豪ライナス・レアアース、米MPとの提携交渉が破綻 日本顧客など持ちメリット薄く

日本の経済産業省が出資するオーストラリア資源大手ライナス・レアアースは2月5日、自社ホームページ上で「米同業のMPマテリアルズコーポレーションとの提携交渉が破綻した」と発表した。レアアース産業の中国からの切り離しを目指す米企業との間で交渉が行われたが、日本顧客などを持つライナスにとってメリットが薄かった模様だ。
ライナスは発表で、「MPとの間で交渉が行われたが、それは既に継続案件ではなくなった」と明かし、その上で「企業としての成長を目指し次の機会を探り続ける」とした。
プレスリリース(英語): 02769053.pdf (weblink.com.au)
Mining.comなど外電の2月6日の報道によると、この交渉にはライナスの株主などからメリットを疑問視する声が当初から上がっていた。ライナスはマウント・ウェルド鉱山などでの採掘事業のほか、豪州のカルグーリーやマレーシア、米国などに精錬や加工の施設を持ち、製品販売先も日本政府という大型顧客を持つ、いわば垂直型のレアアース企業だ。もし提携がライナスにとってメリットがあるとすれば「現在のオーストラリア上場を廃止して、MPが上場する米国市場に株式上場先を切り替える」(Mining.com)ことくらいだが、株主としてはそれではメリットが薄いとの反応が多かったという。
一方でMPは米国では最大規模のレアアース採掘企業ではあるものの、加工は中国に委託している。2023年12月の中国政府によるレアアース加工技術の輸出禁止を受けて、中国からの事業切り離しを模索。ライナスとの提携交渉につながったとされる。
経済産業省は2023年3月、所轄の独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と双日を通じ、ライナスに2億豪ドル(約180億円)を追加出資した。これに伴い、ライナスが生産するジスプロシウムとテルビウムの最大65%を日本向けに供給する契約を結んでいる。
関連記事:重希土類 日本初となる権益獲得 JOGMECと双日が豪企業に出資 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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