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海運市場近況 航海混乱でアジアに船が回ってこず!

コンテナ船

 欧州航路における主要コンテナ船社によるスエズ運河迂回の動きが継続、スポット運賃の高水準が続いている。コロナ禍のような混乱を予想する声もあるが、今回の混乱は供給主導型で、コロナ禍の巣ごもりによる消費財の需要がけん引した需要主導型とは異なり、市場は徐々に正常化するという見方もある。

 

 スエズ経由から喜望峰経由となっているアジア・欧州航路の長距離化と燃料費を含む運航費用の増大が原因で、同航路のコンテナ運賃(スポット)が、2月10日からの中国での旧正月前の需要増と相まって、大幅に高騰した。現時点では若干収まりつつあるようだが、コンテナ船運航会社からするとコロナ禍後の正常化の流れのなかで運賃が低下し、船腹も余っていた状況の中では願ってもない状況で、ある海外メディアによると大手実荷主(BCO)と運賃の長期契約を結んでいるコンテナ船社の一部は大手実荷主の貨物より高額になっているスポット運賃での貨物を優先している、またはBCO貨物のロールオーバー(積み残し)があるとの一部報道もある。

 

緊迫する長期契約交渉

 コンテナ船社と荷主の間の運賃交渉ではかなりの緊張感が高まっているようだ。船会社は、紅海と依然として通航制限が続くパナマ運河の状況を背景としたスポット運賃の高騰を交渉に生かそうとするし、荷主は市場正常化に合わせた低運賃を求める。

 

 日本発北米向けのコンテナ輸出に際しても同様で、年初から春先にかけて交渉が行われるサービスコントラクト(SC)契約でも、早く契約を固めたい船社と運賃の軟化を期待する荷主との間でのせめぎ合いが生じているようだ。

 

サプライチェーン再構築を迫られている荷主

 その結果として、コンテナとコンテナ船がアジアに戻るのがかなり遅れている現象がみられている。アジアの荷主からすると、このような状況は初めての経験のようで、長い輸送時間を受け入れながらも、より早期の発注、在庫積み上げなど、サプライチェーンを再構築する判断を強いられている模様だ。

 

データで見る世界のコンテナ航路荷動き

 (公財)日本海事センターが1月30日に発表した主要コンテナ航路の荷動き動向(速報値)で実際の動向を見てみたい。

 

 北米往航(アジアから米国)は、前年比 13.2%増で 3 か月連続のプラス。2023年12月の北米往航運賃指数は、前年比 28.6%減の2,465ドル/40ftで19 か月連続のマイナス。

 北米復航(米国からアジア)は、前年比 1.3%増で 2 か月連続のプラス。

 

 欧州往航(アジアから欧州)は、前年比 8.8%増で9か月連続のプラス。2023年12月の欧州往航運賃指数は、前年比27.8%減の2,104ドル/40ftで19か月連続のマイナス。

 欧州復航(欧州からアジア)は、前年比 2.3%増で2か月連続のプラス。2023年12月の欧州復航運賃指数は、前年比 44.2%減の683ドル/40ftで20 か月連続のマイナス。

 日中往航(日本から中国)は、前年比 8.1%減で 21 か月連続のマイナス。金額ベースでは、前年比 3.2%減の 8,409 億円で 12 か月連続のマイナス。2023 年 12 月の横浜-上海間の運賃は、前年比 40.3%減の 508 ドル/40ft で 24 か月連続のマイナス。

 日中復航(中国から日本)は、前年比 3.2%減で 2 か月連続のマイナス。金額ベースでは、前年比 6.9%減の 1 兆 6,056 億円で 2 か月連続のマイナス。2023 年 12 月の上海-横浜間の運賃は、前年比 38.8 %減の 1,077 ドル/40ft で 12 か月連続のマイナス。

 

アジア域内でのコンテナ荷動きは?

 アジア域内航路でのコンテナの荷動きは、前年比 7.5%増の413.6万TEUで3か月連続のプラス。2023年12月のアジア域内運賃指数は、前年比 43.9%減の806ドル/40ftで16 か月連続のマイナス。

 

 さて、アジア全体にコンテナが回ってこないという点についてだが、上記の(公財)日本海事センターのデータを見る限り、北米航路と欧州航路の荷動き量の増加にもかかわらず、アジア域内での伸びがあまり大きくないということだ。これは筆者の推論であるが、供給側の船社からするとドル箱状態になっている航路に船腹過剰のコンテナ船をより多く配船することにより、昨年来の運賃収入減による穴を埋めているのではないか。勿論日中間のコンテナ荷動きが過去21ヶ月間に減少傾向にあることも大きな要因の一つであることには間違いないが。

 

バルチック海運指数

 定期船であるコンテナ船を見てきたが、不定期船はどうか?単なる海上運賃の指標ではなく、世界経済や商品価格の先行指標としても注目されているバルチック海運指数(Baltic Dry Index)、いわゆる外航ばら積み船の運賃指数で、ドライバルク部門の傭船料と海上運賃の総合指数においても、昨年2023年1月は909だったが、12月には2,538とほぼ3倍近くに達しようとしている。

 

 BDIは、ロンドンにあるThe Baltic Exchangeが発表しており、上限変動するが、2月16日現在では1,610と上昇傾向にあり、ある意味、世界経済の底堅さを示している。

 

日本発着の国際基幹航路を維持・拡大する重要性

 さて、コンテナ航路の話に戻るが、目下、日本を発着する国際基幹航路が少ないことは広く知られていることである。ここアジアでは上海と釜山をハブとする基幹航路編成になっており、日本の港はその中の一寄港地に過ぎない。

 

 折しもマースク(デンマーク))とハパッグロイド(ドイツ)の新アライアンス、ジェミニ・コーポレーションが発表され、将来的にはこの大規模船社同士のアライアンスが効率化の名の下、寄港地を選定・限定することが容易に予想される。くしくも、マースクは運航順守率という点では最優等生でる。

 

 我が国の主要コンテナ港湾も、我が国産業のサプライチェーンを強靭化するため、国際コンテナ戦略港湾を何年も前から打ち出しているが、世界の先進的な港湾には後れを取っているのが事実である。

 

 このような状況が続くと、日本におけるサプライチェーンが複雑化し、物流コストの上昇も招き、歓迎されることではない。

 

最後に

 今回の記事は国際物流に携わるMIRU読者らの現場での生きた貴重な情報を頂き書き上げたものである。読者からの様々な形でのインプットとフィードバックほど値千金なものはありません。感謝です。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

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