ゲルマニウム輸入Report#50塊粉くず 中国からの輸入早くも回復か
日本のゲルマニウム塊粉くずの輸入は、中国が2023年8月始めたゲルマニウムの規制強化を受けて9月に中国からの輸入量が減った。ただ、10月は早くも戻り始めている。一方、ゲルマニウムの製品は、中国からの輸入が途絶えたままである。
【1】ゲルマニウム塊・粉・くずなどの輸入概況
財務省貿易統計データによると、2023年10月の日本のゲルマニウム塊・粉・くずなどの輸入量は462キロだった。前月は、5月以来の100キロ割れとなったが、再び400キロ台に回復した。前年同月比904%増加となり、2か月ぶりにプラスに戻した。
10月の同輸入平均単価は、キロあたり22万8千円、前月より5万円高だった。輸入量が少なかった月で突発的に単価が上昇した月を除くと、引き続き2015年1月以来の高値圏にある。
2023年1-10月の同累計輸入量は4,031キロ、前年比90.2%増加した。昨年の年間輸入量を約1割上回った。
【2】ゲルマニウム塊・粉・くずなどの輸入先
前月に続き、同輸入の注目は、中国が事前予告し、8月以降、ガリウムとゲルマニウムの取引制限の影響である。8月は、特に変化が無かったが、前月は、中国からの輸入量が5月に続き100キロを下回った。ただ、今回10月は、200キロ台まで戻している。
また、中国からの同輸入平均単価は、8月前後も大きな変化がない。2021年、昨年の同輸入平均単価が上昇し、20万円前後まで上昇しているが、2023年6月以降、20万円手前でほぼ横ばいとなっている。
ゲルマニウムの話題については、多くのメディアが中国だけに注目している。しかし、日本のゲルマニウム塊粉くずの輸入については、中国に次ぐ輸入量の米国にも目を向けるべきである。前月は、米国からの輸入が1年ぶりに途絶えた。その前の月も輸入量が極端に少なかった。今回10月は、久々に米国から纏まった量の輸入があった。ただ、その輸入平均単価は、異常に高い。中国のゲルマニウムの規制強化の動きを見ての便乗値上げではないかと思いたくなる急騰である。
2023年10月のゲルマニウム塊粉くずの主要な輸入先と輸入量と、キロあたりの輸入平均単価は以下の通りである。
中国 288キロ19万3千円
米国 174キロ28万5千円
【3】ゲルマニウム塊・粉・くずなどの輸入税関
税関別に見ると、米国からの同輸入の動きにより、大きく影響を受けているのが、東京になる。東京は、このところ同輸入量、輸入平均単価の動きが大きくなっている。
2023年10月のゲルマニウム塊粉くずの主な輸入税関と輸入量、輸入平均単価は以下の通りである。
東京 174キロ28万5千円
成田 279キロ19万 円
関西空港 9キロ28万9千円
【4】ゲルマニウムその他もの輸入概況
単結晶レンズなどのゲルマニウム製品を指しているゲルマニウムその他ものの2023年10月の輸入量は、7キロだった。3か月連続で100キロを下回った。また単月輸入量で10キロを下回ったのは、2012年10月以来である。
2023年1-10月の同累計輸入量は。1,478キロ、前年比74.4%減少だった。2020年以来の少ない輸入量となっている。
同輸入は、毎年、中国からの輸入分が輸入量全体の9割を超えている。ただ、2023年1-10月の累計で見ると、輸入量全体のうち中国からの輸入分が89.5%と9割を下回った。これは2015年以来である。
中国からの輸入が今回10月も含めて2か月連続で止まっている。また2か月前の8月も1キロと極端に少ない量だった。ゲルマニウム単結晶レンズは、暗視野カメラなどに重宝される高性能な赤外線フィルタとなる。塊粉くずに比べて量は少ないが、こちらの輸入減の影響が出ないか注目したい。
※記事内のグラフ・図表は、MIRU.comにて作成
(K.AKIYAMA)
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