バナジウム市場近況2024#3 やや持ち直す 中国需要に明るい兆し、本格反発はまだ
2024年5月上旬までのバナジウム価格はやや持ち直している。五酸化バナジウム、鉄鋼向けのフェロパバナジウムはともに4月下旬に底を打ち、5月に入ってからは小幅に上昇している。中国需要に明るい兆しが見えてきたことが背景にあるが、本格反発と言うには心もとない。
過去3か月間の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)
五酸化バナジウムは4月25日に仲値$4.735/lbと、節目の$5を割り込み、2016年末以来8年近くぶりの安値を付けた。5月に入り$4.915に戻しているが、なお$5を下回る水準で取引されている。
バナジウムは生産・消費ともに中国の比重が大きい。中国の5月のメーデー(労働節)大型連休前に持ち直した格好になるが、Ferroalloynetによると、「(取引先である)合金工場の稼働率は低く、連休前から取引のペースは鈍化している」のが現状で、価格は持ち直しても取引は少なかったようだ。
過去3か月間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
鉄鋼向けのフェロバナジウムも4月半ばから下旬は仲値$26/kgでの低空飛行が続いた。5月に入り$26.25と小幅に上げたものの、4月上旬の水準である$26.75に届いていない。中長期で見ても2023年末以来の低価格が続いており、2024年に入ってから反発できなかったことになる。
Ferroalloynetは「中国の製鉄所の一部が入札を開始したが、川下の需要の弱さは変わっていない」と指摘した。
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4月25日
Ferroalloynetが4月25日に中国税関のデータから算出したところによると、2024年1-3月期の中国の五酸化バナジウムの輸入量は約1040トンで、輸出(798トン)を上回り、純輸入国となった。中国は2019年まではバナジウムの輸出国だった。
近年は、特にロシア産の安いバナジウムの輸入が増えているという。
中国のロシア産バナジウム輸入の推移
(出所:Ferroalloynet)
4月23日
南アフリカのバナジウム生産企業であるブッシュベルト・ミネラルズが4月23日に発表した2024年1-3月期のバナジウム生産量は498mtVと記録的な多さだった。特に3月に200mtVと大幅に増えた。
ブッシュベルトは世界の主要なバナジウム加工施設のうち2つを所有するバナジウム大手。ロンドン株式市場の新興企業向け市場であるAIM市場に上場している。
プレスリリース:polaris.brighterir.com/public/bushveld_minerals/news/rns/story/w6351gw
(IR Universe Kure)
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