中国BYD、EV垂直生産で絶好調 中期純利益は3倍増、世界トップ10入り
中国電気自動車(EV)大手のBYDが8月28日に香港取引所で発表した2023年1-6月期決算は純利益が前年同期の3倍の109億5400万元(約2200億円)となった。中国内外でEV普及が進む中、バッテリーから完成車までの垂直生産を手掛ける同社の強みが生かされた形だ。
■EV好調で世界トップ10に
8月27日付の日本経済新聞朝刊が調査会社マークラインズなどのデータをもとに集計した結果として報じたところによると、2023年1〜6月の世界新車販売台数のランキングで、BYDは前年同期比96%増の125万台と初めて10位に入った。EVが業界の勢力図を書き換え始めたと受け止められ、米技術研究企業のワンディー・バッテリー・サイエンスのヴィンセント・プルニデージ最高経営責任者(CEO)は8月28日、リンクトインに「BYDの台頭は世界の自動車産業のドメスティックな変化の兆候だ」と投稿した。
BYDの1-6月期売上高は73%増の2601億2400万元。このうち8割を占める自動車事業の売上高が91%増えた。電気自動車とプラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数が過去最多となり収益を押し上げた。
BYDはもともと携帯電話向けバッテリーメーカーから出発し、初期には米モトローラなどに出品を提供していた。現在も携帯電話向け事業は続けており、同事業の売上高も2割伸びた。EVは2000年代初頭から手掛け、中国でも最古参のEVメーカーだ。地元深圳市に近い広州市で公共バスを提供するなど地方政府とつながりを持ったことがEV事業の飛躍につながった。
■価格競争が今後のリスク
多くの自動車メーカーが寧徳時代新能源科技(CATL)など電池メーカーにバッテリーを依存する中、垂直生産を手掛けられるのはBYDの何よりの強み。しかし、この絶好調企業にも競争激化の波が忍び寄っている。中国では新興のEVメーカーが絶えず勃興し、米国に上場するなど事業を拡大する動きも早い。
こうした中堅メーカーが低価格のEVを次々に販売しているため、価格競争が激烈化している。2023年4月の上海モーターショーでは、BYDは日本円で約130万円の低価格EVを発表して話題になった。
(IR Universe Kure)
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