鉛バッテリースクラップ市場近況2024#1 年明け市況、荷余り感は依然として続くも高値は8円高

年明けの鉛バッテリースクラップ市況は続落となった。冬場を迎え発生増となった季節要因を映した形だ。12日現在、12月上旬比5円安の1キロ97円(仲値)での推移となっている。ただ、小ロット取引の一部で逆に8円程度水準を切り上げて「高値では113円程度も確認されている」との声が聞かれ、一気に相場の足元が崩れる展開にはなっていない。関東、東北地域での新たな製錬設備の立ち上がりや計画もあり、目先の下げ余地は限定的とする声も聞かれる。
12日現在、1キロ当たり安値93円、仲値97円、そして小ロット取引対象の限定的な値付けながら「高値では113円もある」(扱い問屋筋)という。12月上旬段階では「製錬メーカーが当面の在庫手当を終え、85円の買取価格を唱えて実質的にお断りの通知をしている」(同)との話が伝わっていたが、相場は下げ局面に入って意外な粘り腰を見せている印象もある。
鉛バッテリースクラップ相場
ここ数年製錬メーカーの安値買取に対抗する形で中華系業者を中心に需給調整弁として、「輸出」を活用する動きが目立っていたが、11月中旬には異次元の118円(高値)まで上昇したことで、輸出業者も解体せずに鉛バッテリーとしてそのまま国内製錬メーカーへの納入に注力。その結果、製錬所段階での荷余り現象が年末に発生した。
一年間の鉛バッテリースクラップ相場
ただ、中華系による製錬設備の新規立ち上げの情報が入ってきている。関東の設備はすでに立ち上がり、東北でも間もなく操業が始まる見通しだという。「関東は1日50~60トンクラス、東北は同100トン規模の生産能力がある」といい、「新規立ち上げにより、今後鉛バッテリースクラップ需給は引き締まっていく」との見方を示す関係者もいる。 東北の製錬所は鉛の許可申請を持つ国内業者に「間借り」する形を取っているといい、機材の輸入の遅れにより本格稼働は2か月後になる見通しとのことだ。
発生が増える冬場にいったん下げた後、在庫消化の進む5月頃から上げに転じるのが鉛バッテリースクラップ市況の近年のパターン。今年はそれを踏襲するにしても「輸出」という需給調整弁のほか、新規製錬設備の立ち上げという材料を得て、問屋サイドの攻勢が強まりそうで、下げ局面から反発に転じる際の上げ足に弾みがつく展開も十分予想される。
(IRuniverse G・Mochizuki)
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