京三製作所(6742)24/3期WEB決算説明、有報メモ ややポジティブ継続
25/3期信号事業拡大と半導体向け回復で19.1%増収、営利2.3倍予想で営利最高益予想
株価(6/24)658円 時価総額421億円 発行済株62844千株
PER(25/3期DO予9.4X)PBR(0.85X) 配当(25/3予)20円 配当利回り:3.0%
要約
・24/3期信号システムの一部案件繰り延べで2.5%減収、12.9%営利増と計画未達成
・25/3期は信号事業拡大と半導体向け回復で19.1%増収、営利2.3倍予想と営利最高益予想
・26/3期以降もインド等の信号システム需要の拡大、半導体関連電源拡大で収益拡大期待
24/3期信号システムの一部案件繰り延べで2.5%減収、12.9%営利増と計画未達成
24/3期は売上高705.52億円(9/15修正予想比50.75億円未達、2.5%減)、営業利益24.91億円(同7.09億円未達、12.9%増)、経常利益32.59億円(同5.41億円未達、21.5%増)、税引利益34.34億円(同1.66億円未達、65.8%増)、受注高736.44億円(同66.44億円増額、4.8%減)、受注残高109406億円(同107.20億円増額、2.9%増)と、収益計画未達成、受注大幅増額で着地した。
部門別では信号システム事業が売上高60371億円(同33.29億円未達、6.6%増)、受注高621.66億円(同81.66億円増額、5.9%減)、受注残高1033.25億円(同103.94億円増額、1.8%増)、営業利益74.15億円(同1.65億円増額、38.3%増)となった。売上高では海外案件の期ずれで海外売上162.79億円(同50.30億円未達、2.0倍)が影響、一方で国内は488.03億円(同10.03億円増額、5.7%減)。利益面で23/3期は子会社の退職給付債務計算の変更分5億円が一時費用としてあり、実質26.5%増となるが、コスト削減効果などが寄与している。受注は23/3期に大型案件など一部で部品の長納期化を受けて前倒し発注された反動もあり全体では減少も、東急目黒線ATC地上装置やマカオLRT延伸関連、米国オーランド国際空港APM向け信号システムなど高水準の受注を維持、計画を大きく上回った。なお海外案件の納期ずれから受注残高は1000億円の大台越えとなった。
パワーエレクトロニクス事業は売上高101.53億円(同18.47億円未達、35.3%減)、営業損失2.85億円(同13.5億円未達、21.37億円悪化し赤字転落)、受注高114.78億円(同15.22億円未達、1.3%増)、受注残高60.81億円(同3.28億円増額、27.9%増)に。同部門は22/3Q3の受注54.97億円をピークに23/3Q3には17.61億円まで減少、その後多少戻し、24/3Qでは48.79億円まで盛り返すも、24/34では再度落ち込み18.05億円と低迷した。但し売上では24/3Q1をボトムに前四半期比増が続いている。また利益面では24/3Q4で大幅な収益率改善となっている。この背景には半導体製造装置向け電源の回復が挙げられる。同社は四半期での仕向け先を開示していないが、半期での推移をみると24/3H2の半導体関連受注が49.81億円(同期比2.5倍、上期比45.6%増)となっており、売上で41.05億円(同期比14.5%減、上期比51.7%増)となっており、24/3Q4では受注増による売上増が寄与し始め、利益も大幅な回復を見せたとみられる。
営業利益(22億円→25億円)の増減要因では、効率化で販管費の減5億円が寄与、これに対し減収影響で3億円、部材費高騰などで原価率悪化から0.3億円減が影響したとしている。
25/3期は信号事業拡大と半導体向け回復で19.1%増収、営利2.3倍予想と営利最高益予想
25/3期は売上高840億円(19.1%増)、営業利益57億円(2.3倍)、経常利益60億円(84.1%増)、税引利益44億円(28.1%増)、受注高770億円(4.6%増)予想とした。同社は「中期経営計画2025」で25/3期に売上高850億円、営利60億円を目指すとしていたが、同計画に対して売上高で10億円、営業利益で3億円、受注高で80億円未達予想となるものの、営利で18/3期の50.71億円を抜いて営利最高益更新予想となっている。
