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スポンジチタンメーカーの株価について

 両社の株価は大阪チタニウムテクノロジーズ(以下大チタ)を100とすれば東邦チタニウム(東チタ)は2022年の後半から6割前後の水準で推移している。これは、大チタが低稼働からフル稼働に移行するため数量増高効果が期待できるとしてプレ三ミアムがついたためだと想像できる。なお、東チタは主要顧客である米国TIMET社のヘンダーソン工場でのスポンジチタン生産中止を受けて1年早くフル稼働となっていた。

 

図表1、大チタと東チタの株価推移(大チタ=100)

出所:YahooファイナンスよりIRU作成

 

 ただ、足元では大チタも9割程度とフル稼働状態になっており、これまでのような数量増効果の恩恵を受けにくくなっており、そのプレミアムがはがれてくることになると思われる。つまり、東チタとの価格差が縮んでくると思われる。

 

 その理由について、まず、大チタのチタン事業と東チタの金属チタン事業の違いを、どれだけの投資家が理解しているのかだ。

 

 大チタのチタン事業は、スポンジチタンとチタンインゴットの販売になるが、東チタは、スポンジチタンとチタンインゴットに高純度チタンと持分法である、サウジの関連子会社からのスポンジチタンの仕入れ販売が含まれる。

 

 大チタは稼働率上昇に伴いチタンセグメントの利益率が右肩上がりで上昇、24/3期2Qには利益率が19.2%となった。一方、東チタは、12%前後で推移していた利益率が24/3期に入って低下、同1Qは1.5%となり、2Qには7.2%まで戻すも、大チタの半分以下だ。

 

 この東チタの下落要因は在庫評価影響の違いと高純度チタンの影響によるもの。在庫評価について同社は先入先出法を採用のため、原料価格が急上昇したため、24/3期からは23/3期より高くなった原料を使用した。高純度チタンは半導体のターゲット材向けで、半導体の低迷を受けて大幅減となった。高純度チタンは利益率が通常は3割以上と高いため、6割減ともなると固定費負担が重くなり利益率が悪化する。ただし、両社にヒアリングを行って確認したが、これだけ大きく落ち込んでも赤字にはなっていないとのことだった。あと、24/3期から本格化したのが関連会社からの仕入れ販売があるが、始まった年なので大きな影響はないが、仕入販売のため利益率は低い。

 

図表2、大チタと東チタのチタンセグメントの四半期別利益率推移(%)

出所:各社決算短信よりIRU作成

 

 スポンジチタンの国内外の状況については両社が無いが非チタン事業を見ると差が出てくる。大チタは、ここに高純度チタンが含まれる。高純度チタンについては、両社で世界トップを競っており同じ状況だ。

 先述したように高純度チタンの稼働率が低下しているも赤字に転落していない。でも、大チタの非チタン事業は赤字となっている。これは、大チタが説明会なので説明しているTILOP(低酸素球状チタン粉末)、粉末状にしたチタン合金の利益率が低く、加えて他の製品のほとんどが開発製品であるため、赤字になったのだ。

 

図表3、大チタのセグメント別利益率推移(%)

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

 一方、東チタの非チタンはスポンジチタン製造時にできる四塩化チタン(触媒事業)をポリプロピレン製造時の触媒向けに販売している。ポリプロピレンの主要生産国である中国の景気が低迷しているため、伸び悩んでいるが、利益率は今1Qで27.3%、2Qでの30.0%と高い利益率を維持している。また、積層セラミックコンデンサー(MLCC)向けのニッケル粉(化成品事業)は、半導体需要の低迷から伸び悩んでいるが、利益率は今1Q17.0%、2Q10.0と、主力のチタン事業よりも高い。足元ではMLCCに回復の兆しが見え始めており、今4Q以降の貢献が期待できる。

 

図表4、東チタのセグメント別利益率(%)

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

 25/3期以降は半導体業界と中国景気の回復などが期待できることから、東チタの非チタン事業の収益寄与が期待できる。高い利益率を有する非チタン事業の評価が、今度の東チタの株価に影響を与えてくるものと思われる。また、前回も書いたが、大チタの輸出価格が為替変動分ぐらいしかないが、東チタの輸出価格はミックスの改善により上昇していることも株価に評価されてもよいのではないだろうか

 

 ちなみに、ネットD/Eレシオは大チタが22/3期1.13倍、23/3期1.10倍、24/3期2Q0.98倍に対し、東チタは22/3期0.76倍、23/3期0.74倍、24/3期2Q0.84倍と健全の目安となる1倍を大きく下回っている。また、EBITDA倍率をみても大チタ23/3期18.5倍、24/3期予14.0倍に対して、東チタは23/3期9.7倍、24/3期予7.3倍と足もとでは目安となる8倍を割り込んでいる。

 

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 ⇒「スポンジチタンメーカーの24/3期の上期決算を受けて

 

図表5、スポンジチタン輸出価格(千円/トン)

注意:神戸は大阪チタニウムテクノロジーズ、門司及び横浜は東邦チタニウム

出所:貿易月報よりIRU作成

 

 

(IRuniverse 井上 康 )

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