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黒田精工(7726) オートモーティブ2024年取材メモ EV用モーターコアでポジティブ

24/3期モーターコア金型好調も半導体向け不振で18.7%減収65.0%営利減に減額

株価1283円(1/29) 時価総額73億円           発行済株5693千株

PER(24/3DO予:20.9X)PBR(0.67X) 配当(24/3予)35円  配当利回り:2.73%

 

要約

・オートモーティブ展でEV用金型自動接着積層システム中心に各種積層工法を展示

・24/3期はモーターコア金型好調も半導体向け等の不振で18.7%減収65.0%営利減に減額

 

オートモーティブ展でEV用金型自動接着積層システム中心に各種積層工法を展示

 

 24年1/24~26に東京ビックサイトで行われたオートモティブワールド2024が開催された。同展示会はカーボンニュートラル、電子化・電動化、自動運転、コネクティッド・カー、軽量化など、クルマの先端テーマの最新技術が一堂に出展、その中のEV・HV・FCV技術展で黒田精工ブースを訪問、同社のモーターコアの動向を取材した(撮影不可)。

 

  同社は精密ボールネジ、モーターコア用精密金型、計測・工作機械を3本柱に展開しているが、23/3期の金型システム事業は売上高97.98億円(構成比43.1%)、営業利益3.66億円(同28.5%)、受注額106.45億円(同48.5%)と、主力事業となっている。同社のモーターコア金型事業の特長は、顧客ニーズに合わせ、ダボ積層、レーザー溶接積層、接着積層の3つの工法を有している点にある。このうちレーザー方式は振動小型モーターなど精密小型モーターなどに利用されるが、ダボ、接着積層方式がHEVやEV用モーターコア向けに利用されている。

 

 中でも特徴的なのは、同社が独自開発した薄型の電磁鋼板を高精度に積層するモーターコア製造技術の金型内接着積層コア量産システム「Glue FASTEC」である。同システムは常温かつ短時間で硬化する特殊な接着剤を使用し型内接着を可能とし、2008年に開発された。2016年に次世代自動車の駆動用モーターとして初めて量産採用が決まったシステム。この方式は従来方式のダボを作らないためにモーターコアに対する機械的なストレスが非常に小さく、各電磁鋼板の間が接着剤で絶縁され、過電流の発生も少ないのが特徴。同社試験では鉄損(モーターコア内での電気エネルギー損失)を10%以上削減している。また機械精度が良く、接着による剛性も優れている。さらに接着剤が断熱の役目を持ち冷めやすい長所が有り磁石の長寿命化にも効果があるとしている。

 

 現在、EVモーターに対する要求が搭載性の高さを重視する方向となっており、EVモーターの高出力化と小型化と二律相反する要求が高まっている。モーター出力はトルクと回転数の積で決まるため、まずは高速回転が求められ、最近は回転数で約2万rpmに達する。この高回転化では駆動電流の周波数が高くなり、回転数の増加に伴う高周波励磁下での鉄損を減らすことが不可欠で、Glue FASTECの優位性が発揮される。また電磁鋼板は1枚ごとに厚さ方向に過電流が流れる。このため、電磁鋼板の厚みを薄くする方向が進んでおり、従来の0.35mmから0.25mmへの採用が増えている。展示会場で金型事業部企画部の方から聞いたところでは、具体的にEV仕様で0.25mm無方向性電磁鋼板600枚、もしくは300枚積層のものが多いとのこと(ちなみにHEVでは0.25mmで200枚積層、0.35mmで150枚積層など)。接着積層では積層間短絡が小さく過電流損が軽減されるのも有利となる。なお最近は薄さ0.2mmへの動きもあり、ダボではダボの突起の高さが限界にきており対応不能となりつつある。但し、0.2mmは単価が高く、さらに日立金属などではアモルファス合金を利用し更なる薄化の開発も進めるも、同社ではとてもコストに合わないので実用的ではないと判断しているとのこと。なおダボ方式の鉄損軽減では焼鈍により加工時に生じる残留応力を削減する方法があり、トヨタなどはこの方式でダボ方式(三井ハイテック中心)の採用を続けている。接着積層方式では熱で接着剤が液化してしまうため焼鈍ができないデメリットがあるが、同社では電気炉を持ち社内で焼鈍作業を内製化できる企業が少ないこと、さらに同事業者が減少し、焼鈍の外注が難しいとしており、この点でもEVにおいては同社の優位性は崩れないとしていた。

 

 同社のモーターコア事業でのEV及HEV採用状況は、20/3期の説明会資料で10件(ダボ3件、樹脂接着積層7件)が、22/3期では20件(ダボ3件、積層方式にマグネット樹脂固着技術を付加した接着積層方式3件、樹脂接着積層11件)に倍増、更に23/3期では24件、そして24/3期中間決算資料では30件(ダボ5件、積層方式にマグネット樹脂固着技術を付加した接着積層方式3件、樹脂接着積層22件)、展示会場でも地域別の供給体制について関係会社名を挙げて図式化、樹脂積層接着方式が増加の大半を占める。主力ユーザーではスタンピングを行うユーログループ(イタリア本社)を通じEV最大手のテスラ向け、また欧州でもユーログループを通じ、高級車メーカーに多数採用されている。さらに中国でも欧米企業の現地向けに採用されている模様。国内ではホンダ向けなどが中心。

 

 

 

24/3期はモーターコア金型好調も半導体向け等の不振で18.7%減収65.0%営利減に減額

 

