アドテックプラズマテクノロジー(6668)24/8H1決算メモ ポジティブからニュートラル
24/8H1は18.5%減収61.8%営利減で大幅減額着地、通期13.6%減収51.0%営利減に減額
株価(4/19)1301円 時価総額111億円 発行済株8,586千株
PER(24/8期DO予:16.3X) PBR(1.02X) 配当予20円 配当利回り1.5%
要約
・24/8H1は18.5%減収61.8%営利減で大幅減額着地、受注29.5%減、受注残31.8%減
・24/8期半導体の回復見込めず大幅減額し13.6%減収51.0%営利減予想に
・25/8H2に半導体、光学薄膜向け受注本格回復も収益回復は道半ば、26/8期伸長期待
24/8H1は18.5%減収61.8%営利減で大幅減額着地、受注29.5%減、受注残31.8%減
24/8H1決算が4/12に発表され4/18にWEB説明会が行われた。24/8H1は売上高47.84億円(期初計画比8.16億円未達、18.5%減)、営業利益3.59億円(同5.11億円未達、61.8減)、受注38.54億円(29.5%減)、受注残高67.62億円(31.8%減)と、半導体製造装置の不振で収益低迷。
事業別に半導体・液晶関連事業が売上高44.65億円(17.6%減)、営業利益3.71億円(58.1%減)、受注35.82億円(27.6%減)、受注残高58.13億円(36.5%減)。
半期での地域別売上では、日本が18.03億円(38.4%減)と、エッチャー向けの不振が続き、一部で製品出荷時期の後ろ倒し要請なども影響、厳しい環境。成膜装置向けもスパッタ系で受注はあったが売上はほとんど無い状況に。一方、海外は29.81億円(1.4%増)と健闘、アジアが20.71億円(5.9%増)となった。中国が5.55億円(13.7%増)、韓国4.24億円(2.29倍)、台湾も1.54億円(8.5%増)、ASM向けシンガポール他は9.38億円(17.7%減)とALD装置向けが一服も、他が補った。米国は7.30億円(8.3%減)と製造装置向けが減少。受注面では12月に月次10億円を超えたと見られるが1月に12月比半減、2月も低調。しかも12月は成膜でのスパッタ装置受注を除くと半導体向けは底バイが続いているとのこと。特に国内が半導体製造装置メーカーでの在庫調整が完了しておらず、大幅減。一方で中国、台湾、韓国とも受注金額は小さいが倍増以上の状況となった。利益面では減収影響に加え、長納期で受注当時比較し部材等の高騰影響があり、加えて設備投資増による減価償却費2.25億円(56.3%増)なども負担増となり大幅減益に。
IDX部門は売上高3.19億円(29.0%減)、営業損失0.47億円(0.72億円悪化し赤字転落)、受注2.72億円(47.3%減)、受注残9.48億円(25.6%増)と、シリコンウエハ引上用装置向け売上は堅調も、保守サービスの低迷などが響く。
24/8期半導体の回復見込めず大幅減額し13.6%減収51.0%営利減予想に
24/8期会社予想は半導体の回復が見込めず大幅減額修正し、売上高108億円(期初計画比20億円減額、13.6%減)、営利11億円(同13億円減額、51.0%減)、経常利益10億円(同13.3億円減額、56.4%減)、税引利益6.90億円(同10.1億円減額、58.9%減)予想とした。足元でQ3スタートの3月受注は10億円レベルに回復しているが、12月同様、スパッタ装置向けの受注があり、半導体向けの回復ではないとしており、慎重にみているとのこと。特に日本の製造装置メーカーからの受注は全く期待薄とのこと。一方、中国向けは金額が小さいながら引合いは旺盛。但し同社として中国への進出が他社比5年遅れたとの認識。中国でのシェアは2%しかなく、受注倍増でも半期10億円レベルとのこと。しかも今後、中国でRF電源メーカーは育ちつつ有り、中国半導体製造装置向けは国産使用の動きもあり、大きく伸びるとは考えにくいとした。
現状、同社に最も影響のあるエッチング装置が、メモリの落ち込みでメモリ設備投資が進まず、受注の底バイ状況から脱していない。また中国向けで出遅れた影響も受注が鈍い要因。利益面では2024年2月段階でグループ生産が504台、生産能力比38%水準。それでも次回の半導体需要拡大に対し、生産体制強化に取り組んでおり、利益面ではコスト増もあり収益性が大きく低下している。このため、今回の会社減額修正について、ほぼ計画通りの収益に止まるとみられる。
25/8H2に半導体、光学薄膜向け受注本格回復も収益回復は道半ば、26/8期伸長期待
