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「シンギュラリティ(AIが人類の知能を超える臨界点)は5年以内に来る」―ベイリンクス代表石川氏

 IRuniverseは7月25日、半導体とAIをテーマにしたセミナーを行った。講師を務めたベイリンクス株式会社代表取締役の石川勇氏は、半導体を巡る米中の覇権争いの行方、そして、その背景にあるAI(人工知能)技術とAIチップが現代社会にもたらす可能性と、そこに潜む軍事転用(デュアルユース)の危うさを指摘。規律付けのために「ルール作りが必要だ」と強調した。セミナーから主要な論点を紹介する。

 

 急速に進歩するテクノロジーが見慣れた日常風景を一瞬にして変えてしまうインパクトを持つ現実に警鐘を鳴らす形で講演は始まった。一見結びつきがないようにも映る2つの事象を石川氏は講演の冒頭に挙げた。

 

 米が日本・オランダに共同歩調をとるよう迫って始まった半導体製造装置の事実上の対中輸出規制に、中国も対抗する形で半導体などの原材料となる重要鉱物ガリウム、ゲルマニウムの事実上の輸出規制を表明。出口の見えないままエスカレートする米中の半導体を巡る対立。

 

 そして、もう一つの事象はサンフランシスコに拠点を置く非営利団体センター・フォー・AIセーフティーが5月末に発表した共同声明である。そこに記されていたのは「感染症のパンデミックや核戦争と同様に、AIが人類に絶滅をもたらすリスクを考慮すべきだ」とのアピール。生成型AI「CHATGPT」を開発した米オープンAIのサム・アルトマンCEOが署名者に名を連ねていたことでも話題になった。

 

 

 共通するのはAI技術とその社会実装に道を開くAIチップの急速な技術進歩に対する警戒感だという。米は中国がそれを軍事転用することを警戒、けん制に動いた。最初の事象である米中対立の根っこにはそれがある。AIの持つシミュレーション技術を使えば、大量破壊兵器も開発できるとの指摘があるほどで、国連でもグテレス事務総長が提唱する形で、安全保障理事会を舞台にルール作りへの協議が始まっている。「IAEAのような国際的枠組みの監視組織がやはり必要だろう」と石川氏は強調する。

 

 ルール作りには、角突き合わせる米中がともに賛成だという。先端技術の軍事利用を押さえたい米国。一方、米国のけん制には強く反発しながらも最新テクノロジーが体制維持に必要な情報統制の足元をすくいかねないとの警戒感を持ち始めた中国。思惑の違いを抱えながらも、表面的には両国のそうした事情が、奇妙な足並みの一致を生んだ。

 

 石川氏が披露したそんなエピソードからも、国をも動かすAIの潜在力のすごみが伝わってくる。

 

 いま、AI技術と、最先端のAI用半導体の開発現場で何が起こっているのか。「AIが人類の知能を超える臨界点、シンギュラリティはこれまで2045年とされてきたが、そんなスピード感覚ではない。5年以内にそれは到来する」と話す。

 

 OpenAIの「Chat GPT」は「4」のレベルだが、下表(=参照:黄色枠)に示したタイムスケジュールで、そのバージョンアップが進んでいく。石川氏の見立てだ。シンギュラリティの節目は「Chat GPT6」の登場する2025年になるだろうという。この時点で「ソフト面では完璧になる。後はAIチップがそれにどれだけ追いついてこられるか」が焦点だとした上で、生成AIに宿るパワーの源泉に触れる。

 

 

「生成というところがポイント。コンテンツとコンテンツの組み合わせで、どんどん太っていく、強烈に。ここに恐怖がある」と。人間の頭脳を超える自律型ロボットを作り出すことも夢の世界ではなくなる。AIの未来に無限の可能性を見出しつつ、その利用を巡って規律付けの必要性を強調するのも、早い段階から悪用される道を遮断しておくことが肝心との思いからなのだろう。

 

 焦点の次世代AIチップの実現可能性についても淀みのない解説が続く。高性能のM Seriesを持つ米のNVIDIAが先行、これを同じく米のAMDが追いかける形で展開する現在の市場争奪戦が次の節目を迎えるのは2025年だという。微細化の進んだ新たなAIチップの投入が始まる時期になるからだ。内外企業50社超とコンソーシアムを形成してNTTが開発を急ぐ光半導体の試作品も、このタイミングで登場してくるとみる。

 

 いまある実装技術、例えば「曲げフリー」(=参照:前掲表 注2)とタイムスケジュールに載ったAIチップを併用するだけで、「(バージョンアップで高まる)1.5倍の集積度(630億個→970億個)をさらに1.7倍とか2.2倍に引き上げることもできる。2.2倍といえば、集積度的には1400億個の1ナノクラスになる」という。

 

 

 高密度集積・高性能化を実現する半導体の接続技術BUMPとNTTコンソーシアムが作り出す光半導体を連動させる発想で臨めば、その先に、もう一段、二段高いブレークスルーも可能と指摘する。この次世代AIチップの量産拠点として、国の支援を受けて2ナノ以下の先端ロジック半導体の開発・量産を目指すラピダスが浮上する可能性にも石川氏は触れた。半導体分野のゲームチェンジャーがこの時ベールを脱ぐことになるのだろう。

 

 話題はAIの応用分野にも及んだ。人手不足が常態化している建設分野などでの利用が加速しそうだという。AIチップの急速な進歩はまた、その普及シナリオの変更も迫った。人間の脳とコンピューターをつないで脳の情報を基にロボットのアームなどを動かす従来のイメージから、作業を自律完結できる「コ―ロボット」の設計思想が主流になりつつある。 

 

 

 Open AIの設立にも関わったイーロン・マスク氏が7月12日に新会社「xAI」を設立、生成AIツールの開発に新たに名乗りを上げたことで、AI周辺市場は何かと騒がしいが、セミナーの最後に、AIの普及に欠かせない光半導体の市場規模予測を、電気信号処理型の標準タイプと比較する形で、石川氏は示した。以下の表がそれである。ロジック型のCAGR(年平均成長率)を30%としており、標準型のそれに速いペースでキャッチアップしていく様子が描かれている。実際の成長ペースは「もっと速くなるかもしれない」という。AI市場とともにどこまで成長を遂げるのか、その動向から目が離せそうにもない。

 

 

 

(IRuniverse G・Mochizuki)

 

 

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