貴金属PGM市場近況2023#8月 ドル価格高と円安がかみあい国内金価格が過去最高値
貴金属PGM市場は8月、米金利は上昇し、ドル高が進行するも、為替の円安が国内貴金属相場を下支えている。特に金相場は過去最高値になり、国内相場は円安でさらに上昇中。銀、パラジウム、イリジウムも上昇。今後、追加利上げの可能性もあるが、貴金属相場は堅調に推移するとの予想。プラチナ、ロジウム、ルテニウムは需要減少により若干下落の方向。
金(GOLD)金融への不安で、過去最高値
8月下旬のジャクソンホール会合において、パウエルFRB議長は追加利上げの可能性に言及しつつも、今後の政策判断は経済データ次第とするこれまでと同様の見解を示し、市場にサプライズを与える内容ではなかった。
金利が高止まりしている環境は一般的には金価格にとってネガティブとされるが、急激な金融引き締めに伴う金融システム不安や、非西側諸国の中央銀行による金購入といった要因が相場の下支えとなり、引き続き底堅く推移する展開か。
円建て金価格は対ドルでの円安進行により過去最高値圏で推移。
NY金($/toz)と国内金建値(\/g)の推移 3か月
銀(SILVER)一旦下落だが、金相場により追随姿勢
利益確定の売りに押され、8月中旬にかけて22.20ドル台まで下落する場面も見られたが、金相場が底堅く推移しているほか、割安感から買い戻される展開。
ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演は、追加利上げの可能性を示唆するなどタカ派的な発言も見られたが、市場参加者にとっては概ね予想通りの内容となり、今後の政策判断に関しても経済データ次第との姿勢は不変であった。
そのため物価・雇用関連指標やFRB当局者の発言、金相場の動向を眺めての推移が続くだろう。
NY銀相場($/toz)と国内銀建値(\/kg)の推移 3か月
プラチナ(Platinum)自動車生産が回復基調などにより相場を下支え
FRBによる利上げサイクル終了が近いとの思惑や、米国景気の腰折れが回避されるとの期待感に加え、金が下げ渋っていることなどが買いの手掛かり材料となっている模様。
主用途の自動車触媒においてパラジウムからプラチナへの代替が一部で進んでいるほか、今年下期の自動車生産が回復基調を辿るとの見通しも相場の下支えとなろう。
1,000ドル近辺は利益確定の売りが意識される水準であるが、先物市場で投機筋の売り越しが短期間のうちに拡大しており、これらの買い戻しにより相場が急伸する可能性には注意を要する。
NYプラチナ相場($/toz)と国内プラチナ価格(\/g)の推移 3か月
パラジウム(Palladium)需給バランスの崩れに要注意
今年下期の自動車生産に関して回復傾向が続くとの見通しは、ポジティブな要因である。 一方、主用途の自動車触媒分野ではパラジウムからプラチナへの代替が一部で進んでいるほか、非内燃機関への移行(EVへの移行)に伴う将来的な需要減少への懸念は根強く、上値は限定的か。 なお、需給バランス悪化の見通しを背景に、投機筋のポジションは大きく売り越しに偏っており、これらの買い戻しにより一時的に反発する局面が想定され、注意が必要。
NYパラジウム相場($/toz)と国内パラジウム価格(\/g)の推移 3か月
ロジウム(Rhodium)下げ含み続く
足元では価格下落の流れが一巡したことで、これまでの余剰在庫に対する危機感は後退している様子。
これに伴い在庫調整の売りも出にくくなり、年始から続いてきた相場の下押し圧力は低減していると思われる。
一方、中華圏を中心に需要の低迷が続いており、当面は上値の余地も限定的となろう。
JMロジウム価格($/toz)と国内ロジウム価格(\/g)の推移 3か月
イリジウム(Iridium)全体的に上昇中だが、上値が重い
ロジウム価格の下落に伴い、イリジウムが最高値の貴金属となり、結果としてリサイクル等の動きが活発化しつつある模様。
一方、今年初旬から高まっていた需要拡大への期待感に対して、足元では需要の伸びは限定的であり、当面は上値の重い展開を想定。
JMイリジウム価格($/toz)と国内イリジウム価格(\/g)の推移 3か月
ルテニウム(Ruthenium)相場を抑えられ、下落予想があり
HDDセクターではやや需要の回復が見られるものの、金利の高止まりが続く環境下では在庫保有への警戒感は根強い。価格は下方向の目線が多く、上値は重い印象。
潤沢な地上在庫も相場の押し上げを阻んでおり、当面は次の展開を模索する状況が継続するだろう。
JMルテニウム価格($/toz)と国内ルテニウム価格(\/g)の推移 3か月
(IRUNIVERSE/MIRUcom)
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