 24/3期会社予想は半導体製造装置の不振、工作機械受注の減少などを受け、モーターコア事業の好調の中で上期決算公表時に期初計画を大幅額修正した。24/3期修正予想は売上高185億円(期初計画比12億円減額、18.7%減)、営利4.5億円(同5.2億円減額、65.0%減)、経常利益5.5億円(同3.2億円減額、64.1%減)、税引利益3.5億円(同2.1億円減額、61.4%減)とした。

 

 具体的に事業別では駆動システムが売上高61億円(同20億円減額、32.0%減)、営業損失4.2億円(同9.2億円減額し赤字転落)予想。現在、半導体生産の減速で同部門の売上高の30%弱を占める半導体製造装置向けの受注が急減、また工作機械受注の低迷も影響、精密ボールネジの在庫調整が継続している。同社では下期からの受注回復を見ていたが、現状、23年11月の工作機器工業会の販売統計でも同月比47%減と不振が続いており、受注の本格回復は25/3Q2以降にずれ込むとみられる。但し医療機器や食品製造など高クリーン度を求められる分野の拡大などは7%程度に拡大、24/3期には2ケタの比率に高まるとみられ、業界の落ち込みよりは減少幅が少ないとみられる。利益面では減収影響に加え、ドイツ現法の工場移転後の生産体制整備が遅れたことも影響し、赤字転落予想に。

 

 機工・計測分野は売上高34億円(同8億円減額、15.0%減)営業損失1億円(同2億円減額、0.19億円赤字拡大)予想とした工作機械、要素機器とも自動車産業の生産回復遅れの影響で減額に。

 

 一方で、金型システムは売上高90億円(同16億円増額、8.1%減)、営業利益9.7億円(同6.0億円増額、2.7倍)予想と大幅増額予想に。当初、売上面では採算の低いLucid社低迷影響で大幅な売上減を予想していた。Lucid社が、バイデン政権のIRA法案でEV補助金政策の変更により、高級車で55000ドル以上の車種しかないために2023年3月にEV販売台数を2023年当初計画20,000台から12,000台に大幅な販売計画の下方修正を実施。24/3期は日本からのモーターコアの米国向け輸出が激減する事が大きいとしていた。しかしテスラ(23/12Q4で四半期過去最高の47.9万台を生産)を中心とするユーログループ向けの金型事業が順調に推移、欧米、中国での欧米メーカーのEV投入設備増強が寄与、試作を含め契約が増加、採算面でもMIX良化で大幅増額見通しとした。なお売上では金型37億円(28%増)とモーターコア37億円(46%減)、ほぼ半々となる見通しが、金型の上振れが大きいと推定され、利益面でMIX良化が加速していると推測される。受注面では24件の電動プロジェクトに加え、さらに国内外で既に6件のアイテムが加わりさらに契約が拡大する見通し。受注が売上を上回り、売上寄与が来期以降に本格寄与すると見込まれる。

 

 全体を通じ利益面では金型事業以外の赤字で大幅減額修正を余儀なくされた。現状、工作機械受注、工作機器生産動向を見ても底這いを脱しておらず、24/3期は会社減額修正並みの収益に止まろう。

 

25/3期は駆動システムの本格回復、EV用金型生産能力倍増し本格戦力化で収益上伸へ

 

 25/3期は駆動機器事業がQ2あたりから回復に向かい、下期は半導体製造装置受注の急回復を受けて同社駆動機器事業の受注も急回復が見込まれる。さらに医療、食品等の非半導体製造装置向けに低発塵クリーンアクチュエーターの売上拡大も加わり、同部門の売上受注拡大が期待される。また利益面ではドイツ子会社JGWTの工場移転の遅れや一時費用の発生がなくなり、新工場で生産効率が大きく改善する見通し。このため駆動システムの収益急回復が見込まれる。

 

 金型システム事業は引続き中高級EV用金型について拡大が期待される。同社最大のであるユーログループは、テスラ向けで売上50%程度を占めると見られるが、テスラの24年生産は23年の184.6万台(35%増)から大幅に伸び率鈍化も200万台を突破する見通しで、小型クロスオーバーの生産を6月には開始する予定をアナウンスするなど、新モデル向け金型需要が期待される。テスラ以外にもBMW、VW、ベンツなど高級車メーカー向けにもモーターコアを供給しており、一部EV販売に減速感があるものの、新車種投入でアイテム数が拡大しており、25/3期も売上拡大を牽引しよう。しかも利益面ではLucid社の影響が薄れ、金型販売比率がさらに高まる見通しで、収益性がさらに高まろう。なお現在能力増強を行っており、イタリア本社で1億ユーロ投資し20%増、メキシコでは3億ユーロを投じ40%増、中国工場でも2億ユーロ投入し30%能力増強を図る計画が進行中。これらによりモーターコア生産は2025年に2023比倍増予定となっている。このため25/3期はモーターコア金型の売上拡大が加速しよう。

 

 全体を通じ25/3期は金型システムの収益本格拡大、主力の駆動システムの下期からの収益急回復から、全体収益も上伸が見込まれる。

 

 株価は24/3期会社減額予想EPS61.48円に対しPER20.8倍と、減額修正により東証スタンダード精密PER15.3倍に対し割高感がある。なおモーターコアの三井ハイテックのPER21.5倍に対しては若干割安感がある。24/3期は半導体製造装置向けの大幅減額、加えてドイツ工場移転の遅延のよる主力駆動事業の赤字転落など大幅減額となったものの、EV用金型システム部門が想定を上回る事業拡大となっており、25/3期は半導体製造装置向け、金型両部門で収益上伸が見込まれる。このため24/3Q2の減額修正発表で悪材料出尽くし感がありBPRも0.67倍と低く、中国ローカルのEV不振に影響されないEV関連として改めてポジティブ継続と考えたい。なお24/3Q3決算は2/16発表予定。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

 

 

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