新着情報

2024/04/29   世界の粗鋼生産量:...
2024/04/29   アングロアメリカン...
2024/04/29   週刊バッテリートピ...
2024/04/28   中国自動運転のポニ...
2024/04/27   韓国2024年3月...
2024/04/27   MARKET TA...
2024/04/27   韓国2024年3月...
2024/04/27   韓国2024年3月...
2024/04/27   韓国2024年3月...
2024/04/27   タングステン輸出入...
2024/04/27   中国太陽光パネルの...
2024/04/26   東京製鐵:24/3...
2024/04/26   【貿易統計/日本】...
2024/04/26   【貿易統計/日本】...
2024/04/26   【貿易統計/日本】...
2024/04/26   【貿易統計/日本】...
2024/04/26   【貿易統計/日本】...
2024/04/26   【貿易統計/日本】...
2024/04/26   【貿易統計/日本】...
2024/04/26   【貿易統計/日本】...

岡本工作機械製作所(6125) 23/3期決算説明会メモ 半導体、EV関連でポジティブ継続

24/3期は中計前倒し達成予想、EV、先端半導体関連で最高益更新続く

株価5650円(6/19)  時価総額266億円    発行済株4718千株 

PER24/3期DO予(5.5X)PBR(1.08X)配当(22/3DO予)220円  配当利回り3.8%

 

要約

・23/3H2は同期比13.7%増収、13.0%営利増と減益予想に対し大幅増額で着地

・23/3期は21.2%増収37.2%営利増と半導体関連装置好調で収益全て過去最高

・24/3期9.8%増収7.2%営利増予想と新中計25/3期目標1年前倒し達成予想も増額期待

・25/3期もグリーンフィールド投資、パワーデバイス向け等も加わり最高益更新続く見通し

 

23/3H2は同期比13.7%増収、13.0%営利増と減益予想に対し大幅増額で着地

 

 平面研削盤でシェア5割、またシリコン半導体ウエハ加工用装置も手掛けファイナルポリシャーでは世界7割シェアを誇る。 6/12に23/3期決算説明会が開催され、工作機械事業の細目、輸出仕向先などの半期推移が漸く開示された。半期推移では23/3H2は売上高231.42億円(11/7差し引き会社予想比25.24億円増額、13.7%増)、営業利益29.36億円(同7.98億円増額、13.0%増)と、下期減益予想が一転、2ケタ増益と上ぶれて着地した。なお受注は233.26億円(同期比23.8%減)となっているが、受注残高が565.81億円(同9.6%増)と増加し、4半期連続で過去最高額更新となっており、依然として生産が追いつかない状況が続いている。

 

 事業別では工作機械事業が売上高163.66億円(同期比12.9%増)、営利17.63億円(49.7%増)と15/3H2の15.03億円を抜いて四半期決算を開示して以降の最高額に。今回開示された内訳は工作機械が110.88億円(29.3%増)、歯車37.09億円(0.3%減)、鋳物15.68億円(28.8%減)となった。工作機械は国内で半導体業界や設備補助金などの経済政策の影響で好調に推移、海外は中国でEV関連向けの大型平面研削盤などが好調に推移した。歯車は売上高37.09億円(0.3%減)と部材調達などの遅れ等でユーザー側の生産が伸び悩み、フル生産している岡本工機も同様の動きで伸び悩んだ模様。鋳物は売上高15.68億円(28.8%減)と、米国での需要減退が響いた。なお受注の工作機械事業内訳開示は通期で工作機械のみ開示されたが、半期開示はなく、動向は不明。

 

 半導体関連事業は売上高67.76億円(15.6%増)、営利17.63億円(49.7%増)、受注87.68億円(31.5%減)と収益はMIX良化、受注は大口受注がなかったことで大きく減少した。売上高で地域別売上推移は有価証券報告書提出時でないと開示されないが、国内は20億円弱(38%増推定)、海外は48億円程度(9%増推定)と、国内の伸び率が高まっているが、依然としてグリーンフィールド投資に絡んだ売上増は出ていない模様。受注残高は378.81億円(同期比10.7%増、H1比5.5%増)とグリーンフィールド投資向けの受注残高が多く残っており、実際の売上寄与は24/3下期以降が本格寄与の時期とみられる。

 

 

23/3期は21.2%増収37.2%営利増と半導体関連装置好調で収益全て過去最高

 

 23/3期は売上高455.24億円(21.2%増)、営業利益55.98億円(37.2%増)、受注504.76億円(24.5%減)、受注残565.81億円(9.6%増)。売上、総利益は2期連続最高額更新、営業利益、経常利益は07/3期を抜いて過去最高益更新、税引利益は19/3期を抜き過去最高、全体として収益全てで過去最高更新。

 

 

 説明会において事業別では地域別売上、工作機械事業の内訳が開示された。事業別で工作機械事業313.05億円の内訳は、平面研削盤を中心とする工作機械が201.57億円(34.5%増)、歯車75.57億円(5.0%増)、鋳物が25.90億円(8.3%減)に。また歯車についての仕向先は60%がロボット向け、その他が40%となっているが、中心はEVギアを中心とするもので、比率が5ポイント増えているとのことで、ファナック向けの増とEVギア向けが貢献しているとみられる。

