日本の銅箔輸出Report #50 V字回復 MLCCやフィルタ輸出に連動
日本の裏張り無し圧延銅箔の輸出は、2023年前半6年ぶりに少ない輸出量で推移していたが、夏以降、V字回復してきた。小型電子機器向けのMLCCやフィルタなどの輸出のV字回復と似ており、連動性が見られる。回復の兆し見えない銅条輸出と大違いである。
【1】圧延精製銅箔(裏張り無し)輸出概況
財務省の貿易統計によると、2023年10月の圧延精製銅箔(裏張り無し)の輸出量は1,453トンだった。6月にも一度1,400トンを超えたが、再び超えた。昨年後半から同輸出量が減少し、2023年1月に600トン台まで減っていた。ただ、そこから月を追うごとに輸出量を増やしていた。前年同月比21.0%減少し、3か月連続のプラスとなった。その前は15か月連続のマイナスだった。
2023年1-10月の同累計輸出量は1万2,123トン、前年比20.3%減少だった。前回報告した3か月前と比べて、同比のマイナス幅は10ポイント下げた。それでも、2019年、20年の同累計輸出量よりまだ少なく、2017年以来の少ない輸出量で推移している。
10月の同輸出平均単価は、キロあたり3,184円、前月より175円安だった。3か月連続で大きく下落している。同輸出量が増えているが、同時に単価下落となった。同輸出平均単価は、その前にも輸出量が大きく減った昨年後半から2023年初めにかけて大きく下落した。昨年年末から2月にはキロ3千円を割り込んでいた。そこから再び上昇していた。
【2】圧延銅箔(裏張り無し)輸出先
2023年も主要な輸出先として、量の多い順に米国、フィリピン、韓国、中国、台湾向けで、この5地域が輸出量全体の9割を占めている。この5地域向けの全てにおいて、同じように輸出量の動きで推移していた。つまり、昨年後半から輸出量を減らし、2023年の年初を底に再び回復するV字が見られる。
最も大きくV字回復したのは、中国向けである。昨年末には輸出量の前年同月比59%減少まで落ち込んだ。その前後で15か月連続同比のマイナスが続いたが、7月から4か月間プラスとなり、大きく反発増加している。同輸出の最大輸出先である米国向けは、2023年3月まで同比のマイナスが続いていたが、そこから回復している。
ちなみに、日本からの伸銅関連の輸出でV字回復しているのは銅箔だけである。銅条は、まだ回復の兆しが見えていない。日本から中国向けの銅条と銅箔の輸出量の推移を比較すると、2023年初めまで同じように減少していたが、その後は、銅箔が回復し、銅条が更に輸出量を減らし、大きく乖離している。
2023年10月の日本からの圧延銅箔輸出の主要な輸出先と輸出量、キロあたりの輸出平均単価と前月との差は以下の通り。
韓国 153トン6,365円(1,285円安)
中国 339トン3,097円(76円高)
台湾 216トン4,066円(73円高)
香港 40トン2,121円(98円安)
タイ 28トン1,929円(112円安)
マレーシア 18トン2,378円(621円高)
フィリピン 246トン2,850円(330円高)
米国 391トン1,932円(10円安)
【3】税関別
税関別に見ると、同輸出の主要な税関のうち東京、横浜、神戸、大阪からの輸出のV字回復が見えた。このうち同輸出量全体の4割を占めて最も多い東京と、3割を占める横浜のV字基調が全体の姿を形作っている。一方、京都や名古屋のように比較的輸出量が少ない税関はV字回復となっていない。ただ、どちらも輸出量を増やしてきている。ただ、下関からの同輸出だけは、ここに来て輸出量を減らしている。
10月の同輸出の主要な税関と、輸出量と、キロあたりの輸出平均単価は以下の通りである。
東京 576トン2,590円
成田 72トン5,551円
横浜 467トン3,270円
神戸 38トン3,346円
大阪 128トン4,753円
京都 73トン3,179円
下関 25トン1,390円
※記事内のグラフ・図表は、MIRU.comにて作成
(K.AKIYAMA)
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