「人とくるまのテクノロジー展 YOKOHAMA 2023」③半導体やベアリング企業も出展
横浜市西区みなとみらいのパシフィコ横浜で開催中の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 YOKOHAMA 2023(公益社団法人自動車技術開主催)には、自動車メーカーのほか、自動車技術を支える様々な企業が集結している。前回までの2回に続き、補足的に出展企業をピックアップしてみよう。
縁の下の力持ち---大同メタルズ
すべり軸受(ベアリング)メーカーの大同メタルズは、自動車を含む人々の生活を支える「縁の下の力持ち」だ。ベアリングは手のひらに載るほどの小さな金具だが、自転車やバイク、自動車から食品工場、船舶、鉄道、ロケットや風力発電まで幅広い分野になくてはならない。展示会では、都市のあらゆる場所に息づくベアリングを、模型を使って展示した。
この小さなベアリングにも技術革新の波は及ぶ。製品は銅板とアルミ板を貼り合わせた構造が主だが、次世代燃料向けに耐腐食性を向上させるなど研究が進んでいるという。コーティング剤にバイオマス樹脂を取り入れるなど、カーボンニュートラルへの意識にも対応していく必要があるとのことだった。
老舗半導体の底力——テキサスインスツルメンツ
米テキサス州で1930年代に創立した半導体の老舗・テキサスインスツルメンツは数年ぶりの出展となった。同社は1950年代にトランジスタラジオ、そして集積回路(IC)を発明。今や世界最大の半導体ファウンドリーとなった台湾積体電路製造(TSMC)創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏も過去に在籍したという歴史を持つ。
今回同社が展示していた半導体ウエハーは200mm~300mm製品。世界の半導体ウエハー生産は大型化が進み、特に比較的低価格品である200mmを手掛ける企業は少なくなりつつある。しかし、こうした汎用性の高い製品こそ実は一番大切で、半導体不足のため2022年に自動車生産が世界的に混乱した背景には、自動車生産を下支えする従来型の半導体が不足したことがあった。
同社も「特に自動車向けは安全性が一番大切です」との説明通り、ウエハーのほかに車両安全の確保向けのレーダーセンシング製品などを展示した。さすがの品質の高さと、「大切なのは何か」を見極めようとする老舗企業の信念と誇りを感じさせる内容だった。
e-Powerの魅力——日産自動車
日産自動車の展示ブースは大変に混雑し、同社への関心の高さがうかがえた。電動化と知能化技術に分け、それぞれの技術を応用した車種を披露。将来的な長期ビジョンまで示し、展示に見入る人が多かった。
日産は5月25日午後、「新型セレナ・エクストレイルの魅力を引き出すe-POWERの魅力」のタイトルで、e-POWERの開発責任者である同社のパワートレイン・EV技術開発本部 アライアンスPED・渋谷彰弘氏が講演した。e-POWERとは、日産独自の電動パワートレインで、ガソリンエンジンで発電しモーターで走る仕組み。いわば電気自動車(EV)とガソリン車の中間であり良いとこ取りのようなシステムだ。
同社の場合、e-POWER搭載の新型セレナは、ナビと連動した自動制御システムが特徴。例えば坂道ではガソリン車並みのパワフルさを発揮し、目的地付近では静かなEVの走りと、状況によって自動的にシステムを使い分ける。一方、エクストレイルの場合は、特に熱効率を向上し高出力のモーターが稼働するという。同社はe-POWERの搭載を他の車種でも進めており、エクストレイルはその代表的存在だ。
日産はまた、次世代パワーユニットの「X-in-1」として、モーターやインバイダー、減速機、発電機、増速機といった部品のモジュール化を進める。このパワーユニットでは、カーボンニュートラルの見地から希土類(レアアース)の使用を低減し、将来的には1%以下まで減らすことを目指すとも話していた。
「人とくるまのテクノロジー展 YOKOHAMA 2023」は5月26日午後5時まで開催する。
(IR Universe Kure)
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