住友電工 レドックスフローバッテリーは日本国内、欧州で展開していく方向
3月1日まで東京ビッグサイトで開催されていた、日本国内最大規模の二次電池の研究開発・製造に関する展示会「BATTERY JAPAN 〜 第16回 [国際]⼆次電池展[春] 〜」で、住友電気工業株式会社にお話を伺いました。
住友電工は、大阪府大阪市に本社を置く住友グループの非鉄金属メーカーである。住友グループは世界トップシェアの製品を多数持ち、世界五大陸40カ国以上に約400社、国内企業第4位となる28万人超の社員を擁する。
1897年の創業以来、住友電工は豊かで夢のある未来の実現に向けて、イノベーションに挑戦し続けてきました。当時、ケーブルなど高級品は、そのすべてを輸入に頼っていた。そのような状態を憂いて、国のため、電線事業を開拓することを決意した。銅線、硅銅線の製造から始まり、国産初の高圧地下送電線ケーブルの製造、世界最長の海底ケーブルの製造・敷設にも成功するなど、日本の産業の発展を支える役割を担う。
展示会では同社のレドックスフロー電池について状況を聞いた。レドックスフロー電池は、バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池だ。電極や電解液の劣化がほとんどなく長寿命であり、発火性の材料を用いていないことや常温運転が可能なことから安全性が高いなど、電力系統用蓄電池に適した特性を持っている。このため、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を拡大していく上で必要となる系統の安定化技術として期待される。
また蓄電池を中心としたエネルギーマネジメントシステム(sEMSA®)やV2H機器等を展示した。担当者によると、sEMSA®は住友電工独自のアーキテクチャを搭載したエネルギーマネージメントシステムだ。普及が進む太陽光発電、コージェネレーションシステム、蓄電池などの分散電源を最適制御し、電力コスト低減を実現する。またアグリゲーターなどの電力サービス事業者に対しては、需要家を束ねてエネルギー資源を一括管理することで、バーチャルパワープラントなどで電力需要を調整し対価を得るシステムを構築できる。
「sEMSA-V2H」は、スリムな自立型のため駐車場などの、少ない空きスペースに設置可能だ。また、sEMSA-V2Hによる電力の変換損失が少ないため、EVの充放電を無駄なく行うことができる。更に、スマートフォンによる遠隔操作が可能である。今後、普及が進むと考えられるEVユーザーに対し、sEMSA-V2Hの提供を通じて効率的かつ経済的な充電、およびEVの大容量電池を生かした災害・大規模停電時の対策等を実現する。
担当者によると、住友電工は自動車関連製品、情報通信機器、電子部品、産業素材など幅広い事業を行っている。近年は従来の電線事業の他に光ファイバーの製造技術による光通信システム、粉末冶金、超硬合金、半導体材料などの新素材など、新分野の開発でも多くの実績を残している。製造業としては海外展開の最も進んだ企業の一つ。海外展開について、住友電工は日本を含む支社および関連会社は202社がある。そのうち、香港、台湾を除く中国は34社で、住友電工の海外支社が一番多い国が中国。
なぜ中国が選ばれたのか?担当者によると、照射架橋製品の好調で中国の市場を発見したという。照射架橋製品の海外市場展開は住友電工の中でも非常に早かった、事業開始当初から輸出を中心に東南アジア、北米、欧州市場の開拓を進めてきた。
その後、北米、欧州で現地生産のニーズが高まってきたことから、拠点は拡大し、電子ワイヤー事業では米国、ハンガリー、中国、ベトナム、マレーシアなど世界12社、ファインポリマー事業では米国、ドイツ、台湾、中国に製造販売拠点を有している。住友電工の照射架橋製品は世界の市場に供給されており、各国・各エリアで高い評価を獲得している。中でも注目されるのが、マーケットとして今後の大きな成長が見込まれる中国だ。中国市場へは、国内エレクトロニクスメーカーや自動車メーカーの中国現地生産に伴い進出を果たした。
まだ、住友電工は中国市場での展開は当初、日系メーカーへの製品供給が中心であったが、近年はその取り組みは大きく変わりつつある。かつて中国は世界の工場として存在感を示していましたが、現在は自動車産業をはじめ、現地メーカーがプレゼンスを発揮しつつある。同時に、高品質・高機能の製品へのニーズが高まっている。そうした市場の変化の中、日系メーカーとの協力関係を一層強化するだけでなく、中国国内メーカーの開拓を積極的に進めている。中国市場開拓は、今後住友電工の照射架橋事業を占う試金石となりそうだ。
ただ、レドックスフローバッテリーの中国展開については、中国にはすでに大規模なレドックスフローバッテリーの設置が有り、メーカーも数多く乱立状態。価格競争では勝ち目はなく、電解液も中国から調達している。住友電工としては、日本、欧州など、適正な入札を行うところで市場開拓を図りたい考え。
(趙 嘉瑋)
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