リチウム需要、2050年には21年の13倍に EV向け急増――IEAレビュー
国際エネルギー機関(IEA)は7月11日、ホームページ上で、今後の重要鉱物需要についての試算結果を初めて発表した。先進各国のネットゼロ経済への移行で電気自動車(EV)が普及するのに伴い、バッテリー材料としてのリチウムの需要は2050年には2021年の13倍超に膨らむ見通しだ。
2030年、2050年のリチウム需要予測
(注)2021年を100とする
(出典: IEAホームページ、以下同様)
レポートによると、ネットゼロエミッション(NZE)シナリオで考えた場合、2021年にはリチウム需要の半数にとどまっていたEV向けは、2050年には需要全体の8割超に達する。グリッド蓄電池向け需要なども増える見通しだ。他の鉱物も、コバルトが21年比で3倍、ニッケルが2倍弱、銅が1.5倍、それぞれ需要が増加すると予測した。
2030年、2050年の銅、ニッケル、コバルトの需要予測
(注)2021年を100とする
現在は、重要鉱物の生産や加工は特定国に偏っている。2022年の大型採掘プロジェクトの上位3カ国を見ると、希土類(レアアース)は7割弱が中国。リチウムはオーストラリアが5割弱、コバルトはほぼ7割がコンゴ民主共和国で採掘されている。加工は多くの鉱物で中国依存が顕著だ。中国は2030年までのリチウム化学品の製錬計画プロジェクトでも世界の半分を占める。一方で、ニッケルの製錬計画はインドネシアのシェアが9割近い。
2022年の地区別の採掘・加工状況
2030年までのリチウムとニッケルの製錬計画
IEAは中国について「世界最大の金属精製ハブとして原材料輸入に大きく依存しているため、調達目的で資源国に対する大規模な投資を進めている」と指摘。一方で、中国が8月から施行予定のガリウムとゲルマニウムの輸出規制について「あまり知られていないニッチな鉱物の重要性を浮き彫りにし、これらニッチな鉱物の供給依存がサプライチェーン(供給網)を混乱させる可能性を示した」とした。
IEAは2023年9月28日に重要鉱物を巡る初の国際会議を開催する。重要鉱物の安定的かつ持続可能な供給を共同で促進するための方策について議論する予定。
(IR Universe Kure)
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