タングステン市場近況2024#6 総じて下落 中国査察終了でピーク越え
2024年6月のタングステン市場は総じて下落している。中国の環境査察が終了したことで過度な供給ひっ迫懸念が後退し、過去最高値圏にあった中国の鉱石価格の上昇がピークを越えた。これまで鉱石価格につられて上昇していた他の形態にも下落の流れが波及し、全般に一服感が広がっている。
■中国の査察期間、6月中旬に終了
過去3か月間の中国内外のタングステン鉱石価格の推移(WO3 65%)(RMB/mt) ($/MTU)
中国で5月初旬に本格的に始まった当局の環境査察は約1か月間の実施期間を経て6月中旬に終了した。査察に伴いタングステン鉱山の一部が一時操業を停止したと伝わったことで中国の鉱石価格が過去最高値圏に上昇していたが、5月23日仲値のRMB15万6500/mtをピークにこれも一服。段階的に値下がりし、6月20日にはRMB14万5500まで下げた。
国際鉱石価格も中国価格に追随している。タングステン鉱石の国際価格は6月6日に$272.5/MTUと、2022年4月以来ほぼ2年ぶりの高値に上げたが続かず、6月20日からは$262.5で推移している。
■川下の取引先が調達控え
過去3か月間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)
ベンチマークであるタングステンAPTの国際価格は6月6日に仲値$347.5/MTU と、2022年6月以来約2年ぶりの高値を付けた。その後は値動きなく横ばいが続く。
世界的な製造業の低迷が長引く中で需要が本格的に回復したわけではないこともあり、タングステン価格上昇は、そもそも長続きするものではなかったようだ。上海有色網(SMM)は6月122日付のレポートで「過去半年間にわたるタングステン価格の上昇で、川下の取引先の間で調達を控える動きが広がった」と指摘。相手先の取引控えを受け、「多くのタングステン販売業者が、先物価格の引き下げに動き始めた」と伝えた。
■炭化タングステンとタングステンバーも値下がり、
中国市場の比重が大きく鉱石価格に追随して値上がりしていた炭化タングステンとタングステンバーは下落に転じた。
過去3ヵ月間の炭化タングステン価格の推移(99.7%min 2.5-7.0um Fob China)($/kg)
過去3か月間のタングステンバー価格の推移(w-4 99.9% China)($/kg)
炭化タングステンは5月23日の仲値$47.25/kgがピークとなった。6月20日には$45.45と1か月弱で4%近く下落。タングステンバーも5月16日に仲値$48.5/Kgを付けた後、6月13日に$48へと小幅ながら下げた。
■酸化タングステンやフェロタングステンは動き鈍く
唯一、酸化タングステンは上昇した。
過去3か月間の酸化タングステン価格の推移(Wo3 99.99%min FOB China)($/MTU)
酸化タングステンは6月6日に仲値$357.5/MTUと2023年2月以来の高値に上げた。これまでの鉱石価格の上昇に対し出遅れ感があり、APTに追随してここにきて買われている。ただ、APTと同じくその後は値動きがない。
過去3か月間のフェロタングステン価格の推移($/kg)
フェロタングステンは横ばい。5月23日に付けた仲値$47/kgから1か月以上動きがない。水準としては2022年6月以来2年ぶりの高値圏にある。
(IR Universe Kure)
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