富士電機と三菱ガス化学 水素燃料電池システム共同実証に向け検討開始
~メタノール由来水素によるクリーンエネルギー供給の実現を目指す~
富士電機株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役会長CEO:北澤 通宏)と三菱ガス化学株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊佐早 禎則)は、8月1日、燃料電池とメタノールを原料とする水素生成器を統合した発電システムの共同実証に向けた検討を開始したと発表した。この取り組みは、両社の強みを結集し、水素燃料電池を幅広い地域・施設に向けて提供することを目指すもの。
GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けて、水素と酸素を化学反応させて電気を発生させる水素燃料電池は、CO2を排出しないクリーンな発電方式として期待されている。しかしその課題となるのが、燃料である水素の貯蔵や輸送に関する技術の確立やコスト面での制約だ。
このような中、水素キャリア(注)の一つであるメタノールは、常温常圧下で液体であるため貯蔵・輸送が容易で、既存インフラの活用が可能であることから、メタノールを用いて消費地で水素を生成する手法が有力な選択肢として期待されている。
(注)水素を別の状態や材料に変換して貯蔵・運搬する技術・手法
富士電機は、1998年に産業用燃料電池を製品化。これまで庁舎や病院、大学など国内外で100台以上納入し、燃料電池システムとして20年以上の運転実績を有している。ここで培ってきた燃料電池の製造技術やパワーエレクトロニクス技術を活かし、トヨタ自動車株式会社の燃料電池自動車「MIRAI」に搭載される水素燃料電池モジュールを使用した、低コストで高い応答性を実現する水素燃料電池システムの開発を進めている。
三菱ガス化学は、メタノールの製造から販売、用途開発までを一貫して行う世界でも屈指のメタノール総合メーカーで、近年ではCO2やバイオマス等から生成したグリーンメタノールを軸とした環境循環型プラットフォーム「CarbopathTM」の社会実装に向けた取り組みを進めている。メタノール改質水素製造技術は40年にわたり自社で培っており、メタノール改質による水素利活用を加速するべく、Methanol Reformer社とElement 1®社との戦略的提携のもと、ユニット型水素生成器の国内実証を検討している。
今般、両社の技術と知見を融合し、メタノールから水素を生成し発電するまでを効率的かつ低コストに行う「メタノール改質型水素燃料電池システム」の商用化に向けた実証(2026年度中に開始予定)の検討を始める。同システムでは、「CarbopathTM」によるグリーンメタノールを利用することで、メタノール改質時に水素と共に発生するCO2をオフセットすることが可能。これによりクリーンエネルギーとして、データセンターや工場などにおける停電時のバックアップ電源やピークカットのための発電システム等、効果的な用途への適用に向けた市場開拓と創出を推し進める。これらの取り組みを通して、幅広い地域・施設でのクリーンエネルギー供給の実現を目指す。
■実証のイメージ
国内で一般的に流通している圧縮水素(20MPa)と比較して、メタノールは同じ物流体積当たり約6倍量の水素分子を貯蔵・輸送できる(摂氏25度で計算)。
(IR universe rr)
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