金と鉄鉱石が明暗 金高値も鉄鉱石100ドル割れ接近、中東不安と中国経済の懸念継続で
金と鉄鉱石の値動きに明暗が分かれている。ニューヨーク商品取引所(COMEX)で金先物価格は4月2日に一時1トロイオンス=2287.5ドルと3日連続で過去最高値を更新した。一方の鉄鉱石価格は4月2日に1ドライトン=102.5ドルに下げ、節目の100ドル割れが迫る。
■23年下期は似た値動きだったが
過去1年間のNY金価格と鉄鉱石価格の推移($/toz)($/Dryton)
金と鉄鉱石は、2023年下半期はおおむね同じ展開の値動きだった。世界的な製造業不振に伴う景気懸念は金や鉄鉱石を含む金属全般の売り材料だった。
しかし、2023年10月のハマスによるイスラエル襲撃を機に中東の政情不安が高まると、安全資産としての金相場が一気に押し上げられた。一方、不動産市況の改善が見えない中で中国経済の低迷が長期化するとの懸念は日に日に強まり、鉄鉱石価格には下押し圧力が続いている。
■国内金も快進撃、1万2000円台に
金相場の快進撃はとどまるところを知らない。国内金も上昇しており、田中貴金属工業の日次データで、金の買い取り価格は3月6日に前日比168円高の1万2298円/gと連日で過去最高値を更新した。3月末に節目の1万2000円に乗せた後も快進撃が続く。miruのデータでも国内金(山元建値)は4月3日に1万995円/gを付けた。
過去3か月間の国内金価格の推移(山元建値)(JPY/g)
■鉄鉱石、中国3月のPMIは改善も不動産への不信根強く
中国国家統計局が3月31日に発表した中国の3月の製造業景況感指数(PMI)は50.8と2023年9月以来ほぼ半年ぶりに好不況の境目である50を上回った。
中国のPMIの推移
(出所:中国国家統計局)
しかし、米ブルームバーグ通信の4月2日報道によれば、これは電気自動車(EV)をはじめとするハイテク産業の回復によるもので、不動産や消費の回復には及んでいないのではないかとの懐疑的な見方が根強いという。中国当局は不動産不況を解決する意思は持っておらず、EV産業などに注力するという構造的な経済方針の変化を見ている関係者が多いとされる。
中国の鉄鋼大手の馬鞍山鋼鉄が3月28日に発表した2023年決算は13億2700万元の最終赤字で、赤字額は前の期の8億元から拡大した。中国の鉄鉱石需要の多くが建設関連であり、鉄鋼企業の苦境は同国の不動産不況の傍証になる。世界の鉄鉱石トレーダーは中国景気の先行きに懐疑的な見方を捨てきれず、鉄鉱石価格は浮かび上がれずにいる。
(IR Universe Kure)
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