チリのリチウム開発、政府主導の色強める 中国企業の関与は当初想定よりも縮小か
チリのリチウム開発が政府主導の色を強めている。同国は2023年4月に政府主導でのリチウム産業発展の方針を示し、同年末には国営資源のコデルコが民間リチウム大手のSQMと協業の覚書を交わすに至った。SQMには中国リチウム大手の天斉リチウム業が第2位株主として出資するが、影響力は限られそうだ。
■アタカマ塩湖のリチウム収益、2031年に85%が政府に還元か
Mining.comなどの外電は4月25日、コデルコのマキシモ・パチェチョ会長が前日のプレゼンテーションで、SQMとの提携が透明性に欠けるとの指摘に対し「取引の透明性は十分で、チリの国益に有益なものだ」と反論したと伝えた。
コデルコは2023年12月末、SQMとの間で世界第2位の広さを持つアタカマ塩湖でのリチウム共同開発について、官民パートナーシップに関する覚書(MOU)を締結した。コデルコは同塩湖の鉱区の所有権を持ち、SQMはそれをリースして開発するスタイルを採っている。
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2023年4月にチリ政府が政府主導でのリチウム開発方針を示したため、コデルコは政府を代表してSQMとの関係を強化。両社は現在、5月31日を期限として具体的な協業体制について協議中で、ロイター通信の4月24日報道によれば、パチェチョ会長は「2025年から2030年に同塩湖からの収益の70%を州に還元し、還元率は2031年以降に85%に引き上げられる」との政府の考えを明かしたという。
■天斉リチウム、2018年にSQMの第2位株主に
ややこしいのは、SQMには中国の天斉リチウム業が出資していることだ。天斉リチウム業は2018年に40億ドル(約6100億円)を投じてSQMの発行済み株式約24%を取得し、同社の第2位株主に躍り出た。中国で普及が進みつつあった電気自動車(EV)向けバッテリー材料需要を見越し、チリでの事業拡大を目指した。
しかし、前述のようにチリ政府は方針を大転換。収益の7~8割が政府に還元されるとなれば、天斉リチウム業としては目算が狂うことになる。このため、天斉リチウム業はSQMに対し、コデルコとの交渉の不透明性を訴え、4月24日にも株主総会を開くように要求した。
SQMは株主総会を開いたようだが、結果はまだ公表されていない。しかし、政府方針であるからには、株主総会でどうなることもないだろうというのが大方の見方と伝わっている。
折しも天斉リチウム業は、リチウム価格下落による業績悪化にも直面している。同社は4月23日、2024年1~3月期純損益が36億~43億元(約770億~920億円)の赤字になる見通しだと発表した。
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■チリ、10年でリチウム生産倍増を目指す
チリ政府は4月20日にリチウム生産の長期計画も発表した。上海有色網(SMM)によると、2030年までにリチウム年産量を現在の25万トンから7割増やし、10年後には倍増させる計画という。アタカマ塩湖は、マリクンガ塩湖と並びその主導的な生産拠点に指定されている。
(IR Universe Kure)
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