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セミコンジャパン「JASMの進捗と今後の展望」講演 

JASMの進捗と今後の展望」講演内容 

 

 セミコンジャパンの2日目、12/14に日本半導体産業の発展に向けて半導体を取り巻く先端開発と題するセミナーが実施された。この中で、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited)が熊本県菊陽町で半導体生産を行う株式会社JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)について、取締役社長堀田 祐一氏が講演を行った。内容は「JASMの進捗と今後の展望」で、具体的には会社概要及び現在の進捗状況、JASMが提供するスペシャリティ・テクノロジー、日本の半導体製造とエコシステムの強化におけるJASMの展望についての講演。

 

 

 まずJAMSは専業ファウンドリ先駆者TSMCが過半数を出資し、2021年11月に熊本県に設立した子会社。TSMCにとって日本初となる工場で、ソニーの半導体部門であるソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)と、自動車の部品サプライヤー大手のデンソーも少数株主として出資参画している。半導体に対する世界的に旺盛な需要に対応することを目的に、22/28nmプロセスならびに12/16nm FinFETプロセス技術による製造を担う。JASMのファウンドリは、2022年4月より建設を開始し、2023年4月には工場建屋が完成、8月にはオフィス棟で供用を一部スタートした。10月には工場棟へ装置の一部搬入が始まった。建設にあたっては2023年5月にはピーク人員6000人の建設労働者が従事(菊陽町の人口は43000人)する規模となっていた。今後、2024年末までに演算用ロジック半導体の生産開始を目指す。なお総工費は1兆1千億円規模で、日本政府が最大4650億円の助成を行うことになっている(2023年6/17経産省が認定)。同ファウンドリでは、約1,700人の先端技術に通じた人材の雇用を創出、月間生産能力は55,000枚(300mmウェーハ)となる予定。JASMは、市場のスペシャリティ技術へのニーズに応え、日本の優れた半導体人材を活用し、グローバルな半導体エコシステムの成長に貢献するとしている。

 

 採用人員についてはTSMC、ソニー等からの技術者出向で600名(TSMC320名、ソニー200名等)、残りを新卒と中途の外部採用としている。既に2023年4月の新卒125名を採用(初任給28万円が話題となる)、中途を含め現状1400人規模となっているが、2024年は250名の新卒を確保したとのこと。2024年の新卒250名採用の地域別では九州地区が56%と過半を占めるが、関東16%、関西10%、中部7%など、国内全ての地域から採用している。新人については台湾で6~9ヶ月研修を行う予定。なお台湾からのTSMC社員、家族の移住も活発化、現在750名にのぼっており、台湾台北と熊本の直行便も9月から就航、週12便運行している。

 

 サプライチェーンについては2023年11月現在でTSMCと取引のある企業に加え、新規に120社と取引を行う。操業後、速やかに国内調達50%を目指し、2030年には60%まで比率を高める方針。但し高機能部材については日本メーカーが対応できていない面も有り、引続き台湾からの供給で賄うとしている。

 

 

 いずれにしても九州には現在、日本の半導体企業の3分の1以上が集まっており、自動車部品メーカーも多く存在している。世界的な半導体需要の高まりに対応し、九州、そして日本が世界有数の半導体生産地として発展することに寄与していくとのことで締めくくられた。

 

「JASM」の波及効果の大きさ、第2工場建設で更なる半導体産業復活期待高まる

 

 熊本は九州の中心にあり、半導体生産に必要不可欠な豊かな水源を有する地でもあり、「シリコンバレー」に先駆け、1990年代まで世界的な半導体の拠点として九州は「シリコンアイランド」としてその地位を確立していた。しかしその後の日本半導体産業の凋落も有り、代わりに自動車産業の立地が相次ぎ、「カーアイランド」に変貌していた。しかしソニーだけは長崎諫早工場に加え2005年~2006年にかけて鹿児島県霧島市、熊本県菊間町で工場を増設、CMOSイメージセンサで括弧たる地位を確立、2010年以降、九州の半導体生産を支えてきた。このような中でTSMCの熊本への工場立地が決まったが、その背景にはもちろんパートナーのソニーの工場が立地していることが大きいものの、歴史的に半導体関連の技術的な遺産を抱え、1000社を超える中小の半導体関連企業が存在、しかも熊本県に200社以上立地、豊富な水源、広大な土地の供給が可能、地理的に台湾と近いなどで総合的な判断がなされたとみられる。

 

 

 今回、JASM進出が起爆剤となり、菊陽町では半導体関連企業の進出が相次いでいる。加えて熊本以外の各県でも新設工場の話題が相次ぎ、地価上昇、人手不足など、まさに半導体バブルとも言える状況となっている。

 

 

 このような中で、TSMCは新工場の開所式を2024年2月下旬に行う方向で検討、さらに同社は日本で第2工場建設の意向を表明しており、その候補地として新工場の隣接地が最有力地となっていることから、正式発表を行う可能性もある。第2工場については回路幅12ナノが想定されていた模様であるが、現在は熊本を優先的に検討する意向を示しており、回路線幅6ナノも視野に入っていると見られる。総投資額は現在の新工場を上回る規模が想定され、2024年4月着工、2026年末までの生産開始を目指すもとみられる。候補地として最有力は第1工場の隣接、日本政府は第2工場について7500億円規模の補助を行う事を想定している。

 

 

 現在、WSTSの秋期予想で2024年の半導体市場が2023年の5201億ドル(9.4%減)から5883億ドル(13.1%増)となり、2022年の5741億ドルを抜いて過去最高額更新を予測した。TSMCの製造品であるロジックは2023年の1749億ドル(0.9%減)、2023年6月以降はプラス成長が続いており、全体が不信の中では健闘している。そして2024年は1917億ドル(9.6%増)と過去最高更新見通しとしている。またガートナー予測では2023年が5634億ドル(10.9%減)、2024年は6240億ドル(16.8%増)予想と最高額更新、さらに2025年は7210億ドル(15.5%増)と拡大継続予測としている。このような環境の中で、TSMCの大型設備投資継続、先端に近づく設備投資が実行されることで、2030年に市場規模1兆ドルとも言われる半導体産業が日本の経済再生に大きな役割を果たす期待が益々高まってこよう。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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