 

 なお初めて工作機械受注の開示がなされ(23/3期は非開示)、229.43億円とのこと。工作機械受注の業種別受注比率も開示(売上の業種別は非開示)、EV関連が全体の15%、金額にして34.40億円、半導体が8%(金額にして18.4億円)となっている。一方で自動車向けが4%(金額で9.2億円)に過ぎず、自動車の既存のエンジン周りのウエイトが低い事がわかる。特にEV関連では従来1%程度のものが15%に拡大、中心は中国とのこと。受注の国内は、ものづくり補助金や半導体関連向け中心に大型平面研削盤、セラミック業界向けにロータリー研削盤が好調に推移し増加した。具体的には門形研削盤UPGシリーズの受注が大幅に伸長、また半導体向け脆弱材加工では立軸ロータリー研削盤、横型ロータリー研削盤などが好調で、ロータリー研削盤は受注が1.7倍規模に。海外は欧州がウクライナ問題などの影響で受注減、中国はEV関連向けの大型平面研削盤、小型成形研削盤の好調で増加している。

 

 半導体関連事業は売上高142.19億円(24.2%増)、営利40.18億円(16.3%増)、受注178.86億円(45.3%減)、受注残378.81億円(10.7%増)。売上では07/3期154.42億円に次ぐ水準、営業利益は2期連続最高益更新となっている。受注は22/3Q2でグリーンフィールド向けを含め120億円の大型受注獲得の反動が大きく、期初では通常時の120億円水準までの減少があり得るとしていたのに対し59億円上乗せとなった。300mmウエハ向けファイナルポリシャーが東アジア及び欧州の複数の取引先から受注を獲得、次世代パワー半導体向やEVを中心とする車載向け半導体向け用途でラップ盤、グラインダなどが拡大した。

 

売上は国内推定28.5億円(27%増)海外推定113.5億円(23%増)。東アジア、欧州向けにウエハ生産用ファイナルポリシャーやグラインダの販売が好調に推移した。利益面では高収益のファイナルポリシャー以外の売上寄与もあったと見られ、MIX悪化もあり、営業利益率は1.93ポイント低下し28.3%となったが、依然として高い利益率を誇っている。なお受注残高が379億円、売上で2.7年分積み上がっているのはファイナルポリシャー納入の本格化が24/3下期から入る見通しのため。

 

 地域別売上では日本が183.31億円(21.4%増)と半導体製造装置、半導体ウエハ向け、歯車、工作機械は補助金の支援なども寄与した。海外も271.93億円(21.2%増)と同じような伸びも、伸び率では欧州が42.3%増と半導体関連装置の寄与などがある他、中国ではEV関連の好調、半導体関連装置ではファイナルポリシャーの寄与などが大きくアジアも19.23%増に。

 

 

24/3期9.8%増収7.2%営利増予想と新中計25/3期目標1年前倒し達成予想も増額期待

 

 24/3期会社予想は売上高500億円(9.8%増)、営利60億円(7.2%増)と、昨年提示した中期経営計画の25/3期目標値の1年前倒し達成予想とした。なお、上下予想ではほぼ50%折半予想となっており、従来と同様、上下予想は意識していない模様。

 

 6/12の決算説明会で事業別別売上予想は各々10%の伸びとした。一方、受注予想は工作機械、半導体関連装置10%減、歯車80億円(6%増)、鋳物30億円(16%減)との回答。これを元に試算すると、売上では工作機械事業344億円(10%増)、半導体関連装置156億円(10%増)となる。また受注では工作機械事業316億円(3%減)、内訳が工作機械206億円(10%減)、歯車80億円(6%増)、鋳物30億円(16%減)、そして半導体関連装置161億円(10%減)、合計477億円(6%減)予想と推定される。但し、この予想に従うと、24/3期末受注残高が543億円(4%減)しか減少しない見通しで、昨今の部材不足の緩和、岡本工機の設備30%増設効果などがあっても依然として受注残高の消化が進まないことになる。

 

 工作機械については工業会受注予想で2023年が前年比9.1%減の1兆6000億円としており、同社も業界並みの落ち込みを見込んでいる。しかし研削盤においては、従来、自動車生産で円筒研削盤が平面研削盤よりも多く使用されてきた。これは円筒研削盤が円筒形のワークピースを研削するのに適し、エンジン部品やトランスミッション部品などの加工に使用されていたためで、トヨタ系のジェイテクトが円筒研削盤シェアNO1となっている。一方、平面研削盤は、平面のワークピースを研削、自動車のボディ部品やホイールなどの加工に使用され、平面研削盤トップの同社の自動車向け受注比率は低い。ところがEVにおいては状況が異なる。まずEVモーターではモーターコア製造用金型について順送金型が利用されるが、積層化且つ大出力化で長尺金型の平面精度が極限まで求められ、大型超精密平面研削盤が必要不可欠となる。

 