部門別では信号システム事業が売上高680億円(12.6%増)、営利95.46億円(28.7%増)、受注高600億円(3.5%減)予想。受注は国内堅調、海外は大型案件がなく、豊富な受注残高の消化を進めることから採算も勘案して減少見通しとしている模様。売上では豊富な受注残高を抱えており、前期の納期ずれも寄与、計画に沿って2ケタ売上増が見込まれる。
パワーエレクトロニクス事業は売上高160億円(57.6%増)、営利20.07億円(前期比22.92億円増加し黒字転換予想)、受注は170億円(48.1%増)を見込む。売上面では半導体製造装置向けが下期に急回復を想定している。同社の半導体装置向けは大半が東京エレクトロン宮城で占められるが、24/3期については東京エレクトロンの売上に占めるエッチング装置の構成比がメモリ不振で低下、その影響もあってか、同社、ダイヘン共に在庫調整も含め東京エレクトロン全体の売上減を上回る減少を余儀なくされた。しかし25/3期については下期にメモリの回復が見込まれており変化率も高まっている。エッチング装置向けも下期本格回復見通しから、年度で受注138.41億円(64.7%増)を見込み、売上高は130.19億円(91.1%増)と急回復見通しとしている。一方、東京エレクトロンFPD向けRF電源は受注低迷でボトムを打つものの27.22億円(6.7%増)想定は22/3期の44%水準に止まり、売上は24.34億円(5.8%減)と減少見通し。通信設備他は投資一巡で、鉄道用電源システムを信号システム部門に組み替えたことも有りさらに縮小見通し。
全体の営業利益57億円(32億円増加)の要因分析として、増収効果27億円、リードタイム短縮や部品の標準化など原価率改善23億円のプラス効果に対し、売上増に伴う営業費用増、研究開発費増、その他経費抑制も販管費増18億円のマイナス効果を見ている。
現状、中計2025との比較で信号システムは3年間累計で受注が1882億円見通しと計画177億円上振れる見通しで好調な推移。内訳では私鉄での大型受注獲得が寄与している。一方、売上面では63億円上振れる見通しも、海外の納入期ずれなどの影響、私鉄についても納期が長納期にわたるものがあるために、受注残高が大きく膨らむ形となっている。このため、26/3期以降も売上拡大が見込める。なお利益の中計予想はなかったものの、累計で223億円となっており、営業利益についても24/3期までの累計で計画を若干上回ったとみられ、3年累計では計画値を上回とみられる。
一方のパワーエレクトロニクス事業は3年間累計で受注が398億円見通しと計画比177億円未達予想となり、売上も信号システムと異なり目標418億円に対し短納期のため170億円未達予想に。基本的にFPDの不振は想定より多少下振れた程度も、半導体関連がメモリ不振で東京エレクトロン宮城向けエッチング装置用DO電源、一部RF電源の不振が直撃した形となっている。利益面でも全体3年累計営業利益で42億円未達成予想となっているが、ほぼこの減額分より多少上回る利益未達成予想となったとみられる。
なお25/3期下期以降、本格的な半導体製造装置受注の回復から、在庫の適正化も進んでいると見られ、さらに26/3期はメモリの回復が本格化、微細化需要でエッチング工程の工程数も増加するとみられ、米国向けエッチン装置用RF電源の本格納入も期待される。26/3期には18/3期売上高199億円を抜き過去最高水準を超え利益も当時の33.74億円に近づこう。
全体として、25/3期は信号システムの好調持続、半導体関連の下期からの本格回復が十分見通せるため、25/3期会社予想は達成可能で営利最高益更新が期待される。
26/3期以降もインド等の信号システム需要の拡大、半導体関連電源拡大で収益拡大期待
26/3期以降については、信号システムについて豊富な受注残高の消化が進むほか、インド等の海外案件の拡大(インド鉄道省 RDSO から日系信号メーカーとして初めて 型式認証を受けた信号システムであるK5BMC型電子連動装置がインド国鉄向け「901駅」で使用、貨物線やメトロなども含めると916駅で使用開始済みで、今後も受注拡大を見込む)で、25/3期は1100駅、26/3期には1340駅程度に設置される見通しにある。なお2024年6月時点で、インド国鉄全体の約30%の駅に電子連動装置が設置され、設置駅数は約3,000駅に達する。主要幹線や都市圏を中心に導入が進んでいるが、今後5年間で設置駅数を倍増させる目標を掲げており、中期的にも需要増が期待される。
