産量、普通鋼材生産量(最終鋼材ベース)、特殊鋼鋼材(熱間圧延鋼材ベース)及び輸出量は減少基調。
一方、輸入量は、直近では増加傾向を示している。
図1 粗鋼、普通鋼鋼材、特殊鋼鋼材生産及び輸出入四半期推移
<普通鋼需給>:鉄鋼需要産業は、内外需ともに力強さを欠き、供給(生産・出荷)は弱含み。普通鋼在庫量は、漸減傾向。鉄鋼業在庫判断DI(日銀短観)でも、調整局面の継続が示されている。
<特殊鋼需給>:内外需ともに低調に推移。
内需:自動車部門では、認証問題の影響から生産体制は正常化したものの、需要自体は勢いを取り戻さず。
外需:産業機械は一部では在庫調整が進んでいるものの引き続き低調。日系メーカーの中国でのシャア低下、東南アジアでの需要減少が続く。
需要の弱さを受け、生産、出荷は低調に推移。
<鋼材輸入>:内需が減少を辿るなか、鋼材輸入は増加続き、輸入浸透率は上昇。
<鋼材輸出>:輸出環境が厳しさを増すなか、減少基調。
<粗鋼生産量>
鉄鋼連盟が発表した鉄鋼生産速報(2025年6月)によれば、
2025年6月の粗鋼生産(速報)は671.8万トンと5月実績比1.7 %減、前年同月(702万4,226トン)比4.4 %減と、前年同月比では3か月連続で減少の見通しとなり、2025年第1四半期[4~6月(速報)累計]では、2,015万トン、2024年4~6月(2,124万6,295トン)比では5 %減の見込みとなった。
需給説明会資料(出典 経産省 7月8日発表)によれば、2025年度第2四半期(2025年7-9月累計)の粗鋼生産量は、前年同期(2,059万トン)比では、2.3 %減の2,011万トンの見通しとした。
一方、2025年度第1四半期実績見込みを、粗鋼生産量2,019.5万トンとした。
2025年度第2四半期・経済産業省鋼材需要見通しは下記よりご確認ください。
2.普通鋼需要動向
鉄鋼連盟が発表した2025年7月の鉄鋼需給の動き(表6)を下記に示す。
建設業における鋼材受注は前年割れ、製造業においても総じて弱い。
上記(表6)によれば、
建設計の4月~5月迄の普通鋼材受注量は前年同期(144.0万トン)比5.5 %減の136.1 万トンとなった。
第1四半期換算では、204.2万トン。前年同期比では、4.1 %減の見込み。
製造業計の4月~5月迄の普通鋼材受注量は前年同期(232.0万トン)比2.5 %増の237.8 万トンとなった。
第1四半期換算では、356.7万トン。前年同期比では、3.1 %増の見込み。
経産省の発表によれば、
2025年度第2四半期建設部門の普通鋼鋼材国内消費量は393.5万トン、前年同期実績(397.1万トン)比では0.9 %減の見通し。
2025年度第2四半期製造部門の普通鋼鋼材国内消費量は560.5万トン、前年同期実績(550.9万トン)比では1.7 %増の見通し。
3.需要産業別の動向:土木部門
経産省の発表によれば、2025年度第2四半期土木部門の普通鋼鋼材国内消費量は135.8万トン、前年同期実績(137.2万トン)比では1.0 %減の見通し。
<公共土木の足元動向>
・一般公共事業予算及び国土強靭化予算(最終年度)は前年とほぼ同水準。防災・インフラ老朽化対策及び地方活性化に充填が置かれている。
⇒見通し 予算は前年並みの水準も、人手不足のほか労務費・資材費の高騰を背景に、鋼材消費は前年割れが続く。
<民間土木の足元動向>
・民間土木の受注額は、都市部での再開発や高い設備投資意欲を背景に前年比増加も、資材費の高騰に注意が必要。
⇒見通し 鋼材消費は低調が継続するものの、前年が低水準であったことから、前年同期比では増加が見込まれる。
上記(表6)によれば、土木部門の4月~5月迄の普通鋼材受注量は前年同期(31.2万トン)比6.1 %減の29.3 万トンとなった。
四半期換算では、44万トン。前年同期比では、2.3 %減の見込み。
4.需要産業別の動向:建築部門
経産省の発表によれば、2025年度第2四半期建築部門の普通鋼鋼材国内消費量は257.7万トン、前年同期実績(259.9万トン)比では0.8 %減の見通し。
<住宅部門の足元の動向> 総じて低調
持家:都市部の大型マンションは底堅いものの、建築コストの上昇のほか、住宅所得マインドの低下等により戸建て中心に低調に推移。
貸家:人件費含む建築コストの上昇、金利の先行き不透明感による投資意欲の減少などの下押し要因の影響が懸念。
<非住宅部門の足元の動向> 前年割れ