25/8期は国内のエッチング装置向けで受注回復の本格化は下期になるとみている。しかも多用されるフラッシュメモリの設備投資の回復が一番遅れる見通しから、同社収益も25/8H2の本格回復にずれ込もう。このため新設したベトナム第2工場についても、当面、板金加工、基板実装、ヒートシンク加工など中心の業務に止まり、現状数十名の人員で内製化アップの運営を行っているとのこと。第2工場の建屋をフルに使えばベトナム工場の現有の800台の能力を3倍の2400台まで拡張可能も、現在の受注台数では第1工場で十分間に合っている。25/8H2に受注が増加し月産1000台程度の生産が必要となれば、第1工場で600~700台、第2工場で1/3のスペースを利用して300~400台生産する形を見込んでいる。このため、第2工場がフル稼働するのは29年度になると想定している。
25/8期以降について、半導体向けの拡大のポイントとして4/12の24/8H1決算に合わせ、高速RF制御システムである「マークファイブ(Mark5)」をリリースした。同システムこれまで一部アナログ制御があった従来機に対して、フルデジタル制御で開発された。具体的に高周波電源・インピーダンス整合装置・周辺計測機器の全てに共通利用可能な基幹制御システムであり、開発に6年を要したシステム。特徴として業界最速レベルの電力制御頻度を実現。従来機に対し1000倍以上の電力制御高速化を実現、これまでに無い安定したプラズマ放電を可能とした。またユーザーのオリジナルパターン波形も高精細に制御可能となった。さらに従来のアナログ制御では高周波電力供給に必要とされる連続出力、パルス出力、アークハンドリング、周波数チューニングについて、ばらばらな制御がなされていたために各機能を同時に満たすことが難しかった。しかしフルデジタル制御で主要機能を全て搭載するオールインワンモデル製品となったことで、より高度なエッチングや成膜が可能となる。このためMark5のターゲットとする市場は出力10KW以下の製品構成で、3ナノ以降の最先端デバイスで必要とされるとしており、現状では世界トップ性能を有するとのこと。現在評価用に3台を出荷済みで、量産化は2年先を見据えている。加えて市場が大きいリモートプラズマ向けではマイクロ波電源ユニットをリモートプラズマ装置メーカー向けに供給を始める予定。なお、最大手ユーザーのALD装置最大手ASM向けでは、AI半導体の需要急拡大でALD需要の急回復が見込まれる。特に先端ロジックでは構造が3次元構造FinFETから更にGAAへ移行する中でALD利用頻度が大きく増す見通し。既にASMは23/12H2にGAAパイロットプラント向け受注を獲得している。GAAはチャネルを全方向から囲むゲートを持つデバイス構造となっており、製造工程で厚さと均一性を正確に制御する必要があり、非常に薄く均一な材料層を高精度で堆積できるALD装置が必要不可欠な装置となる。GAAへの移行でASMはALD装置の新たな市場を4億ドル獲得できるとしてALDシェア55%以上を確保すべく生産能力を引上げる計画で、同社への需要も大きく伸びよう。
IDXにおいては、民需としてバイポーラ電源の出荷が始まり100台を超す台数を納入した。今後、5月には新たに30Kw電源を評価機として投入予定で、次世代スマホのスパッタ装置用DC電源としてRF電源とペアで売上計上するとしている。また蒸着用ではイオン装置用電源として25/8期に投入予定など、25/8期には民間向けの比率が高まり、27/8期には民間向けが官公需を上回る規模になるとしている。
全体を通じ、25/8H2には先端半導体製造装置向けの拡大、次世代光学薄膜製造装置向け、さらにIDXも収益回復が進み、26/8期は再度最高益更新が期待される。
株価はメモリの不振などで収益の悪化が続いていたものの、AI半導体などの話題も有り全体相場の回復の中で1/5には1850円の年初来高値更新となった。しかし1/12のQ1決算の悪さを織込み株価は急落、その後多少戻していたが4/12の大幅減額修正も有り4/19には1281円と年初来安値更新、2023年4/17の安値1269円に近づいてきた。現状、24/8期修正会社予想EPS80.62円に対しPER16.1倍はRF電源最大手のダイヘン14.0倍、3位の京三製作所8.5倍に対し割高感が出ている。また同社高値PER平均が14.6倍であり、この点でも割高感があるが、PBRでは1倍水準で、下値リスクは限定的と見られる。現状、中国向けの進出遅れが痛手で収益の回復が遅れており、25/8H2の本格回復、26/8期には再度最高益更新が期待されるものの、24/8H2受注のボトム確認が不透明なため、一旦、ポジティブからニュートラルに評価を落としたい。
(H.Mirai)
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