SUSscrap MarketWatch 2023#10 需要減退もさらに発生少なく微妙にタイト
7月下旬の国内ステンレススクラップ市場は、依然として国内ステンレス、特殊鋼メーカーの買いは弱いながらも、それ以上に発生が少ないこと、輸出に回っていることもあり、微妙なタイト感が生じている。
メインの304系スクラップは市中実勢でキロ当たり185~190円、400系は65~68円が港、国内メーカー向けは63~65円。
指標のLMEニッケル相場は世界的にステンレス不振ながらもトン当たり2万ドルを割り込まずに推移している。
しかしニッケル銑鉄はそのステンレス向け需要の不振を映して下落している。
(LMEニッケル相場とNPI相場)
(国内304系スクラップと430系スクラップ相場の推移 \/kg)
ステンレスメーカーの生産は低調のまま。日鉄ステンレス光で7月は3万トンまで戻ってきているが、旧日新の周南での生産が2万トンも割り込んで1万7000トン近くまで落ち込んでいることから、周南生産分を光に移しているのでは?との噂。クロム系の生産は八幡に移管していることからも、周南の先行きが案じられるばかり。周南の原料購買チームにも人員の異動が少なからずあった模様。
案じられるといえばフェロニッケルの大平洋金属もフェロニッケル需要の激減で足元かなり厳しい状況の様子。かつて購入していたニッケルスラッジもいまは全く購入していないという。ステンレスメーカーも住友金属鉱山のフェロニッケル含めて、フェロニッケル購入はあえて遅らせているという。
特殊鋼メーカー3社(大同、愛知、山陽特殊)も相変わらず荷受け枠は狭く、閉じられている。愛知製鋼は荷止め。もとから7月、8月は夏場の電力高で減産となるものだが、例年になく購入は少ない。また、通常は盆休みの期間に電力代が安くなることから作り溜めしておくものだが、今年についてはそういった動きは全くないようで静穏。
日本冶金もすでに2万トン割れの生産が続いている。1万5000~1万7000トンで推移中。生産数量少なくとも、高付加価値のハイニッケル系の生産が増えている、と聞いているが足元はその需要も落ちている様子。
盛り上がりに欠ける国内需要をカバー?しているのが輸出。
5月もト―タルで28,000トンの輸出があり、韓国、中国、台湾、タイ、インドの5か国向けが堅調。インド向けは400系が中心と思われる。
(5月のステンレススクラップ輸出向け先)
関連記事:2023年5月 SUSスクラップ輸出入統計分析 輸出は増加 韓国むけ3カ月ぶり増加
こうしたなか、国内の日系スクラップディーラーは発生不足、集荷不足にあえいでいる。
例えば、すでに日鉄系のJSPはスクラップの購入枠を全社4割カットとしているが、それでも納入枠が埋まらないほどに集まっていないという。厳しい時代だ。8月はさらに盆休みが入ることで全国的に例年流通量が落ちる時期。それでもメーカー側としては特段原料を欲しがる気配は薄い。生産落ちれば原料需要も落ちる。当たり前といえば当たり前だが、やはりこういう環境では、物量を動かしてなんぼのスクラップディーラーとしては例年以上の酷暑を心身ともに感じているようだ。
(IRUNIVERSE/MIRUcom YT)
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