錫価格が急騰 18日に前日比4%高、地域紛争背景の投機買いで1年10ヵ月ぶり高値
錫価格が急騰している。ロンドン金属取引所の錫価格は4月18日に現物が$3万4025/tonと、前日($3万2640)から4.2%上昇した。2022年6月以来およそ1年10か月ぶりの高値水準となる。銅やアルミ、金などの金属価格が高騰する中、ミャンマーやコンゴなどでの地域紛争の継続を背景に錫にも投機的な買いが入った。
過去3年間のLME錫価格の推移($/ton)
4月18日の現物価格は同日の3か月先物価格($3万3710)を上回った。このため、トレーダーの間では「スクイーズ(損切り価格を押し上げるために大口の買いを仕掛けること)のように見える。ショート(売り持ち)ポジションがかなりあるようだ。おそらく、金属を必要としない人なのだろう」(4月19日の米ブルームバーグ通信の報道)との見方があり、実需を伴わない投機的な買いとの見方が出ている。
もっとも、実際の供給懸念も存在している。錫を巡っては2023年夏に主要生産国であるミャンマーのWa州が採掘を停止し、供給が細る状態が続いている。ミャンマーでは4月に入り東部のタイとの国境沿いで国軍と少数民族武装勢力の戦闘が激化しており、東部カイン州では武装勢力「カレン民族同盟(KNU)」が4月11日に主要都市ミャワディ制圧を宣言した。政治情勢の不安定化で、錫の採掘再開が先延ばしになるとの見方につながっている。
関連記事:ミャンマー Wa州 2023年8月からの錫採掘停止を発表 | MIRU (iru-miru.com)
また、同じく生産国の1つであるコンゴ民主共和国(DRコンゴ)の北キブ州でも、長年紛争が続く。
LMEでは過去半年間ほど錫の在庫も減少方向だ。4月19日のロイター通信は「先行きの供給懸念から在庫が引き出されている」とのトレーダーの声を伝えた。
LME錫在庫の推移
需要面では、錫の主な供給先の1つである半導体産業は回復傾向にある。錫は需給バランスが崩れつつあるようだ。
(IR Universe Kure)
関連記事
- 2025/07/11 銅高に連れてLME亜鉛続伸、国内建値24円引き上げ、469円に
- 2025/07/10 米関税政策不安でLME銅は続落、国内銅建値20円引き下げの1,470円に
- 2025/07/08 酸化スズ輸入Report #23 2025年輸入増加中 2019年以来の多い輸入量
- 2025/07/08 スズ地金輸出入Report #111輸入 2025年輸入量増加基調続く
- 2025/07/08 鉄鋼・非鉄関連会社の決算発表予日定一覧:最終版
- 2025/07/08 米関税政策不安とドル高でLME亜鉛軟化、国内建値6円引き下げ、445円に
- 2025/07/07 亜鉛地金輸出Report #76 インド向け輸出量4N以上減少するも4N未満増加続く
- 2025/07/07 欧州株安などでLME銅は軟化、国内銅建値10円引き下げの1,490円に
- 2025/07/06 LME Weekly 2025年6月30日-7月4日 ニッケルのぞいて揃って下落 トランプ関税不安が重し
- 2025/07/04 鉛・亜鉛大手Nyrstar 豪州で製錬所複数閉鎖の危機 政府に早急な支援要請