国内も引き続きホームドアの設置が続こう。同社は24/3期、売上では京王電鉄井の頭線向け可動式ホーム柵、受注ではJR東海名古屋駅向けホームドアなどが紹介されているが、2024年現在、全国の鉄道業者へ「242駅」、「13354開口」を納入している。今後は関西中心にホームドアの設置が継続しよう。加えてローカル鉄道路線の自動運転走行などニーズが高まろう。具体的には南海電鉄和歌山港線において自動運転走行試験を実施している。南海電鉄の「自動列車停止装置(ATS-PN)」と、京三製作所と共同開発した「高機能型の自動列車運転装置(高機能ATO)」を組み合わせた自動運転システムの安全性、運転士が運転する際と同等の目標速度への加速・減速、停止精度等を検証、試験結果を踏まえ、目標とする線区(高師浜線および和歌山港線)での自動運転実現に向けて検討していく予定となっている。また自動運転については24年4月に川崎市が自動運転の実装に向けた取組を多様な主体との連携・共創により推進するため、「川崎市自動運転実装推進協議会」(以下、協議会)を設立、これに工場の地元企業として参画している。これは川崎市が深刻化する運転手不足の影響などで路線バスの減便が相次ぎ、市民生活への影響や都市の利便性が著しく低下する懸念を抱えていることを踏まえ、持続可能な地域交通環境の形成、都市部における自動運転バスの実装を目指し自動運転バス実証実験を行うもの。いずれにしても、今後、MaaS対応などへも事業拡大が期待される。
一方のパワーエレクトロ事業は、半導体の生産拡大に伴い、東京エレクトロンエッチング装置向けのDC電源とRF電源の納入シェア拡大が見込まれる。さらには米国エッチング装置大手へのRF電源の本格拡大が見込まれる。エッチング装置は、2024年に238億ドル市場が見込まれ、2029年には343億ドルまで拡大する予想が出されている。最新の半導体では高アスペクト比のパターン形成によりプロセスが複雑になり、エッチングには複数の高周波電源が、プロセスチャンバー内のプラズマ生成と制御をウェーハ上のパターンエッチングと同時に実行している。複数電源とインピーダンス整合ネットワークを組み合わせエッチングの変化にほぼ瞬時に対応してプラズマに電力を伝達し、プロセス電力をできるだけ低く抑えながらスループットを最大化する重要な装置となる。エッチング工程数が増す中で電源装置の使用個数は装置の伸びを上回るとみられ、同事業も半導体製造装置向け中心に収益上伸、収益性も高まることが期待され、26/3期も収益拡大から連続営利、経常利益最高益更新が期待される。
株価は25/3期会社予想EPS70.16円に対しPER9.4倍はプライム電機平均PER23.2倍に対し、営利最高益更新予想企業ながら割安感がある。また日本信号11.4倍に対して多少割安感があり、半導体RF電源国内最大手のダイヘン16.8倍、2位のアドテックプラズマ17.6倍と比較し割安な水準にある。現状、同社は信号事業の性格上、上期までは確実に営業赤字となる業態で有り、当面は追加の好材料が出にくい局面にある。しかし営業利益最高益更新期待と今下期からの半導体製造装置向け需要急回復を勘案、PBR0.85でもあり、従来のややポジティブを継続する。
*ダイヘン(6622)、アドテックプラズマ(6668)、東京エレクトロン(8035)との比較
(H.Mirai)
関連記事
- 2025/06/16 電子部品輸出入Report#120金属製磁石輸入 2025年輸入量増加
- 2025/06/16 光ファイバ輸出レポート#6 昨年の落ち込みから一転2025年輸出量増加
- 2025/06/16 産業用電子機器輸出入レポート#71パソコン輸入 台数17か月連続増加するも平均単価急落
- 2025/06/13 よう素輸出Report#6 2025年ノルウェー向け輸出伸び悩み 中国とインド向け輸出増加
- 2025/06/13 アンチモン輸入Report#15塊粉 輸入平均単価急騰続く ただ中国からの単価上昇一服
- 2025/06/13 アンチモン輸入Report#14酸化物 中国代替えタイとベルギーからの輸入増加続く
- 2025/06/13 ゲルマニウム輸入Report#85塊粉くず製品 2025年中国からの製品 規制前の輸入量に戻る
- 2025/06/12 JEITA・漆間新会長、半導体の関税対象化に強い懸念
- 2025/06/12 高成長が期待される製品と関連企業の動向~AIサーバー関連市場(No2)
- 2025/06/12 ゲルマニウム輸入Report#86二酸化ゲルマニウム 中国 ロシア カナダとも輸入減少続く