レアアース価格が一段安 ランタン20年ぶり安値、中国貿易低迷、世界需要の減速警戒
7月に入りレアアース相場が一段安となっている。光学レンズなどの材料に使われる金属ランタンは7月6日から仲値で1Kg= 3.75ドルと、2005年夏以来20年ぶりの安値に下落している。金属ネオジムや金属ジスプロジウムの価格も1年8か月ぶりの安値水準。7月13日発表の中国の1-6月期の貿易統計では、同国のレアアース輸出額は前年同期比17.1%減った。世界景気の減速でレアアースの需要が縮小しているとの警戒が強まっている。
■ネオジムやジスプロシウムは1年8か月ぶり安値
過去20年間の金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
金属ランタンはもともと他の鉱種に比べ値動きは鈍く、2022年8月~2023年2月までの半年間にわたりは4.15ドルで推移していた。それが3月以降に段階的に水準を切り下げ、7月6日の仲値下落率は1.3%。この約5か月弱では1割近く下げたことになる。
過去3年間の金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
他の鉱種もさえない。磁石向けの代表格である金属ネオジムは7月6日に仲値で前日比2%安の1kg=78ドルを付けた。2020年秋以来の安値水準となる。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
金属ジスプロシウムも同じく2020年秋以来の安値に下落している。7月6日の仲値は1kg=365ドルで、前日から6%値下がりした。
過去3年間の金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属テルビウムは2021年春以来の安値水準。やはり7月6日に1Kg=1310ドルと前日から9%下げた。方向感もじり安で、6月から小幅に水準を切り下げる展開が続く。
■中国のレアアース相場は7月12日に直近安値
中国のレアアース業界団体である中国稀土協会のデータも悪化している。7月14日までのレアアース価格指数の平均値では、7月12日に187.4と直近安値を付けた。チャート上で確認できる2020年以来のデータで最も安い水準だ。
中国レアアース指数の推移(中国稀土協会)
■1-6月の中国貿易、輸出入ともにマイナス
一方、中国税関総署が7月13日に発表した1-6月の輸出総額は前年同期比3.2%減った。輸入は6.7%減で、4087億ドルの貿易黒字だった。6月単月では、輸出が前年同月比0.5%増、輸入が1.3%減で、706億ドルの貿易黒字だった。
中国国家統計局が6月30日に発表した中国の6月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.0と、3か月連続で好不況の境目となる50を下回った。7月11日発表の6月の卸売物価指数は5.4%とほぼ7年ぶりの大きな低下となり、消費者物価指数の前年同月比での伸びは0%とデフレの恐れが強まった。中国国内外ともに需要がしぼむ中でもレアアースは生産や加工が増えており、価格の下押し圧力になっているようだ。
(IR Universe Kure)
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