鉱工業用:設備投資意欲は旺盛ではあるが、人手不足・資材高による工事の見直し・先延ばしの影響続く。
運輸業用:これまで堅調だった倉庫需要が一巡。
商業サービス用:オフィス需要やインバウンドによる宿泊施設等に潜在的な需要はある一方、中小案件を中心に計画見直し・中止がみられる。
上記(表6)によれば、
建築の4月~5月迄の普通鋼材受注量は前年同期(82.9万トン)比6.0 %減の77.9 万トンとなった。
第1四半期換算では、116.9万トン。前年同期比では、4.9 %減の見込み。
5.需要産業別の動向:製造業 造船部門
経産省の発表によれば、2025年度第2四半期造船の普通鋼鋼材国内消費量は79.9 万トン、前年同期実績(77.4万トン)比では3.2 %増の見通し。
<造船部門の足元動向>
・新造船受注が堅調な一方で、設計人員・現場労働力の人手不足や労働規制の影響などから製造ピッチが以前上がらず。造船プロ節の複雑化も影響。輸出船手持ち工事量3.6年分。
⇒見通し 同様の傾向が続き、25年度の起工、鋼材消費はともに前年割れの見通し。
上記(表6)によれば、
造船の4月~5月迄の普通鋼材受注量は前年同期(47.1万トン)比1.2 %増の47.6 万トンとなった。第1四半期換算では、71.4万トン。
前年同期比では、1.7 %増の見込み。
6.需要産業別の動向:製造業 自動車部門
経産省の発表によれば、2025年度第2四半期自動車の普通鋼鋼材国内消費量は240.8 万トン、前年同期実績(236.2万トン)比では1.9 %増の見通し。
<自動車部門の足元動向>
・完成車生産は生産体制が正常化したものの、販売環境は芳しくなく、勢いを欠く状況が続く。
・KDセットは中国での日経メーカーのシェア低下、東南アジアでの需要減も継続。
⇒見通し 完成車は、日系メーカー車の国内外の需要減を背景に、生産台数は前年比減少の見込み。KDセットは、中国EV市場でのシェア低下、タイでのローン審査厳格化等の影響が懸念されるなか、前年度微増に止まる見込み。内外需ともに盛り上がりを欠き、第2四半期の鋼材消費は前年から微増となる見込み。
上記(表6)によれば、
自動車の4月~5月迄の普通鋼材受注量は前年同期(106.3万トン)比3.9 %増の110.4 万トンとなった。
第1四半期換算では、165.6万トン。前年同期比では、3.5 %増の見込み。
7.需要産業別の動向:製造業 産業機械部門
経産省の発表によれば、2025年度第2四半期産業機械の普通鋼鋼材国内消費量は95.2万トン、前年同期実績(93.9万トン)比では1.4 %増の見通し。
<産業機械部門の足元動向>
・建設機械は、主要市場の米国や欧州での需要が弱いことから、低調に推移
・工作っ機械は中国EV市場での堅調な設備投資などもあり、海外向けを中心に底打ち感がみられる。
⇒見通し 建設機械では米国市場で一部在庫調整が進展も需要回復には至っておらず、鋼材消費は微増に止まる見通し。工作機械では、中国など外需を中心に回復がみられるとの想定から、鋼材消費は増加の見通し。
上記(表6)によれば、
産業機械部門の4月~5月迄の普通鋼材受注量は前年同期(19.1万トン)比4.9 %増の20.1 万トンとなった。
第1四半期換算では、30.2万トン。前年同期比では、8.8 %増の見込み。
8.需要産業別の動向:製造業 電気機械部門
経産省の発表によれば、2025年度第2四半期産業機械の普通鋼鋼材国内消費量は59.2万トン、前年同期実績(59.0万トン)比では0.3 %増の見通し。
<電気機械部門の足元動向>
・電気機械部門は自動車向けが弱含みであることや海外経済の先行き不透明感を背景に総じて減少傾向で推移
・重電機械は、低調は自動車生産などに影響され緩やかな減少が続いている。
・家電は、消費者マインド冷え込みから総じて前年比減少。
⇒見通し 重電機械は、設備投資の手控え等下押し要因はあるが、静止電機が電力業・半導体・電子部品産業向けに堅調に推移し、前年比横ばいの見通し。 家電分野は、消費者の購買意欲が抑制されるなか、前年比減少の見通し。
上記(表6)によれば、
電機の4月~5月迄の普通鋼材受注量は前年同期(20.8万トン)比2.1 %増の21.2 万トンとなった。第1四半期換算では、31.8万トン。前年同期比では、1.3 %増の見込みとなった。
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