 またEVバッテリー製造ではリチウムイオン製造過程で長尺ものの電極塗工ラインで均質な塗布を行うためにコーターテーブルの平面均質が歩留まりを決める重要な鍵となるなどで、こちらも超精密平面研削盤の出番となる。

 

  この他、EV化、自動運転などで車載電子部品が格段に増加する等で、精密金型製造での平面研削盤が重要となってくる。加えて、研削盤は非金属部品、代表的には半導体製造装置に使われるセラミック部材、車載では複合材研磨などでも利用され、他の工作機械とは違った需要が増える状況にあり、平面研削盤、加えてセラミック加工で多用されるロータリー研削盤等が寄与し、工業会工作機械受注予想ほどの落ち込みはないとみられる。

 

 また歯車についても、同社主力ユーザーがロボット最大手のファナックであり、ファナックのロボット生産の能力増強から判断して伸び率が低いと判断、しかも岡本工機の新工場完成で下期には能力30%アップが可能で、歯車も売上増額がファナック向けだけでも上乗せが見込まれる。さらに従来は自動車向けが少なかったものが、EVの登場で歯車の静寂性が求められ、歯車生産用工作機械を自社で生産している強味もあり、本格的にEV向けの歯車製造が加速する可能性も加わる。

 

 半導体関連装置事業受注については、従来、信越化学とSUMCOの日系2社の設備動向に先行する形で受注が増えていたが、今回は海外向けが5割以上を占めている。現在受注残高が379億円あり、グリーンフィールド向けが24/3下期には本格納入がなされ、25/3期まで納入が続くとみられ、売上高の伸長が続こう。24/3期受注について10%減と半導体製造装置協会並みの減少を見ているが、24/3期受注は非ファイナルポリシャー受注がパワー半導体向けバックグラインダ、CMP装置等で拡大するとみられ、全体としては業界平均を下回る減少率で止まろう。

 

 利益面では会社計画に対し、半導体事業の比率向上、工作機械の収益性アップなどが見込まれ、24/3期も会社計画を上回る利益が見込まれる。

 

25/3期もグリーンフィールド投資、パワーデバイス向け等も加わり最高益更新続く見通し

 

 300mmグリーンフィールド投資については2023年~2025年にかけて毎年月産60万枚の投資が実行されるとしている。同社の同社ファイナルポリシャーは月産1~2万枚の加工能力が有り、25/3期にかけて納入が進もう。加えてそれ以降については半導体の2D、3D化による大容量化が進み、デザインルールの微細化シュリンクによるウエハ需要の停滞という要素が薄れ、積層化によるウエハ使用枚数の拡大、加えてウエハ薄化ニーズの高まりで、ファイナルポリシャーによる極限の平坦化が求められると見られる。さらにパワーデバイスなどの拡大が続く中で、SiC等の化合物半導体ウエハへの投資が活発化する。

 

 SiCなどは難削材であり、シリコンの10倍以上の研削時間が必要とのことで、デバイスの生産枚数以上にインパクトが大きいとみられる。しかも難作材研削では東京精密、同社が機械の剛性でシリコン向け巨人のディスコに勝っており、化合物パワー半導体の設備増強も大きなインパクトとなる。しかもハイパワー化でウエハの薄化が求められ、グラインダ、CMP需要など、難作材加工の製品群の拡大が加速しよう。このため同社半導体関連装置需要は25/3期も拡大が続こう。また半導体の3D化に伴い、Si貫通電極ウエハの超平坦・金属汚染フリー・薄膜化加工のための研削技術も実用化(2024年7月までJSTが延長支援)が見込まれる。これはウエハ加工以外で後工程の異種材料同時研削可能な装置開発も行っており、ウエハ製造向けに加え、半導体後工程での製造装置分野でも売上拡大が期待され、事業の多用化が進もう。

 

 工作機械事業では研削盤でEV関連のリチウムイオン電池製造装置向け長尺超精密平面加工機、モーターコア製造用連装金型向けの超精密平面加工向け大型超精密門形平面研削盤などが拡大見通し。半導体製造装置・電子部品製造装置向けでは精密ロータリー研削盤の拡大が見込める。加えて高成長が期待出来るのが岡本工機の歯車事業。府中第2工場が2023年7月より生産を開始、月産15万個の生産能力が加わり、25/3期には歯車生産能力が約3割増となり、早晩歯車だけで売上100億円を超え、2ケタ成長が続こう。

 

 全体として25/3期も収益拡大が見込まれ連続最高益更新が見込まれる中で、収益拡大がジャンプアップする可能性がある。現在、同社24/3期会社予想EPS893.89円に対し新高値圏でもPER6.3倍は東証スタンダード機械平均PER14.9倍に対し割安である。PBRも1.07倍と、連続最高益更新企業として割安感があり、配当も20円上乗せし年間200円(配当利回り3.5%)も魅力的とみられる。このため今後、EV関連、パワー半導体関連、そして下期からの半導体関連装置の受注回復などで株価水準の居所が大きく変わってくる可能性がある。

 

 

 

(MIRAI)

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る